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おまえは無駄と回り道と、そして矛盾を愛して商売しろ

闘魂は奮起した。必ず新人たちを叩き直・・・磨き上げるコンテンツを広大なインターネット世界に投下せねばならぬと決意した。闘魂には最近の受験生がわからぬ。闘魂は、ワンオペ型独立会計士である。仕訳を切り、監査法人と遊んで暮らしてきた。けれどもタフネスに対しては、人一倍に敏感であった。

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ユーザー権限を付与します

監査人管理システム「オーディットマインド」へようこそ。貴方の合格を……失礼、貴方の合格を歓迎します。
本文を読むにあたっての注意事項を伝達します。闘魂先生は、本人としては大真面目に会計士業界と後進の行く末を案じておられるようですが、社会派気取りな上に少々個性的な世界観をお持ちです。そのため、度々独特なご見解が披露されることもありますが、その点を踏まえた上で、よろしければ、お役立てください。また、内容が少々大人向け過ぎる可能性もあります。そう感じられた場合はしばらく時期をあけて、じっくり読み返してみることを推奨します。
なお、闘魂先生の中の人は誰かなどとと余計な詮索をすると、貴方は人知れず六法という名の鈍器で粛清され、古の調書カバンに詰め込まれて辺境の開発惑星などに送られ、再教育されることになります。
貴方の更なる活躍に期待しています。

オーディットマインドは、全ての監査人のためにあります。
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闘魂中央委員会管理監督課

■ 前回までのあらすじ

会計士試験に合格したおまえが目にした会計・監査のフィールドは、血に飢えた獣=Wolfと化した人々が、BIG Moneyを奪い合う過酷な戦場だった。おまえはいつの間にかノルマソディー上陸作戦で銃弾に倒れ、意識を失う。
脳裏にソーマトー・ヴィジョンがよぎりかけたまさにその瞬間、おまえに声が聞こえた・・・
「KAMIは言っている・・・ここで死ぬ運命(さだめ)ではないと・・・」
そして蘇ったおまえは言った、
「いちばんいい教えを頼む」
すると、おれはおもむろに語りだした。
「おまえはまず、効率とかタイパとか最短距離とかいう、おまえのタフネスを蝕むイモムシスイーツのような言葉を脳内から削除しろ。」

闘魂創世記より

闘魂だ。会計士試験に合格し会計の過酷な戦場への第一歩を踏み出したおまえは、自分の身を自分で守り、自分のために戦う気力を支える自分なりのタフネスを自ら確立することを考えなければならない。そこに必勝法はない。危険な時間ブラックホールyoutubeとかで、一日中「絶対に知っておくべきティックマーク3選」みたいなものを眺めて監査をマスターしたような気になっているようなことでは、全くお話にならない。

前回おれは、おまえはOJTすべきだと言った。つまり、O:おまえは、J:自力で、T:タフになるのだ。おまえがどうやってタフになるのか、そしておまえにとって真のタフネスとは何か。それは知らん。おまえが自分で探し出すのだ。そのために必要なHotなパイセンたちに関する情報も教えた。大体のやつにはそれで十分なはずだ。

しかしながら、世の中には変わり者がいる。おれはそういう真の物好きに対して、決して万人受けはしないだろうが、今のおれが心の底から重要だと思う事をいずれ伝授すると約束してしまった。従って、今回はその約束を果たすべく、このテキストに取り組んでいる。

歴史を紐とくと、もともと「闘魂」というのは、新人に監査法人という名の過酷な荒野をサヴァイヴするための、知恵とインスピレーションを授けるための取り組みにつけられた名前だ。その名前をつけたのも結局おれだが、おれはその名に恥じぬように行動しなければならない。いったい誰得なのかは、もはやおれにもわからない。

ともかく、世の中にはいくつか、おまえが運命を切り開く力を身に着け、タフな真の会計士となるために邪魔なものや、どういうルートに進むにしても使い道のあるマインドセット、みたいなものがある。とおれは思う。今日はそういうものからいくつかをピックアップして話をしてみたい。もはや会計士かどうかはあまり関係ないかもしれない。

では早速Lessonを開始する。

ちなみに、今回おれは、Hotなパイセンを紹介するという大事なミッションを既に終わらせてしまったので、自由な気持ちで好きなように書いている。つまり、おれはこれをあまり人に読んでもらおうと思っていないので、本当に気に入りそうだと思ったやつだけが読んでくれたら幸いだ。

■ Lesson1 おまえは無駄と回り道を愛せ

・人生を目的のための手段にするな

そもそもおまえは、人類が何のために存在しているか知っているか?おれにはわからない。神つまりGODが実在し、わざわざ似姿を作ったということでなければ、人類の存在はたぶん宇宙全体にとって、ほとんどどうでもいいことだろう。ということは、たぶんおまえの人生の価値は、宇宙のスケールで見れば波間を漂うクラゲの人生とさほど変わらない。

しかし、だからと言って、安易なニヒリズムに耽溺し、「なんか・・・監査とかどうでもいいや・・・」みたいな腰抜けを言い、真剣に生きている人間をあざ笑い、ありもしない監査証拠をクリエイトし、エア=チェックを繰り返すようなことでは、もうどうしようもない。何の意味もない人生だからこそ、心を燃やして遊ぶ必要がある。

おまえはもしかすると、「目標や目的がなければ、何のために努力すればいいかわからないじゃないか!」などという腰抜けを言うかもしれない。おれはそれを安易に否定はしない。一般的にはそういう理解でも問題ないし、目的という概念はおれたちの生活の隅々まで入り込んでいるので、直ちに害虫とみなして駆除していいものかどうか・・・正直わからないところもある。しかし、それを推し進めていくと最終的にどういうことになるかを、おまえはいっぺんぐらい考えておくべきだ。

大雑把に言えば、人生には目的があってしかるべきだ、とすることは、目的が失われた人生を否定する事になる。「新しい目的を探せばいいじゃないか!」・・・確かにそうかもしれない。だがこの話を続けていくとわかることだが、結局それは、「おまえの人生が、ただ、ある」事を肯定しないという問題にぶち当たることになる。「目的」を持つのは一見構わなさそうに思えるが、それはなにかを「手段」にしてしまうという問題をクリアできない。この問題は日常のレベルでは目立たないが、突き詰めていくと、何かしらヤバいことであるようにおれには感じられる。

おまえにも、そのうちドでかいミスかなんかをして、人生の目的に辿り着けないことが明らかになる瞬間が来るかも知れない。もしくは、おまえは地球や社会や誰かの「ためになる」テーマに、何一つ興味が持てないタイプかも知れない。そういうやつは、ただ生きているだけではいけないのだろうか?おれはいけないとは思わない。おまえの人生はおまえの人生のためにあるのであって、必ずしも他の何かのためにあるわけではない。目標や目的みたいなものは、大抵の場合は便宜的に設定されていて、都合が悪くなると頻繁に変更されるものだ。

この話は突き詰めると非常に小難しく、おれの実力を超えているので深掘りしないのだが、結局、目的と手段というのは、案外ファジーでバーチャルなものだということだ。目的のために手段がある場合もあれば、手段のために目的が用意される場合もある。そして、手段がいつの間にか目的になることもある。

・愛すべき手段の目的化

AのためにAをする。手段の目的化は過小評価されがちだ。例えばTVゲームのようなものは、当のゲーマー自身もあまり「ためにならない」と思い込んでいることが多い。最近では配信やショウビジネスに使われるなど、社会の中で存在感を増してきているように思うが、そもそも、どうしてゲームをしなければならないのかという問いは手ごわい。全くやらないやつもいるからだ。

娯楽と分類されるものには全体的にそういう傾向がある。アーマード・コアをプレイするのは体が闘争を求めるからだが、アーマード・コアをプレイするから体が闘争を求めるような気もしないでもない。つまり、結局のところアーマード・コアをプレイするために、アーマード・コアをプレイするのだ。だからおまえも、アーマード・コア6をプレイしろ。

ヴィデオゲームだけではなく、その他の伝統的なボードゲームのようなものも、それ自体に何の存在意義があるのかは全然わからない。しかし、大事なものとしてちゃんと伝統的に受け継がれてきている。チェスのためにチェスをするみたいな人間の営みは歴史を越えて多くの人を今も熱狂させている。

娯楽というものはぜいたく品だ。意味がありそうで意味がない。意味がなさそうで意味がある。そんなぜいたく品だから、娯楽は目的という強大な概念と対抗することが出来る。もうわかったか。冒頭述べた通り、人生も意味があるのか無いのかよくわからないものだ。つまりぜいたく品の一種だ。ゆえにおまえは人生をぜいたくしなければならない。おまえは、人生のための人生、を味わいつくすべきだ。今すぐ、アーマード・コア6を買え。

コスパやタイパみたいなものは、ある意味、贅沢やゆとりを否定することであって、それは結局のところ人間を否定しかねない危険な火種だ、という事をおまえは理解しておく必要がある。そういうものがおまえのタフネスを徐々に蝕む。ゆえにおれは、娯楽や遊びのことを重要視している。その結果たまにとんでもないことになるが、トータルで見ると、おれの人生やタフネスが、そうした一見無駄そうな経験に支えられてきたのは、間違いのないことだ。

・遊びはおれに多くをもたらした、ツラいことも

おれはかつて、文字通りネトゲのやり過ぎで試験に落ちたことがある。おれは、生まれ持っての高貴さがたたり、就活などという嘘っぱちに満ちたブルシットにどうしても馴染めず、希望に満ちたインターネット世界を旅しているうちに、気が付いたらフレッシュな新卒などでは無くなっていた。インターネットワールドには全てがあった。数々の胸躍る冒険と、仲間たちとの出会い・・・そして別れ。おれは、ある日突然誰にも告げずにREALワールドに帰っていった友人が、最後の日におれを世界旅行に誘ってくれたことを今でも忘れられない。掛け値なく素晴らしい日々だった。おれはヴァーチャルエクスチェンジされたNew worldにすっかり魅了され、多くの魔物を一本の戦斧のみで英雄的にほふってみせ、未保証ながらワールドレコード級のアチーブメントを(ニッチな領域で)いくつか残した。

しかし、残念ながら少し時代が早すぎた。時間強盗めいたユーテューブも未だ存在せず、Beast=ダイゴ・ウメハラもまだPROではなかった時代だ。おれの覚えたての中途半端なエッチティーエムエルだけでは、ささやかな人生を支えるに足るMoneyすら稼ぐことはできなかったし、その発想もなかった。もちろん努力もできなかった。そんな時に、「おまえはペーパーテストだけは得意だから」と薦められたのがきっかけで、極めて軽いノリで受験を決めたのが会計士試験だ。いくらなんでもそれで受かるわけがない。

しかし、この間のいろんな意味で痛い経験は、ふり返るとおれに多くのものを与えてくれたと断言できる。パソコンやネットでの情報収集には詳しくなったし、ネットのカルチャーにも大分親しんだ。その時知り合った友人は今でもイケてるサブカルコンテンツの師匠だ。そうしておれが得たものの一部は、こういうテキストを書くときに、おれに大いなるインスピレーションをもたらしてくれている。おれが後先考えず真剣に遊んでたからこそ、こうした今に繋がる学びや繋がりが得られたのだ。たぶん。

一方で、当然ネガティブな思いも沢山経験した。将来が全く見えない状況で人間がどういう心境になるか。誰も何も言っていないのに、いかに自分の中のZAKOが自分を蝕むか。人とまともに口を利かないとどれぐらい喋れなくなるか。しょっちゅう出没したTSUTAYAの店員に速攻で顔を覚えられたこと(毎日『めぞん一刻』を3冊ずつ買ったからだが)・・・etc。360度自業自得なわけだが、そうした体験でさえも、巡り巡って、何かがうまくいかなくなった時、まあ、おれみたいなやつの人生がそんなにうまく行っちゃおかしいもんナ・・・と不思議なタフネスをおれに与えてくれる。

おれが合目的的な人生観や、自分の存在意義みたいなものに囚われることを好まないのには、おそらくこの経験が大きく影響しているように思う。おれは何者でもなかった。だが、何とかなった。だからおまえも何者でもなくていい。おまえが真剣に人生を遊べば、どうせ、何とかなる。

・ピンチとタフネス

挫折または挫折の予感を前にして、様子がおかしくなるやつは案外沢山いる。収入、名声、資格・・・そうしたものが奪われそうになったとき、しばしば人は錯乱し、より多くの大切なもの・・・信頼とか友達とかだ・・・を失うような行動をとる。

追いつめられると、売上を無からクリエイトし、残高確認状をポストから盗み出したり、送付先に自ら用意した張りぼて小屋を指定したりするタイプのやつも似た傾向があることが、おれの中で知られている。

アイツらは不幸なことに過酷な現実・・・すなわち「イケてない自分」と向き合うタフネスを持ち合わせていない。人間にも山犬(=Wolf)にもなりきれない、哀れで醜いアカの他人だ。おれにはまだ、ピンチに正気を失うやつと失わないやつの決定的な差が何なのか、わかりきったとは到底言えないが、おおよそで言うと、世間一般で言われるような「成功」をあまり深く考えずに嗜んできたようなやつは、窮地にあんまり強くない傾向があるようには感じている。

この点に関して、過去に辛酸をなめたことがあるかどうかは、会計士にとってはわりとどっちでもいい。過去に最悪な経験をしたことがあるやつは、「アレ以上悪くなることはそうそうないだろ」、という限界ラインが低めに設定された「とびきり根性のあるWolf」である事が多いので、やや有利なぐらいだ。そういうやつはおそらくディカプリオで、ウォール・ストリートから追放されても、また田舎町でボールペンの売り方を教えるセミナーなどから、人生すなわちLIFEを立て直すことが出来る。ただ、普通に善良な会計士として商売をしている限り、生きるか死ぬかというラインが見えてくるほどの悲惨なことは滅多に起こらないので、そこは必須ではない。多くの挫折みたいなものは、要約すると、成功感の喪失みたいなものであるにすぎない。

人生に失敗はつきものだし、むしろ、欠かせない。失敗して何かを失うダメージに対抗し、しなやかに立ちあがるために重要なことは、自分のよりどころとなるものを、どれだけ沢山持っているかだ。この辺の面倒な話は、既に過去に書いたことがあるので、詳しく知りたいやつは、それを参照して欲しい。これはこれで長いから、退屈な研修の時間にでも読むといい。

「しなやかなタフネス」みたいなものを備えるためには、自分を象る(かたどる)要素を豊富に持つことが重要だとおれは考えている。その場合、ストレートで何かに特化してきただけの人生は、必ずしも良いとは言えない。もちろん、誠心誠意打ち込んできたものの喪失をバネに、見事に立ち上がる勇者もいるので一概には言えない。そういうやつは、例えば小さな成功体験を沢山持っていたりというように、タフネスの源を豊富に持っていたりもする。おまえにそうした強靭なしなやかさが備わっているかどうかはわからないが、「おれにはこれしかない」みたいな考え方は一般的にはリスクがある可能性が高いことに、注意を払っておいてもいいだろう。

おれは別に、おまえもおれみたいに「自分は何者でもない」という経験をせよ、という事を言っているわけではない。逆だ。何の意味もなさそうな楽しい経験をしろ、という事を言っている。受かったばかりだと、やる気のあるやつは(ないやつは別にいい、好きに生きろ)一刻も早く現場のプラクティカルな知をマスターして、いっぱしにならねばらないと思いがちだ。それはマインド的にはすごくいい。すごくいいからこそおれは警戒すべきだと思う。いろんなことを吸収しやすい時期の大部分を、もっぱら仕事上のノウハウを得ることばかりに注ぎ込むのはもったいないし、それが下手をするとおまえの弱点にもなりかねない。正解ルートにはたまに深い落とし穴が空いていて、時に致命傷になり得る。

・無駄と回り道こそがおまえをタフにする

いいか、今のおまえに必要なものは、効率や近道ではない。無駄と回り道=贅沢こそがおまえの人生の存在意義を保証し、日々を豊かにし、おまえをタフにする。様々な世界を知り、様々な価値観に触れろ。何より、いろんな趣味や好きなことが増えることは、おまえの人生を間違いなく楽しいものにするし、おまえが味わい深いやつであることは、人間関係を作っていく上ではめちゃくちゃ大事だ。そして、なんだかんだ言って、それが仕事に還ってきたりもするものだ。

時代はものすごいスピードで変わっていく。今、有益に見えているものも将来はそうじゃないかもしれない。だが逆もしかりだ。一見無駄に見えるものや回り道に見える経験が、将来どういった価値あることに化けるかはわからない。だからお前は、今役に立ちそうなことだけに目を奪われてはいけない。無駄と回り道を愛せ。一日一回、鏡の前で「スティーブ・・・コネクティング ザ ドッツ」と三回唱えろ。おじさんたちが大好きな呪文だ。

そう。だからおれの話は脱線と無駄話が多い。しかし、そうした余分なところにこそヒントが隠れていたりするものだ。だから、おれのlessonは隅々まで読んでマスターする必要があるし、気に入ったらイイネをふんだんに与えたり、webに拡散したりする必要があるとつよく強調しておこう。

■ Lesson2 おまえを痛めつけるおまえの中のZAKOを倒せ

・監査法人も過酷な戦場だ

合格者のうちいくらかは就活で苦汁をなめたりするだろうが、多くのやつは期待と不安が混じりつつも、どっちかというと順風満帆な気持ちでBIG監査法人に就職するだろう。ああ、これからおれには、あのうらやましい軽薄なリクルートブログみたいな充実した人生がまっているのだ。三菱地所とかのマジでイケてるやつがいない隙に、コリドー街か恵比寿あたりで提携ファームの名前を名乗ってブイブイ言わせてやろう・・・Deloitteって知ってる?・・・え、等松でしょ?・・・中にはそんなキラキラインスタグラマーめいた妄想を抱いているやつもいるかもしれないが、そんなものは直ちにガベージするのが正解だ。画用紙に座右の銘を書く練習もしなくていいし、ロゴを描いた立方体もいらない。

監査法人にはいろんなやつがいる。くだらないやつらも大勢いるが、中にはマジモンの化け物もいるのでナメてかかってはいけない。そういうバケモンがBIG監査法人に君臨し、業界を支配しているのが実態だ。つまり世界は人類ではなく妖怪かなにかにコントロールされている。おまえだって、合格者の全員がBIG監査法人のパートナーになれるわけではないことぐらい知っているだろう。この世界で第一線を張るやつというのは選ばれし者だ。ハンパない能力を持っていて、文字通りモノが違う。BIG監査法人という組織は、得体のしれない魑魅魍魎が多数生息する闇のシンジケートであり、生半可なことでは到底頭角をあらわすことなどできない魔境なのだ。

世間には、「監査法人に残っているやつらは、他に行くところのない、イケてないやつらだからwww」、みたいな世界観の持ち主も結構いる。おれは、そいつらの気持ちもわりとわかる。色々あったのだ。しかし、真の会計士の何割かがBIG監査法人に所属していることも紛れもない事実であり、それを無視してなにかを語ることは出来ないだろうと思う。

そして、BIG監査法人には、既にそんなYO-KAIみたいなやつが多数生息しているにも関わらず、おまえの同期にも桁違いの猛者が潜んでいないとも限らない。たぶん潜んでいる。しかも、毎年この業界には年若い新たな猛者が次々と供給されてくるし、おまえはいずれ年を取って衰えていく運命にある・・・そんなやつらと真正面から張り合ってなどとてもいられない・・・おれもおまえも弱者なのだ。

真面目なやつほど、そうした空気を敏感に察知する。気が付いたら会計士試験合格とかいう栄光のメモリーは過去へと後退し、いまいち組織でパフォームできていない自分というREAL、みたいなものに悩み始め、やがて闇堕ちする。そうしておまえは、迷いからか、不幸にも黒塗りのハニートラップに追突し、世界のしんじつに迫る怪しげなセミナーかなんかで、こころがぽかぽかする神秘的なセメントの封入された缶詰とかを買わされてしまうハメになる。

・おまえはこの戦場では特別な存在ではない

そもそも、BIG監査法人みたいな闇のシンジケートの構成員の大部分は会計士なわけで、当然ながらそこではおまえはスペシャルな存在などではない。自分の存在意義を支えてくれるに違いないと思った資格は、意外とお前を支えてくれない。せいぜい地元でドヤ顔できるだけだ(ちなみに、わりとそれは大事なことだ)。せっかく試験に受かって何者かになれると思った瞬間、あっという間に何者でもない状態に叩き落とされる。これが現実だ。だが現実である以上、いかにシビアであってもおまえは向き合うか、一目散に逃亡するかしかない。どっちでもいいから覚悟を決めろ。そして、おまえはまず未熟なおまえ自身と向き合い、認めてやれ。全てはそこから始まる。

さらに、おまえが向かい合うべき残酷な真実を告げると、およそ公認会計士の半分は、公認会計士の中央値以下の能力しか持っていない事が抜け目のない数学者たちなどにより証明されている。ほとんどのやつは、「自分は平均ぐらいかぁ、ちょっと上ぐらい?」などとスイーツのようなことを妄想するが、5分5分でおまえがイケているかイケてないかは、蓋を開けてみるまでわからないネコのステータスだ。イケてない場合のほうが当然いっぱしになるまでに学ぶべきことは多くなる。だとしたら、自分がイケてないケースでも対応できるように訓練を積んでいくほうが保守的で良いだろう。長生きしたければそう考えるのが正解だ。おまえは、自分が優秀である可能性にBETしない勇気を持て。おれの経験則でひとつ付け加えると、そういうマインドを悲壮感なく自然に持てるやつは概して優秀だ。

ちなみに、有能な奴はゆうに2人分以上のパフォーマンスを出すので、パフォーマンス人数で平均をとると、平均以上の能力を持っている会計士というのはもっとずっと限られてくるのではないか、という仮説をおれは持っている。従って、おれは優秀な会計士として監査法人で立身出世する類のことは、とうの昔に諦め、ストリートで借方とか貸方とかいう呪文を唱えて小銭を稼ぐ稼業に身をやつしている。つまり、おれはおれに合ったやり方で現実をサヴァイヴしているわけだが、おまえはまだ自分の限界を見極めるには時期尚早だ。努力しろ、毎日だ。おまえはまだ始まってもいない。自信が持てませんみたいなことは10年ROMってから言え。

(閑話休題)
まあ、人間にも個体値があるのは確かだろう。おまえもいずれ、測定できない曖昧な「能力」差みたいなものではなく、昇進の速さや重要な仕事の任せられ方を通じて、自分のポジションに気付かされる事になる。とはいえ、人類社会には誰かが果たすべき役割が数限りなく存在しており、世間で評価されがちな論理的な思考能力や言語運用能力(似通った能力な気もするが)の優劣だけで、単純に役割が持てる/持てないが決まるものでもない。
会計士に限っても、活躍のフィールドが幅広いというのはおおよそ世間で言われているとおりだ。資本主義社会ではMoneyが絡まない活動のほうがめずらしいからだ。加えて、公認会計士はその道の真のPROではないにしても、会社法などの企業関連の法令の基礎的な知識を持っていたり、内部統制やコーポレートガバナンスに対する知識とリアルな体験を併せ持っていたりするので、実際のところ組織運営をサポートする系の仕事では、総合力でかなり強い。その他にも、おまえが今まで何を学んできたかによるが、情報システムに精通しているとか、組織や人間の心理に精通しているとか、そういういろんな能力に「プラスして会計がわかる」というのがかなりデカい。
というわけで、監査という仕事の難易度や重要性を考えると、おれはおまえにはいっぺん監査法人でどんだけやれるかトライしてみて欲しい、という気持ちをまず持っているが、同時に、仮に監査法人であまり通用しなかったからと言って、おまえが社会の中で役割を持てないという事ではない点を(言うまでもなさそうだが)、一応補足しておこうと思う。
ちなみに、巷で言われるいわゆるカケザンみたいなことで言うと、おれは「会計×[スキル名]」というのは実はあまり好きではなくて、「おまえの持ち味×会計(×[他のスキル])」という風に考えるほうが好きだ。おまえはもとからおまえであり、持ち味をうまく活かせば、そのままでも十分役割を持てる。会計の知識やスキルはおまえが後から学んだものであり、あくまでもおまえの魅力を引き立てる補助的なものだとおれは考えている。受かったばっかりなら、なおさらそうだな。おそらく、おまえの人生では会計以外の事を学んだ時間のほうがずっと長いはずだ。
たぶん、おれが過去に書いたものも見ても、会計の優位性をひたすら説いているものはなくて、あくまでもおまえは自分の魅力をちゃんと見つけて、それを売っていくべきだ、という事を言っているはずだ。それを基本としたうえで、何かしらビジネスに関与するのであれば、補助ツールとして会計はかなり強力だ、というのがおれの考え方だ。
なぜこれが閑話休題かと?
後から説明が足りないと思って補足的に付け加えたので、面白おかしく加工する作業が少し面倒になったからだ。許せ。

闘魂中央委員会厚生局

・おまえの実力も人生もまだ決まっていない

さて、考えるまでも無く、会計士試験に受かったばかりのやつがろくに実務が出来ないのはごくごく普通のことだ。そもそもおまえらの実力で証明されているのは、過程はともかくとして、ペーパーテストを突破できるという事だけでしかない。あと、しいて言えば大体のやつは忍耐強くしぶとい。つまり、おまえが会計監査みたいな仕事にそもそも向いているかどうかとか、そういうことは今のところ全くと言っていいほどわからない。そして、監査に向いていないからと言っておまえの人生の価値に何か問題があるわけでもない。ファーストキャリアがなんかうまくいかずに、転職して羽ばたくやつなんか世の中にいくらでもいる。

会計士試験合格者の場合、多くのやつは結局会計の知識を活かした仕事をすることになるが、中には1年目でソニプラの店員に転職したやつとかもいるし、聞くところによると漁師になったやつとかもいるらしい。会計監査はむやみに小難しい仕事だ。その適正を試すために試験があるわけだが、ペーパーテストが得意なやつは、仕事上の適性みたいなものがなくてもうっかり試験に受かってしまう場合がある。そうしたケースで、目の前の仕事という日常に惑わされてしまって、自分はダメだとさしたる根拠もなく思い込み、自分の真のポテンシャルに気付かないのはもったいない話だ。

とにかく、おまえはまだ駆け出しで、監査がうまくできるようになるかどうかはまだわからない。世の中には、そんな風に当面弱者であるおまえに対して、これ幸いとばかりにマウントをしかけてくるような、どっから見てもたいして有能に見えない、多少年次が上なだけのAHOどももいることはいるが、そういうやつらは口を利く価値も、頭を悩ます価値もない文字通りのZAKOなので速やかにおまえの脳内=世界からDeleteして構わない。ただし、間違っても物理世界からダイレクトにDeleteはするな。まあ、AHOが自らZAKOであると自己紹介してくれるのだから、考えようによっては良心的だ。速やかに無視しろ。そんなやつらに関わって、おまえの貴重な人生を浪費する必要はない。

ミュート、ブロックを活用する事により、理想のSNS世界をデザインできる事は広く知られているが、訓練により脳内ブロックをマスターすればリアルワールドすらタコツボナイズすることが可能だ。自らの脚を食べないようにだけは気をつけろ。分配可能額にも用心しろ。

おまえが余程チョーシにのっていたりすると話は別だが、だいたいのイケてるやつは、駆け出しのおまえをあからさまに攻撃したりはしない。そして、あからさまに何かを言われたりするのでなければ、心の中で他人が本当はどう思っているか、みたいな事は知る方法がないので、いっさい気にしなくていい。行動や言動にあらわされていない他人の内心みたいなものは、おまえにとっては存在しないのと同じだ。逆もしかりだ。これは結構重要なことであるにも関わらず、日ごろ見落とされがちな事の一つだとおれは思うので、おまえには覚えておいて欲しい。

・おまえを攻撃しているのはおまえ自身だ

つまり、おれが言いたいのは、結局のところ、おまえを直接悩ませるのは、他人が自分のことをイケてないと思っているかもしれないと想像し、恐怖におびえている、「おまえ自身」に他ならない、ということだ。これをおれは自分の中のZAKOと呼んでいる。自分の中からZAKOを追放するのは難業だ。しばらく見かけないと思ったら、ひょっこりと物陰から顔を出す。しかし、仮に倒せはしなくても、そうしたZAKOの存在を認識しているのといないのとで、気の持ちようが大きく変わるケースがあるのも間違いない。おれは何度も見た。一応言っておくと、万人に効く処方箋とは限らないので、そこは用心しろ。人間は複雑なのだ。

意外と多くのやつが気付いていないことだが、人は、他人に怒られている時間よりも自分に責められている時間のほうがずっと長い。そしてそのことがいかにおまえの足を引っ張るかということについては、『インナーゲーム』という本で詳しく解説されている。紹介する本の打率が高いことで知られるビル=ゲイツがお勧めするオールタイムフェイバリットの5冊かなんかのラインナップに入っている。

(日本語だと新版が手に入れやすい)

ちなみにこれは直接的にはテニスの上達方法を解説した本なので奇異に感じるかもしれないが、人間のメンタルについて一定の洞察を与えてくれる良書だとおれも思う。言っていることが多少スピリチュアルめいている気もしないでもないが、おれ達が100万回ぐらい無職転生しても届かないぐらいのBIGサクセスをキメた、他でもないビルが薦めているのだから多少見るべきところはある、と考えるべきだろう。あいつがテニスびいきである点を差し引くとしてもだ。少なくとも、心がぽかぽかするセメントの缶詰とかよりかは、よっぽどおまえの役に立つ。

ウィリアム・ヘンリー・ゲイツ3世殿の言葉を借りると、自分を批評的に見たり、自分のパフォーマンスに客観的であることは重要だが、それは建設的な在り方で自分を改善すべく行うこと、これが重要なことだ。つまり、それは自分自身を必要以上に傷つけるやり方であってはいけないということだ。これは全くその通りだが、意外と難しい。そのためにまず重要だとおれが考えることは、おまえの心の中の声がZAKOの声か、そうでないかを区別することだ。「ZAKOかZAKO以外か、thai is the question」であると、別のウィリアムも言っている(言っていない)。

ZAKOの声は分かりやすい。名声、肩書、ステータス、財布の中身、服装、イケてる友達、フォロワー数とイイネ・・・おれは勝っているか?他人に劣っていないか?出遅れていないか?そんな声だ。そう、他人と比べてどうか。そう、他人と比べてどうかだ。2度言った。大事なことだ。

・おまえはZAKOの声に惑わされるな

他人と自分を比較するな。これは今時幼稚園児でも知っている真理だ。しかし、人は比較に弱い。群れで暮らす生き物にとって序列は非常に重要だとニワトリも語っている。そんなMr.ニワトリでも知っているような事をおれやおまえはやめられない。確かに、そうした本能が人類の進歩と調和を支えてきたかも知れないことはおれも認めよう。しかし、それでわけもなく落ち込んだり、嫉妬に駆られたりして、ウジウジと自宅を警備しながらひたすらSuperDryを飲み、世間を呪って暮らすことには特に意味はない。

どうせひきこもるなら、有名なアニメ作品(例の魔法少女のアニメはおれも名作であることを保証する)を全部見るとか、光の戦士になって王位継承レースに参加するとか、辺境の開発惑星ルビコンで人とコーラルの新たな可能性を模索するとか、そういった、人生にとって真に価値あることに時間を使うべきだ。

他人と比べて監査ができない?だからなんだ。隣のやつの給料が減ったって、おまえの給料は増えない。メガコーポの30そこそこのイケてる監査役がサクセスしようが失敗しようがおまえには1ミリも関係ない。おまえがやるべき事は足りない知識を学び、おまえのスキルや感性を磨くことでしかない。つまり他人と自分を比べてどうこうなどとへこんでいる暇などない。

そうしたポジティブな時間を邪魔するものがおまえの中のZAKOだ。どんなAHOでも家にまで追いかけてきておまえをdisったりはしない。稀に、ITを駆使して最強の出会い系マシンLINEなどで自宅に退避したおまえをも攻撃する真正のAHOもたまにいるが、コンプラとかに通報すれば、すぐにおまえの人生からDeleteできるだろう(おまえが妙にキアイの入った中古車屋などに勤めている場合は除く)。

そうした、いかにもヤバいやつを避けたとしても、生きていれば、誰かの心無い一撃に傷つくようなことは必ずある。だが、そいつの真意は実はわからない。そんな場合でもおまえを攻撃しているのは結局はおまえ自身だと考えて良いとおれは思う。大抵のやつがいずれ気付くことだが、ほとんどのやつは他人にそれほど興味を持っていない。みんな自分自身の事を気にしているのだ。おれやおまえと同様に。

・おまえはZAKOを倒せる

おれが思うに、おまえには見どころがある。そうだな、おまえが会計士試験にトライすると宣言した時のことを思い出してみろ・・・おまえなんかには無理だ、就職できるうちにしておけ・・・資格なんかとっても年収グラフで比較するとそれほど差はない・・・誰かが挑戦しようと思っているとき、決まってそういうヤなことを言うやつが現れる。そいつらが、心配や善意で言っていたのか、おまえに嫉妬して言っていたのかはこの際どっちでもいい。大事なのは、おまえはそういう天使か悪魔かわからないやつらの妨害(なお、とあるヘヴィメタルな教団の信者は時折天使どころかゼウスの妨害を受けることで知られている)を一顧だにせず、既に「挑戦する決断」をしてきた人間だということだ。

挑戦は結果を約束しないが、努力を通じておまえが身に着けた知識やスキルがおまえを裏切る事は決してないし、命ある限り、何者もそれを奪うことはできない。おまえを裏切るのは、だいたいが慢心や油断や虚栄心といったものだ。そして、おまえを傷つけるのは、他でもないおまえ自身だ。たとえ世間に認められる成果を残せなかったとしても、挑戦し、努力を尽くした勇者であるおまえを馬鹿にする者など現実にはほとんど存在しないし、何者もその資格を有しない。

おまえが戦うべき相手は、他人ではない。おまえが新しいフィールドで挫折を味わいながらも挑戦し続ける事をたたえるのではなく、人をイイネの数とか仕事の出来不出来かなんかで評価するような、おまえの中のZAKOと戦い続けろ。そいつを打ち倒し、決別することは、なんなら資格試験に受かるかどうかよりもずっと価値がある。

既に挑戦者として歩んで来たおまえならZAKOは倒せる。おれが保証する。タフになれ。そして、現実のZAKOには倒す価値もないから普通に無視しろ。

■ Lesson3 おまえは商売人になれ

今回の最後のLessonだ。少しだけ実践的な心構えとノウハウに踏み込むことにする。おれも多少は、なんかヤバいパイセンではなく、Hotなパイセンと思われたい。

・えらいのは肩書ではない

会計士だろうがなんだろうが、職業というものは、労働・・・すなわちBloodもしくはSoulを・・・対価に変え、Moneyを得る、それだけのものだ。おおざっぱに言えば誰かのために血を流すことに変わりはない。あらゆる職業は、対価を得るにふさわしい、無限のワークアンドダイのうえになりたつ尊いものなのだ。

つまり、おまえが資格を持っているかどうか・・・そうだな、例えば国家錬金術師のような資格を持っているかどうかみたいなことは、おまえの仕事・・・人生・・・の価値をそれだけで高めたりするものではない。かの高名なエドワード・エルリックは、合成獣となった少女を結局助けられなかった。だがやつは最終的にあわれな弟のからだを取り戻すという偉業を成し遂げた。それができたのは、自分が特別な錬金術師ではなく、ひとりの人間に過ぎないことをりかいし、たぐい稀なその力を手放すという勇気ある決断をしたからだ。その結果、エドワードは錬金術師という資格を失ったが、代わりに何にも代えがたい鋼の心を手に入れた。よって、今後あいつはより意義深い人生を歩むことだろう、とおれは確信している。もっとも、その結論に至るには連載がほとんど終わるまでの長い年月を要した。あの天才でもだ。

何が言いたいかというと、会計士だから当然カネが稼げるとかエライとか言うことはなく、おまえは普通に商売人としてまっとうに働き、生活を成り立たせるために、汗をかき、Moneyを稼がねばならないことに変わりはない、ということだ。つまりおまえは若干レアな肩書を名刺に書いた商売人であるに過ぎない、ということをまず理解する必要がある。

・商売人であれば「おまえの商売」をみつけろ

こう言うと、おまえは、例えば「監査というサービスを提供してクライアントから報酬を得るのが、監査人という商売だっていいたいんでしょ?」みたいなことを思うかも知れない。実は、それはおまえ自身の商売ではない。

おまえが大魔境監査法人に無事潜り込んだなら、おまえの日々の商売は受け取る有形無形の報酬に見合う分だけの便益を組織やその構成員に提供することだ。それが対外的にクライアントに提供するサービスと重なる場合もあるし、直接的には結びつかない場合もある。おまえの商売と組織の商売はちゃんと区別しておけ。そして見過ごされがちなのは、もっぱら組織内で直接の対価を伴わず提供されているサービスのほうだ。今日はそっちの話をする。

商売の基本は、人が持っていないものを提供したり、人が嫌がることを肩代わりすることにある。おれ達は、具体的な物を他人に売りつけることはほとんどしないので、要するにかたちのないサービスを提供してカネを受け取るという格好になっている。他人に具体的な物を売りつけるのが好きなやつは、監査法人などに就職せずに、妙にキアイの入った中古車屋とかで頑張ったほうが良いだろう。

おまえが本格的に仕事を始めると、最初は何の意味があるのかよくわからないショーモナイ仕事を数多く頼まれることだろう。そこでいちいち、「コンナノぼくの価値に見合った仕事じゃないよ!もっと付加価値の高い仕事をするべきなんだよ!」、などとKIDSのようにふてくされているようでは、箸にも棒にも掛からない。たまには華やかな瞬間もあるが、おれ達の仕事の大部分を占めるのは、そんなことぐらい自分で調べろよ、みたいな助言とか、こんぐらい自分で書けよ、という書類作りとか、ちょっとぐらい自分で計算しろよ、と言いたくなるエクセル作りとか、そういった地味な作業から成り立っている。

大体のやつは、面倒だから人に仕事を頼むのだ。難しい仕事も勉強するのが面倒だからという理由でおまえに依頼されている。中には、グーグルに聞けばすぐわかるようなことについてまで、頭を使うのが面倒だからという理由でおまえに聞いてくるやつもいる。おまえの仕事は人の面倒ごとを肩代わりしたり、面倒でなくしたりすることなのだ。おまえがウデを上げれば、「それは面倒ごとではない、おまえのためだ」とクライアントを洗脳して本人に仕事を押し付けることも可能だが、今すぐには難しいだろう。

ほとんどの仕事は大した内容ではないが、ちゃんとそれなりの対価が支払われる。これは、独立して顧客から対価を直に受け取るようになると体感できるだろう。「え、こんなんでカネくれるの?」おれは何度もそう思ったことがある。おまえが面倒だなと思ったのだとしたら、それはjobとして成立しているという事だ。法人内での仕事というものも、大枠は変わらない。が、サラリマンという立場でおまえがSoulをサブスクリプション販売している間は、直接駄賃を受け取らないので、これがれっきとした商売だと気付かないこともある。ここには注意が必要だ。

確かにサラリマンをしている間は、サービスを提供してもしなくてもしばらくは給料がもらえるので、この構造は見えずらくなっている。が、おまえが一切誰にもサービス提供しなければ、遅かれ早かれおまえは社史編纂室か何かに飛ばされて、複雑怪奇な会計事務所の合従連衡の歴史などに頭を悩ませるハメになるはずだ。

おまえが提供すべきサービスがなんなのかは、キャラによるのでなんとも言えない。例えばおれは基本的に事務処理が速かったので、手当たり次第雑務を引き受けるという事が得意だった。また、パイセンとて人であるから、たまにはパイセンらしくデカい口を叩きたい時もあるだろう。おれはそういう敬遠されがちな無駄な飲み会とかを苦にしない。大体ヒトというのは喋りたがる生き物なので、話を聞いてやるだけでも、おれの地位はぐんぐん上がっていく。昔みたいに物理に紐づく雑用も昨今ではそこまで多くはないだろうから、どういう方法が良いのかはわからないが、おまえにも最低1個ぐらい何か得意なことがあるだろう。もしくは、おまえがなんでもないと思っているのに人にめちゃくちゃウケることだ。そういうのを探し出して、視界に入るやつ全員に売りつけるぐらいの気迫でいけ。

・カネの動かない商売の仕組み

もちろん、そうした商いはJPYのような目に見える対価を生まない。もちろんヴァーチャルコインも生まない。しかし、おまえの売掛金のようなもの・・・すなわち相手にとっては債務だ・・・は確実に心の中にたまっていく。そのアセットをおまえはここぞというときに動かせ。つまり、便宜を図ってもらったりとかそんなことに使うのだ。これが組織内商売の基本的な仕組みだ。

こうしたものは言うまでもなく、伝統的に貸し/借りとされてきたものだ。だからと言ってそれを化石のようなカルチャーと甘く見てはいけない。長い歴史を淘汰されずに生き残ってきたものには、人間の本質と結びついた深いナゾが秘められている場合がある。貸しを作る、恩を売る、そういったものは今のところ現代でも有効なメソッドだ。おれはそういうものをより身近な会計やビジネスの用語で整理し直してしようと試みているわけだ。

「でも、いくら恩を売ったって、踏み倒されたら何にもならないじゃないか!」とおまえは思うかもしれない。そういうやつはLesson2からやり直せ。おれは、ZAKOは脳内からDeleteしろと言ったはずだ。という事は、おまえの世界には、ZAKOではない人間しか残らないはずだから、平気で借金を踏み倒すようなZAKOへの対策について検討する必要はない。

なお、ZAKOは誰にとってもZAKOであるケースが大半なので、組織内での立場が既に弱いか、いずれだんだん弱くなる。そうなってくると、おまえがクレバーに営業を仕掛けることによって、上得意に仕立て上げることも不可能ではないので、たまには思い出してやってもいいだろう。そいつのポジションを分析し、その弱みに着目してニーズを考えてみる事は、ターゲット顧客層の拡大に役立つかも知れない。

ちなみに、組織人的厭世ポイントあるあるのひとつとして、なんかおべんちゃらとかがうまいやつが出世して、真の監査人が昇格しない、みたいなことがあるだろう。そういうことはしばしばある。しかし、おれは、とにかく下と同僚から評判が悪いやつのその後を、10年とかの歳月を通じてモニタリングしたことがあるのだが、そういうやつらはどこかで頭打ちになっているケースが多かったことを付け加えておこう。みんなそこまで馬鹿じゃない。

・ブランドも有効だ

おまえがあちこちでセールスに成功し、多くの人間に貸しを作ったとしよう。スゴイカンタンに言うと、それに伴い「世論」によるおまえの評価は自然と良くなる。「世論」とは何か?誰か?正体不明だ!などというHotなクレーマーのおまえもいるかもしれない。では少し角度を変えて言い換えを試みよう、おまえが上質なサービスを売りまくっていると、おまえの「ブランド」価値が高まる。これは要するに信頼とか評判の事なのだが、「ブランド」と言った方がアセット感が高い気がするので敢えてそうしてみたものだ。

おまえの「ブランド力」が強くなるとどうなるか。おまえの発言、希望、批評は次第に尊重されるようになる。悲しいが、物事は何を言うかではなく、誰が言うかなのだ。おまえの評判があがると、おまえの組織内での扱いは当然よくなるし、おまえと仲良くしたいやつも増えてくる。その好循環を生み出すことで影響力を育てていけば、その影響力を行使して、おまえはより多くのチャンスを引き寄せることが出来るようになるだろう。

・応用は自分で考えろ

だんだん闇の処世術のようになってきた。このまま続けると、おれの人間性に対する信頼がZERO(=よくわからないやつ)を突き抜けてマイナスになるような危険性を少し感じるので、ほどほどにしておこう。あとはおまえ自身が工夫すればいい。エッセンスは至極シンプルで簡単だ。

日々のサービス提供を通じて、顧客からの信頼を得て、ブランドを含むアセットの超過収益力を高める。それだけだ。

そう、これは超そぼくなビジネスの基本形に他ならない。おれは最新鋭の小難しいビジネスのことはサッパリわからないので、ごくごく単純にビジネスを考える。つまり、商売の基本とは、セールスと投資だ。そしてこれはサラリマンにそのまま当てはめてみることが出来るし、独立しても当然使える。どこに行ってもほとんどそのまま使えるだろう。

おまえは熱心に営業活動を行い、おまえ独自のアセットを積み上げろ。そうすれば自然と社会的にタフになれる。

・そしておれは資本主義の強力さにふるえる

なお、この考えを推し進めていくと、友人関係みたいな素朴な人間関係でさえ凶暴な資本主義イズムの文脈に回収できてしまうような気もしてくる。それに対しておれは確定アンサーを持ち合わせていないが、おれはある時、超が間違いなくつきそうな大金持ちとの会食で、友人について問われた時に、「一緒に無駄な時間を過ごせる関係」だと答えたことがある。およそそういう事だろう。

資本主義の思想は強力であり、おれたちの日常の隅々にまでいきわたっていて、もはや当たり前のような顔をして、全てを呑み込もうとしている。だが、商売は商売で、遊びは遊びだ。何でもかんでも自分の得になりそうな選択ばかりしているようではやはりどうしようもない。それがわからないやつは、もう一回Lesson1からやり直せ。

■ おわりに-おまえは矛盾を愛せ-

おまえの人生が常に順風満帆であることは保証されていない。うまくいっているときは、おまえは必勝法に乗ってもいいだろう。しかし、なにかがうまくいかなくなった時、世の中に溢れている正しげな言葉や、分かりやすい成功法則みたいなものはおまえを助けない。それどころか、劣等感やおまえの中のZAKOみたいなものを呼び覚ましてくる危険すらある。

「成功者がこうしろって言っていることが出来ないのはぼくがわるいんだ」

これは、間違いなく腰抜けのセリフだ。しかし、おれはおまえをそんな腰抜けに育てた世間に文句を言いたい。KIDSにコカ・コーラを散々与えて虫歯になるなと言うようなブルシットだ。

分析やロジック、モデル化や言語化というものは、物事を単純化し、分かりやすくするための強力なツールだ。おれたちの計算リソースは有限であるから、複雑なものを複雑なまま取り扱うことは難しい。おれたちは難しそうな物事をハンディに操ってみせるそうした思考ツールの華麗さについつい目を奪われてしまう。

しかし、おまえは誰かに、わかりきったような一言で単純にモデル化されたいだろうか?おまえの中には、おそらく、わりきれないものや、矛盾や葛藤が山ほどあるだろう。少なくともおれの中にはある。今日話した中にもつじつまが合わない部分があるかもしれない。だが、それでいい。それが無いやつはマシーンだ。

おまえはマシーンと仕事がしたいか?例え、矛盾や理不尽だらけであっても、おれは今んとこヒューマンと楽しく悩みながら仕事をしたい。だからおれは自分の中の矛盾を大事にする。イケてるビジネスマンしぐさを取り入れながら、どこかそれはただのロールプレイで、取るに足らないものだと思っている。他人にスゴイと思われたくもあるが、それは現時点で良いとされているものをなぞっただけに過ぎず、よりイノベイティブであるためには、誰にも価値のわからない存在であらねばならぬと思っている。暇が大好きだが、嬉々として過酷な現場でハードワークをしている。

おれが決めたことは、そうした自分の中の矛盾を愛し、楽しむことだ。そして人生のままならなさそのものに価値を見出すことにしている。結果がわかりきったことなんてやってもしょうがない。ただ、そうした自分なりのタフネスに辿り着くまでに、おれは大いに迷走し、壁にぶち当たって来た。ピンチも散々あった。だから逆に思う、それこそがやるべきことだったのではないかと。

そういうことを踏まえた結果、おれからのメッセージはこうなってしまったわけだ。

「おまえはまず、効率とかタイパとか最短距離とかいう、おまえのタフネスを蝕むイモムシスイーツのような言葉を脳内から削除しろ。」

闘魂創世記より再掲

おれの言いたかったことが何か、そして、イモムシスイーツがどういうものか。実はおれにもあまりわかっていないが、少しでも伝わったなら幸いだ。答えはおまえの中にしかない。

じゃあまたな。

誠にありがたいことに、最近サポートを頂けるケースが稀にあります。メリットは特にないのですが、しいて言えばお返事は返すようにしております。