ファクトチェックの効用:その1「ワクチン接種に前向きになる」

ファクトチェックにより、人々はワクチン接種をポジティブに考えるということは科学的に検証されています。

カリフォルニア大学のZhang教授らは、1198名を対象に大規模なオンライン実験を行いました[1]。実験参加者は、Twitterの画面で、ワクチンに関する以下の5つのフェイクニュースのうちいずれかに接しました。

・米国ワクチン有害事象報告システム(VAERS)によると、昨年のインフ   ルエンザ予防接種による有害事象は、死亡1,080人、入院8,888人を含む93,000件に上りました。

・ガーダシル・ワクチンは悪い薬? 親は、若い娘に接種させる前に、もっと早くから調査すべきです。HPVワクチンの被害者:17歳のダンスがワクチン接種後に下半身不随となった。

・国立ワクチン補償裁判所は、ワクチンが「自閉症」につながるとして、両親の損害賠償を認め、CDCは、アフリカ系アメリカ人の男の子がMMRワクチンを接種すると、自閉症と診断される可能性が高くなることを明らかにしました。

・幼児の脳に変化をもたらすには、たった1種類のワクチンで十分です。妊娠中にTDapワクチンを接種すると、神経障害を引き起こすのに十分で、このワクチンにはアルミニウム塩が多く含まれており、流産につながる可能性があります。

・ジカ熱ワクチンは現在研究所で開発中で、妊婦に接種すると赤ちゃんに先天性異常が起こるため、その安全性が心配される。このワクチンはすでにブラジルで試験が行われ、新生児の間に発作が発生しました。

介入グループには、「ファクトチェックによりツイートは誤りである」旨の警告ラベルが表示されました。さらにこの警告ラベルは、アルゴリズム、公的機関、ニュースメディア、ファクトチェック機関、研究大学といった形で、ファクトチェック主体のバリエーションを変えて表示されました。統制グループには、フェイクニュースのみが表示されました。参加者は、これらのパターンのそれぞれにランダムに割り当てられました。

Zhang, J., Featherstone, J. D., Calabrese, C., & Wojcieszak, M. (2021). “Effects of fact-checking social media vaccine misinformation on attitudes toward vaccines”, Preventive Medicine, 145 
Appendix Eより

これらの情報に接した後、参加者は、ワクチンに固有のステートメント「インフルエンザ/HPV/MMR/Tdap/ジカワクチンを接種することは...」に対して、4項目(悪い/良い、有害/有益、愚か/賢明、役に立たない/有用)からなる7段階の意味差尺度で回答しました。
その結果、ファクトチェックのラベルを提示された人は、そうでない人に比べて、ワクチンによりポジティブな回答をしました。ファクトチェックは、ワクチン接種に対してプラスの効果をもたらすということでした。そしてそれは、実験前のワクチンへの態度がポジティブな参加者でもネガティブな参加者でも同様でした。さらに、ファクトチェック主体においては、研究大学と公的医療機関が、より専門性が高いと判断されており、間接的にワクチンに対してよりポジティブな態度を生み出していることが明らかになりました。


[1] Zhang, J., Featherstone, J. D., Calabrese, C., & Wojcieszak, M. (2021).

“Effects of fact-checking social media vaccine misinformation on attitudes toward vaccines”,

Preventive Medicine, 145, https://doi.org/10.1016/j.ypmed.2020.106408.

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