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ゴボウだけではダメだった【食物繊維が腸内環境を整える・後編】

食物繊維にもいろいろ種類があり、その種類によって、大腸内で働く場所も違えば、腸内細菌による発酵に要する時間も違います。

今回は、
数ある食物繊維をどう組み合わせれば腸内環境を最大限に引き上げることができるのか、
という点に焦点を当てて解説します。

また、食物繊維のサプリメントについてもコメントします。
(記事の文末に動画も添付しています)

大腸の構造と役割

今回はまず、食物繊維の種類によって、大腸の中で働く場所もそれを発酵させる善玉菌も違う、というテーマです。

簡単に、大腸の復習です。

大腸は右脇腹あたりで小腸から引き継いで、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸を経由して直腸までつながっています。
だいたい、1、5mほどの長さです。 

大腸のそもそもの役割は、便あるいは腸内の水分を吸収することです。

大腸の入り口付近の便は、まだドロドロの状態です。
そこから少しずつ水分を抜いていき、最終的に程よい硬さの便になります。

何か「悪いもの」を食べた時に、体はそれを早く排出しようとするため、大腸内の通過速度も速くなります。
すると、水分を十分に吸収していないので下痢になるワケです。 

もちろん、水分を吸収する理由は、代謝活動に使うためでもあります。  

食物繊維によって大腸で働く場所が違う

今、大腸が注目されているのは、
腸管免疫の中心であり、腸活の要だからです。
大腸には約1000種類、100兆個にも及ぶ腸内細菌が棲息しています。

その内、入り口付近に多く潜むのは乳酸菌です。
乳酸菌の活躍場所は主に小腸ですが、大腸の入り口辺りまでは守備範囲です。

この乳酸菌が好物とする食物繊維は、ゴボウなど根菜類に多いイヌリンです。

続いて、大腸の中ほどから後半にかけては、有益な短鎖脂肪酸を作るバクテロイデス属と呼ばれる菌が多く棲んでいます。
エサとなる食物繊維は、穀物とくに大麦に多い水溶性食物繊維の中のβグルカンです。

大麦に関しては、下の記事をお読みください。

大腸のもっとも奥では、ビフィズス菌の比率が高く、そこでも短鎖脂肪酸を作ります。
ビフィズス菌が好む食物繊維は、全粒穀物や豆類、冷えたご飯に多いレジスタントスターチです。

このように、大腸の場所によって棲息する細菌は違い、それぞれがエサとする食物繊維も違います。

したがって、
「ゴボウさえ食べていれば」とか、
「大麦を毎日食べているから大丈夫」
ということではありません。

食物繊維は、いろんな種類のものを摂ることが大切です。

食物繊維のサプリは慎重に

この流れでサプリの話をします。
食物繊維をサプリで摂ることについては、「かなり慎重に」と申し上げておきます。

サプリで特定の食物繊維を大量に摂り続けると、それを好む腸内細菌ばかりが増えていきます。
今の説明で分かるように、腸内環境で大事なのは多様性です。

大腸に定住できる腸内細菌には限りがあります。
特定の腸内細菌ばかりが増えてしまうと、他の腸内細菌の居場所がなくなり、多様性が低下する、乱れる可能性があるからです。

食物繊維のサプリを飲みたいのであれば、多種多様な発酵性食物繊維がバランスよく含まれている商品を選んで下さい。

発酵性食物繊維や、先ほど登場した短鎖脂肪酸レジスタントスターチについては、【前編】の記事ですべて解説しています。

食物繊維によって発酵に要する時間が違う

食物繊維の種類によって、大腸の中で働く場所だけではなく、
発酵に必要な時間も違います。

例えばゴボウに多いイヌリンは、摂ってから約4時間で腸内細菌による発酵がピークに達します。
大麦に多いβグルカン6時間以上レジスタントスターチ10時間以上経って、発酵はようやくピークを迎えます。

それを踏まえると、朝食で多様な食物繊維を摂ると、日中の間ずっと発酵が続くということです。

夕食でも数種類の食物繊維を摂れば、翌朝まで継続して発酵します。
発酵は寝ている間も休みません。
要は、24時間ノンストップで発酵を持続させる。

これが、“理想的な”大腸の腸内環境、腸内細菌バランスです。

まとめ

食物繊維の種類によって、大腸の中で働く場所も、それを発酵させる善玉菌も違います。

大腸の入り口付近に多いのは乳酸菌です。
乳酸菌が好物とする食物繊維は、ゴボウなど根菜類に豊富なイヌリンです。 

中ほどから後半にかけては、バクテロイデス属と呼ぶ菌が多く棲んでいます。 エサとなる食物繊維は、大麦に多い水溶性食物繊維のβグルカンです。

大腸の一番奥では、ビフィズス菌の比率が高くなります。
ビフィズス菌は、全粒穀物や豆類、冷えた芋やご飯に多いレジスタントスターチという食物繊維をエサとします。  

したがって、食物繊維はいろんな種類のものを摂ることが大切です。 

そう考えると、特定の食物繊維ばかりが含まれるサプリメントは、腸内細菌の多様性が低下する可能性があるので、慎重な判断が必要です。

食物繊維の種類によって発酵に必要な時間も違います。
朝食と夕食で多様な食物繊維を摂ると、24時間ノンストップで発酵を持続させることも可能です。 

この記事の内容については動画もアップしています。
合わせてご覧ください。


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