雪組『蒼穹の昴』(2022/10_1回目)

圧倒的な数と質の美で終始こみ上げてくるものがあった。ギリギリに決めたし正直悩んだ部分もあったけど、観られて良かったと心から思える。このクオリティでこの値段はバグ。最上級のエンタメだし、歳をとって何歳になっても通い続けたいと思った。


彩風咲奈様

ど頭から感じた。彩風さん、中華服ハマり過ぎでは?正直キービジュの時点では、ちょっと薄すぎるかもなとか思ってたけど全然そんなことなかった。ちゃんと華があった。というか御本人に華しか無いので何着てもラグジュアリーなんですが……。メイクも下瞼にかなりがっつり黒ラインをいれて、白目を強調してたのが切れ長感を加速させてとっても美しかった。色男ですか?当たり前です。でもチャラチャラしてる色男ではなく、何かもう持ってるモノが良すぎるから何やっても色男になっちゃうんですよね感すごい。スタイルも言わずもがななので、布を多く使った服がまあよう似合う。キラキラもお似合いだけど、無駄を削ぎ落としたスタイルも似合うの何?赤一色衣装の時の隠しきれない美男子さよ……

そしてその見た目で気さくで秀才でみんなに愛されるキャラクターでお兄ちゃんやってて……って属性過多すぎる。特に春児へのお兄ちゃんムーブのナチュラルさ凄い。そして最後まで玲玲と恋愛関係にはならず、頭を撫でるだけだったの良かったな~愛を感じた。文秀の、実直だけど根は陽気な感じ、ストーリーが進んでいって葛藤が見える中でも芯があって見やすかった。大切なものを本当に大切に思っていて、それでいて守る覚悟と肝が座りすぎてる。とんでもなく好きだと感じたキャラクターでした。「生きる方が難しい」「道をつくって生きてやる」みたいな、昴に挑戦するような文秀の演技、あの時の若干人間やめてるような、殺気立ったといっても過言ではないような表情が物凄く物凄かった。セリフがまくしたてるぐらい早口でも、ちゃんと聞き取れるのありがたい。

それから歌が上手い。低くても辛そうではなくむしろ朗々と響くのすごい。何回もオペラをあえて外して、空間の広がりにお声が響く様子を楽しませていただきました。ものすごく訴求力のある声。何回か拝見してるけど、今回がいっちばん好みだった。感謝。あと横顔のなだらかさが大変麗しかったです。感謝感謝。


朝美絢様

今回は持ち前の大きな目をさらに大きくされて、ザ•天真爛漫少年だった。私の中で新しい朝美さんだ!恐らく敢えてヒール等履かずだったので、少年春児の無邪気さがよく表現されていた。にぱっ!って笑う顔の尊さよ。

けっこう高めの声出しを貫かれてたので、ちょっと中性的な感じで見られた。ボロをまとっても顔面が上級すぎるので脳がバグる。途中、京劇のシーンの身のこなしと軽やかさは鳥肌が立った。ひらっと、あくまで自然に舞われるもんだから、なんか簡単そうに見えるけど絶対違うのは知ってる。あと、宦官になった後の服がまあ似合う。朝美さんは逆にビジューとか顔周りに何かないと物足りない方かもしれない(顔面が勝っちゃう)。相変わらず造形が美しすぎて、目が慣れるまで時間がかかった。
それから本当に歌が上手い。今回はどちらかといえば踊りの印象が強かったけど、彩風さんとのハモりがハマりすぎて凄かった。声の相性もいいんだろうな~。

お互い違う制服で再会して昴に向けて歌うところはもう、もう、なんというか歴史というか、個々の重なりがうねりとなるみたいなことをずっと考えてた。きっと必然で、だけどちょっと偶然的な運命みたいな。文秀に昔みたいに突っかかっていく所本当に泣いた。全体的に今回は涙腺がすごかったけど、群を抜いて凄かった。小難しいことをぐちゃぐちゃやってるなかで、ああいうストレートな言葉は響きまくる。ラスト、見送る春児の笑顔...いっつも笑顔で、底抜けに真っ直ぐなエネルギーが文秀とは違うベクトルで眩しすぎた。なんにせよ人生2度目の朝美さんで幸せでした。

和希そら様

初めてちゃんと認識して拝見したけど、あの衝撃はすごかった。たぶん今まで見たタカラジェンヌさん史上一の衝撃的な出会いだった。二次元そのものすぎる。科挙のTOP3として出てくるところのシーンだったけど、横向きの涼々しいお顔が「作画が良い」のレベルで二次元。リアルに二度見した。そんでその綺麗なお顔で響く低音なんやからもう、もう、そんなん好きやろって話なんですよね。本当に、本当にすべてが美しくて、ああこの方トップ近くまでいかれるんだろうなと確信した。ポテンシャルというか、なんかもう完成されてないか?なんで今まで気付かなかった?と思ってたら、シティハンターの時はギリギリいらっしやらなかったのか。

出会った役どころがクールで、実直そのものというのも良かったのかもしれない。彼一人だけ満州人だから、漢人の他大多数とは見えている景色が違って、だからこそ西太后にめちゃくちゃ反発してたりして。キリッとした顔で、文秀たちがわちゃわちゃやってても一歩引いてみているような感じだけど、国を想う気持ちは本当にまっすぐだったなあと。個人的に1番オペラ向けた人だったと思う。

あと歌もめちゃくちゃ(以下略)。一瞬だけマイクトラブルがあった(マイクが入らなくなった)とき、地声がしっかり間こえて生歌だと確信した。全然聞こえたのすごすぎ。なんで雪組さんはこんなに深くて低い、心にすっと沁みるような、心ごと掴んで包むような声をされてる方が多いんだろうか。好きです。

芝居その他

西太后様、序望から終盤までめちゃくちゃ上手かった。ただひたすらに演技が上手すぎるさすが専科、これが専料……。途中までのミスリードからの、本当に皇帝のことを大切に思う気持ちの「私が悪役となって討たれるべきだった」は物凄くくるものがあった。涙腺ポイントでした。あとチェ口のような声が素敵。

朝月さん、とても可憐な少女でした。声の伸びが相変わらず凄い。水みたいにスーッとどこまでも伸びていって若干怖かった。人間か?ピンクと緑のお召し物がとてもよくお似合いでした。でももう少し掘り下げて欲しかった感はあるな。「側にいます!」のシーンは良かったけど、文秀への感情はどれぐらいの強さだったのかとか..二回目見たら分かるようになるのかな?

次期トップ娘役の夢白さん、めちゃくちゃ美しくてびっくりした。骨格ウェーブ!フェミニン!淡い色が得意!感がすごい。色気のある役どころもはまってたし、今後のステージがとても楽しみ。


事前に大まかな構図を入れてはいたけど、最後「亡命する」あたりから一気に日本軍の関係者も増えてきて、若干?となったので次回までにちゃんとしたい。いろんな策略が張り巡らされてることは分かるので、一気に原作が気になってきた。もろ超大作をギュッとしました感。本当は語られてる地の文がいろいろあるの知ってる。気になる。

曲は、全体的に二胡?やハープ?がシリアスなシーンで効果的に使われててよかった。昴に向かう二人の決意が強く感じられるシーンが本当に好きで印象的。要所要所で、光に向かって歩き出す(客席には背を向ける)演出があったけど、一歩一歩信念をもって進むキャラクターたちを象徴しているようですごく良かった。希望あれ!と強く思うような、確実に閉じられたところにいるのに、その先を思い起こさせるような……。初めて一本物を見たけど、案外あっという間でした。

ショー

ショーの衣装が大変良かった。もっとしっかり見たかったなというのが本音!これぞ宝塚なキラキラ衣装はそれだけで胸がいっぱいになるから。記憶違いでなければ下手から和希そらさんスタートだったはず。マント?の裾がひらひらとなって、真っ赤な衣装で本当に本当に好みでした。美しい。そんでまた声が深くて(以下略)。いや、物凄い好みの方見つけてしまった感がある。楽しみが増えました。朝美さんも、メインのダンスはあったけど歌は少な目だったのが残念。それは彩風さんもか。ショーとしての歌はかなり少なかったな..。全員が金黒の衣装で踊るところは眼福以外の何ものでもなかった。視界いっぱいにこの世の美が溢れている素晴らしさたるや。個人的朝美さん大優勝シーンはここ。オールバック気味のスタイルで、ちょっと皮肉っぽく笑うあの独特の表情がよく出てて素敵だった。

大優勝と言えば、フィナーレの彩風さん•朝美さんの衣装!キラッキラが過ぎるけど、あくまで清のテーマを崩してないからよく似合う。羽はなくて正解だと思う。というより、マントが十分豪華絢爛なのでもうOKです。あれだけド派手な衣装に着られないジェンヌさんってやっぱりすごいなと実感。スポットライトに照らされて個々のビジューが乱反射するあの光景は本当に来て観て良かったと思える。あの瞬間、この世の美しいもののほとんどがあそこにあったと思う。もっと見たい!と思わせられるレビューでした。

座席 : 立ち見16番

※コロナ全盛期、左右の間隔が1番空いており、一列しかなかった時期の感想です。

見晴らしが良い。身長のせいか分からないけど(170cm)かなり快適。ヒールは履かなくても大丈夫そう。デメリットは客席全体が見えてしまうので、中座する人とかいるととても気になる。オペラで強制シャットアウトしてもいいけど。メリットは、逆に舞台全体を見られるから「数」の圧を感じられる点。今回は割とそこでエンタメの力、舞台の力、大いなる力への畏怖からくる感覚に襲われて、感動で泣きそうになったことが多々(日清戦争のシーンとか)。

セットの細かい部分までは見えない(というか奥行きが分かりにくい)けど、面としての舞台構成を見るのは面白かった。オペラがあれば表情も余裕で確認できるし、近い方の銀橋に来てくれれば肉限でもなんとなく表情は分かる。親切な構造。それから、コロナで左右との感覚が保たれてるのも、地味だけどかなりのメリットだと感じた。オペラや拍手のときに何となく隣が気になる、がない。立ち見は基本一人で来てる人がいるので静か。帰りもすぐ帰れるし、幕間は椅子確保できるし、横を気にしなくていいので戻るのもギリギリでOK。これで2500円はバグです。

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