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NO.85 映画『コット はじまりの夏』に就いて


今日の午前中、ヒューマントラスト有楽町で、1980年代初頭のアイルランドを舞台に、9歳の少女が過ごす特別な夏休みを描いた映画『コット はじまりの夏』を観る。

隅々まで静けさに満たされた素晴らしく美しい映画だった。

物語は…

1981年、アイルランドの田舎町。
大家族の中でひとり静かに暮らす寡黙な少女コット(キャサリン•クリンチ)は、夏休みを親戚夫婦キンセラ家の緑豊かな農場で過ごすことに。はじめのうちは慣れない生活に戸惑うコットだったが、ショーンとアイリンの夫婦の愛情をたっぷりと受け、ひとつひとつの生活を丁寧に過ごす中で、これまで経験したことのなかった生きる喜びを実感していく…

映像、音楽も素晴らしいけれど、この映画の見どころは、何と言っても本作がデビュー作となるキャサリン・クリンチの魅力にあるだろう。

その繊細で透明な存在感は、まさに人生のある奇跡の瞬間だけに見られるものだと思う。

彼女は、IFTA賞(アイリッシュ映画&テレビアカデミー賞)主演女優賞を史上最年少の12歳で受賞したのも納得出来る。

今もまだこの作品の沈黙の魅力とラストシーンでキャサリン•クリンチの走る姿が頭から離れないのだ。


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