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「ソーシャルデザイン 実践ガイド -地域の課題を解決する7つのステップ-」を読んで・・

「地域課題」や「社会課題」というワードを目にする機会が日に日に増えています。Google Trendというツールで調べてみると、検索の関心も高まっていることがわかりました。

Google Trend「地域課題」の検索インタレスト(人気動向)
Google Trend「社会課題」の検索インタレスト(人気動向)


いろいろな文脈や背景があるかと思いますが、日本という国でマクロな視点で見ると「人口減少」や「少子高齢化」があり、より多くの人の心理や意識に影響を与えた出来事としては「東日本大震災」があるのではないかと思います。



そこからミクロな視点で各地域や市町村を見ると、一言で表現できない多種多様な課題が存在し、それに対する一人ひとりの心理や意識もポジティブ・無関心・ネガティブなど様々であり、実際に地域で活動する当事者の人たちは日々、直面する課題に対して試行錯誤をしながら解決のアクションをとっています。

私の話をすると、昨年から「地域活性化」や「地方創生」に関わる仕事やプロジェクトに関わる機会があり、自身は少しずつ「地域課題」に関心が高まってきた一人で、さらに来月5月からは茨城県大洗町のまちづくりの仕事をする予定で、当事者の一人として地域に関わっていきます。

それに合わせて地域課題に関する情報をインプットする機会を私たちのLabでは増やしていて、今回のnoteは「ソーシャルデザイン 実践ガイド -地域の課題を解決する7つのステップ-」という本のメモになります。

地域課題や社会課題を市民のクリエイティビティで解決することを「ソーシャルデザイン」というワードで、その考え方や手法、事例が紹介されている本です。


「ソーシャルデザインとは何か」

ソーシャルデザインとは「森の中に、道をつくる」活動。高齢化、地域産業、育児、コミュニティ、災害・・・。社会課題は、鬱蒼とした森のようなもの。足を踏み入れると出口が見えず、とらえどころがなく、道に迷うことも多い。ソーシャルデザインとは、そんな森に一本の道をつくる活動です。森を歩き、声を聞き、仲間をつくる。森の地図を描き、一番必要とされる場所に、必要な道を、橋を、小屋をみんなでつくる。それがソーシャルデザインです。

ソーシャルデザインの定義

・人間の持つ「創造」の力で、社会で抱える複雑な課題の解決に挑む活動
・社会が抱える課題の森を知り、課題を整理して突破口を見出し、その解決に必要な道を拓く活動がソーシャルデザインという活動

7つのステップ

1.森を知る:森の中を歩き、先人の知恵を学び、森の全容を理解する
2.声を聞く:森の住民、管理者、活動家の声を聞き、課題を自分ごとにする
3.地図を描く:自分の目と耳と足で手に入れた情報を手掛かりに、森の全容を地図にする
4.立地を選ぶ:どこに道をつくるべきか、選択・決定する
5.仲間をつくる:住民や専門家など、道づくりに協力してくれる仲間を集める
6.道を構想する:どんな道をつくるべきかというアイデアをみんなで多数出し、検証し、具体化する
7.道をつくる:仲間とともにみんなで道をつくる。どんどん改良し、必要なものを加えていく

ソーシャルデザインのエッセンス

1.出会いとつながり

・プロジェクトの起点には必ず「人」がいる
・その時のテーゼに対する気づきや発想のヒントを与えてくれるのが「人」である
・つくり上げた社会課題に対する「解」を行動に移して社会で共有してくれるのも「人」である
・ソーシャルデザインは人によって動き、人から人へ循環し、つくりあげられていくもの

2.YES, AND

・ソーシャルデザインのアウトプットはあくまでも社会のためのもの
・自分の主張や意思にこだわりすぎると、有用なものにならない
・大切な心構えはあらゆる可能性を捨てないこと、可能性のために「動く」こと
・どこに何が眠っているかわからない社会課題の森に対して、やってみてなければわからない、調べてみなければわからないというのはソーシャルデザインの重要な前提
・そこにある可能性に対してネガティブ(NO, BUT)になるより、何かあるかもしれないというポジティブな気持ちを持って取り組んでみる

3.量と質

・ソーシャルデザインはピラミッドのように土台から積み上げていく行為(「森を知る」と「声を聞く」で集めた情報はピラミッドの一番下の土台、表に出るアウトプットの制作は一番上のほんの一部)
・よりよくデザインすることを自分に課した時、より良くするための可能性を自ら放棄しないための問いであり、辛抱強い調査・検証・アイデア出し・試作の積み重ね
・その辛抱強い作業の経験値は「質」の直観的判断を導く

4.専門性と最適化力

・座れない椅子はアートではあり得ても、デザインの世界ではあってはならない
・何かをデザインする時、必ずユーザーがいるため、ユーザビリティとクリエイティビティのバランスを取り、両立できる最適なポイントを見極めなくてはならない=「最適化」
・3つのバランスを意識すること
①論理と感性:データを集めて論理的に分析をしている時にそのデータからジャンプしてアイデアの種を発見すること、もしくは感覚的に良さそうと思ったアイデアは必ず論理的に検証する(論理的に突き詰めることで、頭の中で整理されると新たな思考回路と結びつき、さらにアイデアの質が上がる)
②抽象(アイデア)と具体(カタチ):バランスが取れていないとアイデアはいいけど使い勝手が悪い商品や、一見格好いいけど新しい価値のない空間が生まれてしまう
③主観と客観:プロジェクトに対して主体的に深くのめり込むことでその情熱が優れたデザインを生む、一方で冷静に客観的にプロジェクト全体を俯瞰する視点を持ち合わせること

5.負のデザイン

・デザインの最も重要な役割は人間の暮らしを「本来の姿」に戻す調整機能にあり、止める、減らす、小さくする、省略する、放置するなどの方向を強く意識したデザイン行為の重要性を述べ、経済成長、商業主義、拡大主義のための正のデザインに警告を鳴らす
・ソーシャルデザインは「負の創造行為」が大切

※森を知るフレームワーク:AIUEO

Activity:人やモノの動き、流れ、経路、時間経過による変化
Interaction:人同士やモノとヒトの相互作用、交流
User:その場所を利用している人のタイプ(性別、年齢、グループ構成など)
Environment:その場所の雰囲気、空間、設備、公共空間・私空間の境界
Object:観察エリアに存在るモノ、独特なモノやないモノにも注目



最後に・・

私たちのLabも、メンバー一人ひとりが地域課題に対してのアクションを当事者として、今後増やしていきたいと思っています。

これまで培ったきたノウハウを実際に活用してみることや、アクションの中での気づきや発見を言語化・分析して新たなノウハウにしていくことなど、Labのプロジェクトの一つとして推進していきます。

私たちのLabは組織体ではなく、有機的につながって各々の特性と感性を最大限に活かしながら活動しています。「自分の思考と行動をデザインしたい」「地域課題に対してアクションをしたい」「Thinking Design Labの考え方に共感して何か一緒にやりたい」という方はぜひお気軽にお声かけください。

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