見出し画像

誰にも頼まれていないTシャツ

「Tシャツを作る」というワンアクションで、どれだけ変化を起こせるか?

今回は、そんなデザインのお話です。

経営者の皆さんはブランディングの実践的な気づきがあるかもしれないし、デザインの勉強にもなるし、コンテンツを作りたい人の勉強になるし、そんな価値のある記事になると思います。


ちょっと長いんですが、最後まで読んでください。


こんにちは。

デザインで成す会社、NASU(ナス)の 代表取締役/クリエイティブディレクター/デザイナーの前田高志です。

ぼくの会社である株式会社NASUは、今年の6月1日で創業5周年を迎えました。ぼくひとりだったNASUも9人に。ちょっぴり会社っぽくなってきたし、ぼくもいつのまにか社長らしくなってきた。でも、見た目はまったく社長っぽくはない。

一番前の坊主がぼく、前田です。

2024年中の目標である『デザインノート特集号』風に撮ってみた。目標達成まで、あと1年半。

誰にも頼まれていないTシャツ

創業当初、「NASU-Tシャツ」をクライアントに配っていた。誰にも頼まれた訳でもない。「このロゴのTシャツあったらいいなぁ!」なんて、一度も言われたことがありません。

なのにデザインした。

デザイナーなのに、頼まれてないのにデザインした。

自宅のアトリエにて撮影(2016年)

「NASU-Tシャツ」は、NASUのコーポレートロゴがプリントされている至極単純明快なTシャツです。

フリーランスのデザイナーとして右も左もわからない頃。ありがたいことに、独立後すぐに仕事に恵まれました。仕事が途切れたことは一度もない。

同じ頃、大阪のレトロ印刷という印刷会社が、安価でシルクスクリーン印刷を体験できる「スリマッカ」という天才的なキットを販売していたので購入した。

さて、何を刷ろう?

と考えたとき、当時のクライアントさんに感謝の気持ちを込めて、1枚1枚手刷りしたNASUのノベルティTシャツを贈るのがいいのではないか?と思った。

一枚一枚感謝の気持ちを込めて

……とだけ書くと、ただの美しすぎるから正直に言いいます。本当は、当時ブログを書いていて、ブログの読者さんにプレゼントにしようと思ったんです。

しかし、独立して数ヶ月の段階での僕のブログのアクセス数は無いに等しい。友人や知り合いが5人読みにきたらいい方で。読者プレゼントを募って、応募が来ないと相当虚しいし、悲しい。なので、方向転換することにした。

という経緯があり「NASU-Tシャツ」は、当時、お世話になっていたクライアントさん限定に配ることにした。

NASUのクライアントさん限定

「NASUと仕事をしないと入手することができない」人間は、限定という言葉の前では、正常な精神状態ではいられなくなる。

「感謝の気持ちを込めて…」ももちろんあったけど、これが欲しかったら、「仕事を依頼してね」という意味のほうがでかかった。


結局、コンテンツを作り、発信をしている

創業当初2016年はSEO至上主義で、アクセス数が正義みたいな価値観が背景としてあった。ちょっとアクセス数上がればいいなと思ってたけど、それよりは当時のぼくはコンテンツを作っていたと思います。

デザインの魅力を伝えるコンテンツ作り”です。

当時と今でもやっていることは同じで一貫性のある自分に感動した。おれ、すごい。そして、このTシャツを作ることで、以下の6つを為している。

・デザインの魅力の啓蒙している
・クライアントに御礼を伝えられる
・ひさびさに連絡をするクライアントにアフターフォローできる
・NASUの宣伝/PRになる
・ブログのコンテンツになる
・仲間意識の絆が生まれる

為す。だから、成していく。「デザインで成す」なんです。

ワンアクションで、どれだけ変化を起こせるか。

5年経ってもまだ誰にも頼まれていない。しかし、復刻版のNASU-Tシャツを作りたい!

京都のゲーム会社の任天堂を退職し、「NASU」を開業したのは7年前の2016年。法人としては5年前の2018年に創業。時は流れ、社員が増え法人として5年という節目を迎えた今こそ、NASU-T復活の時と全く感じていないけど、作ろうと思った。

デザインは通常、受発注からはじまる。しかし、ぼくは、自分に発注をできないと真のデザイナーと言えないと思っている。

手の届く範囲でいいデザインを届けられたら満足だった

2016年創業当初、ぼくは信じられないくらいのシャイボーイ。今ほど自信満々に口に出すことはできなかったが、独立当時から作っているデザインには自信があった。このTシャツだってそう。

どうせ作るなら、とことん

誰にも頼まれないと言っているが、依頼者は前田高志。ぼく自身だ。

ぼくがデザインするもので、無意味なものは絶対に出さない。問題解決はあたりまえ、そこに新しい意味を持たせる。今の「NASU-Tシャツ」にたどり着く前に、6案のデザイン候補があった。

その中から選んだのが、E案。

NASUとして最初のTシャツであること、そして、ここから大事です。「NASU限定を強め仕事を依頼して欲しい」という意味合いから、これしかない。現状の課題から抽出した、目論見と表現が一致しているものを選んだ。

E案に、屋号の由来を説明しやすいように「為」「成」を追加した。

為して成す。変化を起こす。
NASUのタグラインは、「Change by Design」デザインで変化を起こせ!だ。

社名で、会社の運命が決まる。それくらい社名はデザイン。

「なんでNASUなんですか?」ってよく聞かれるのですが、「為せば成る」の「為す・成す」から来ている。「為せば成る」は、僕が大好きな映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』の中でのドクが言うセリフだ。NASUが苦しくなったときに支えになる言葉として選んだ。

辞書で「為す・成す」を調べたら、「築き上げる」という言葉を発見し、「あ、これ、デザインだ」と思ってさらに社名の決定が強固なものになった。

独立しようとしている人は、いい社名ができたら独立しよう。できないときは、やめておこう。

ひとつひとつ、積み重ねる。為して、成す。ブロックという社名候補もあった。


話をTシャツに戻すと、印刷はぼくが1枚1枚スリマッカで手刷りした。「仕事こい〜」「仕事こい〜」って念じながら。

2016年、自宅にて。

自信と共に伴走してくるのが不安だ。

自分の屋号をプリントしたTシャツ。プレゼントとはいえ、ただの宣伝とも言える。喜んでもらえるかな……?と恐々しながら渡した記憶がある。

「こんなの作ったんで、いらないと思うけど、ワンチャンパジャマとしておくっていいですか?」

当時のぼくはそんな聞き方をしていたと思う。

しかし、そんな心配性の僕をよそに、NASU-Tシャツの反応は上々だった。目の前のクライアントさんが笑顔になってくれた。当時のぼくは、それで満足だった。

クライアントであったOPENCAGEの矢野さん。小豆島に講演できてたときにNASU-Tシャツを着て香川から駆けつけてくれた。


デザインの力をお茶の間に届ける

自分で企画して、デザインして、印刷までして、その一連をブログに書く。今思えば、独立直後のフリーランスだったから、まぁまぁ、暇だったんだなぁ。スプラトゥーン2もバリバリやってた記憶がある。

今のぼくならやらない、というかできない。やりたいけどね。従業員8名を抱えた社長となった今では、時間的に難しくなってしまった。

2023年4月の入社式にて

それから、当時のぼくは、自分の手の届く範囲でぼくのデザインをいいと言ってくれるクライアントさんに喜んでもらえたらそれで満足だった。

今は違う。「デザインの力を日本に残す」とか「デザインをお茶の間に届ける」とか。自分のことを真顔で「デザイン大統領」と言ったりしている。それくらい国にデザインを広めたいと思っています。

ぼくのデザインがきっかけで変化する人が増えた

変わってきたのは、僕のデザインがきっかけで変化する人が増えたから。まずは、クライアントさん。デザインでビジネスを加速させる人・会社が確実に増えた。

坊主にしたのも「変化を起こす」をわかりやすく伝えるアクションとしてやった。決意でもあるが。


それから、NASUのみんな。NASUは、ぼくが一人で立ち上げた会社。2019年にアシスタントを入社してもらったが、それはぼくがいずれ漫画家になるためにデザイン会社として収益を安定させるためだった。デザイン会社として大きくすることは毛頭も考えてなかった。

実は、漫画は今でもやりたいこと。あきらめてない。漫画もデザインを伝えるため。

でも、ぼくとぼくのデザインを信じて一緒に働きたいと言ってくれる仲間が増えた。仲間が増えると夢が増える。

やりたいことぜんぶ実現できるんじゃないかと思えてきた。

その変化と進化を目の当たりにしたら、デザインの力を日本に残すデザイン会社に成長できるんじゃないか? そう思えるようになってきた。

もちろん、目の前のクライアントさんに喜んでもらいたいという開業当初気持ちは、今も全く変わってない。だけど、それだけじゃなくもっと遠くもっとたくさんデザインの力を一般的な生活レベルまで届けたいと考えています。

あらためて、志を形に。5周年の進化とこだわりをNASU-Tシャツに。

繰り返すが、誰からも頼まれていない。欲しいとも言われていない。

人が増え、会社としても5年の節目を迎え、会社として頑張りどきなのが今のNASU。そんな時だからこそ、改めて志を形に。NASUのTシャツの復活を決めた。

今より、ちょっと痩せてる


ただの復刻版じゃつまらない。僕一人から、9人のチームになったことでNASUは進化しているんだから。その力を示したい

復刻版であり、進化版。

それから、NASUは屋号の由来が『バック・トゥ・ザ・フューチャー』から来ていることにもあるように、デザインを起点としたコンテンツ、エンタメを作る会社でもある。

だから、

Tシャツは、着なくてもいいんじゃないか?

Tシャツを買うこと自体をエンターテイメントとして楽しんでもらえるようにしました。

5年を経て、NASU-Tのワンアクションにひとつ、付加価値がついた。

・デザインの魅力の啓蒙している
・クライアントに御礼を伝えられる
・ひさびさに連絡をするクライアントにアフターフォローできる
・NASUの宣伝/PRになる
・ブログのコンテンツになる
・仲間意識の絆が生まれる
・Tシャツを手にしたワクワクが生まれる(←NEW)


初代から進化した復刻版(進化)のこだわりは、たくさんある。

じゃーん!


進化したシルクスクリーン印刷

今回も初代同様シルクスクリーン印刷です。今回の復刻版NASU-Tシャツは細かい文字を含む印刷箇所が増えたので、さすがに手刷りはリソースと品質が追いつかないから、プロに依頼しました。初代のイズムは保ちつつ、クオリティアップしています。圧倒的に輪郭がシャープです。

なんと4箇所、4刷です。

お金かかってます!


フォントがアップデートしたNASUロゴプリント

このTシャツに使われている書体は、NASUのコーポレートフォントで「KATERUフォント」と呼んでいます。実はこのフォント、NASUを創業してすぐの頃と、今とでは微妙に違います。僕の書籍『勝てるデザイン』を出版した際にアップデートしました。コーポレートフォントは会社の哲学を反映した器。NASUの進化をフォントで可視化しています。

「広がれデザイン!」の願いを腕に

袖の印刷は初代「NASU-Tシャツ」にはありませんでした。お茶の間にデザインを届けると同じくらい大事に使っている合言葉「SPREAD THE DESIGN(拡がれデザイン)」を腕にプリントしています。デザインの力で成す人を増やし、笑顔の数を増やす。その結果お茶の間にデザインが届いて幸せになる。僕らの誓いと願いを込めています。

首下に5周年限定ロゴ

これも初代にはなかったポイントです。背面の首下にNASU5周年記念ロゴを印刷しました。5の文字がNASUロゴでできています。この先NASU-Tシャツの復刻があるかどうかはわからないけど、5周年ロゴが入るのは間違いなく今回のみです。

世界に一つだけのTシャツにできるシリアルナンバー

背面の左下部の印刷も復刻版からのアップデートポイント。シリアルナンバーの印刷を入れることによって、買ってくれた人がマジックで好きな番号を自分で入れられる。すると、1点もののオリジナルTシャツになります。

当初はシリアルナンバーは入れる予定はありませんでした。というか、この発想がなかった。これは、ぼくが大好きでリスペクトしている、「THE KING OF GAMES」代表の江南さんから聞いたアイデアです。「THE KING OF GAMES」は、任天堂ライセンスアパレルで、今回ぼくらが目指している、Tシャツを買う体験をエンタメにしているブランドです。

タグにもデザインを

こだわりのTシャツを販売するなら、オリジナルタグは必須だと当初から考えていました。ただ、最初はNASUロゴとサイズ表記のみのシンプルなものを考えていたのですが、どうしても何か入れたくなるのがNASUというかぼくなのかもしれない。ここもKing of Games江南さんに会ったのも大きかった。このアイデアは、NASUの新卒デザイナーであり、この「NASU-Tシャツ復刻プロジェクト」の担当むらちこと村山さんのアイデアで、すごくいいなと思った!

「NASU-Tシャツボックス」を作りました

初代から進化したこだわりポイントのラストは、Tシャツを入れる箱です。これも「THE KING OF GAMES」のリスペクトというか影響なのですが、ただの箱じゃない。ワクワクする箱を作りたいと思い、オリジナルの箱をデザインしました。

NASU-Tシャツボックスは、今回の復刻版「NASU-Tシャツ」の肝とも言える。だからとにかくカッコよくて所有欲高まるものにしたく、プラモデル+ダンボールとアートなものにを目指した。でもどうしても決めきれなくて。

結局「Tシャツを着ている箱」という企画に落ち着いた。かっこよくておしゃれなだけなやつがとことんできない人間だと思った。でもそれが僕であり、NASUである。らしさに落ち着いたと思っている。

最終、時計はトルことにした。十分伝わるなと思って。

というわけで、思う存分こだわりを詰め込んだTシャツが完成しました。

クライアントワークも忙しい中、自社のプロダクトにこれだけ時間をかけたのもどうかしてるのかもしれない。

でも、この取り組みを通して、NASUの大事にしたいことを再認識できた。一つ一つこだわる姿勢、全てを面白がる姿勢、エンタメにする力。その積み重ねがデザインで成すことにつながると確信しています。

このTシャツから、NASUの進化をぜひ感じてほしいです。なにより、ただTシャツを買うだけじゃない、エンタメ体験をぜひ。

実は、まだ仕込もうとしていることがあります。

そこは「NASU-Tホルダー」買った人だけのお楽しみ。

ぼくらのこだわりの積み重ねのNASU-Tシャツが、みなさんの成したいことを成すきっかけになりますように。


NASU-T ホルダー募集 (※現在再販中です)

今夜、PM7:03に「NASU-Tシャツ」を販売します。NASU公式ツイッターをチェックしておいてください。

NASUの株だと思って購入してください。いつか価値が上がるはずです。NASU-T所有者のみなさんは仲間です。お待ちしています。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?