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【制作過程公開】『NASU本 前田高志のデザイン』制作者たちの裏側 第17回 前田高志

「自分のこだわりを伝える本を作りたい。」

2年前の秋、この本を作るために一念発起した。

ぼくは15年近く「任天堂の会社案内」作っていた。新卒の学生に「任天堂のものづくりのこだわり」を伝えるというミッションだった。この仕事はいわばぼくの代表作であり、自分をグラフィックデザイナーとして育ててくれたといえる。

さかのぼると、任天堂に入社する決め手になったのも「任天堂の会社案内」だ。任天堂ともう一社、他に内定していた企業を迷っていたが、僕の師匠が作った会社案内が背中を押してくれた。「良いものを作りたい」。このことは岩田聡さんも知っていて会社案内の打ち合わせのたびにいつも言われた。「会社案内で任天堂に入社した前田さんが、会社案内を作っている」と笑っていた。「任天堂 会社案内」は間違いなく僕の人生にとって大事なピースだ。

「ぼくのこだわり」を伝える。だからこのプロジェクトを「任天堂 会社案内」→「前田案内」と名付けた。2017年9月、仕事の合間に1人で作り始めた。そして、時間を作るために参加していた箕輪編集室も辞めた。


しかし、無理だった。


やりたい気持ちが強いのにやれない。仕事で疲れたあと、とてもデザインする気が起きなかった。時間は作れるけど、スプラトゥーンを夜中までやってしまう。そして、自己嫌悪。その当時行なったセミナーをきっかけに仕事が忙しくなっていったこともある。そして、箕輪さんの会社のホームページを(仕事として)作っているうちに魅力に触れ、箕輪編集室に再び参加する。

復帰した箕輪編集室で再びデザインをしていたら、「やっぱりこれだ!」ということに気がついた。ひとりではできないが「他人がそこにいる」とデザインが楽しい。自分のセンスを他人が喜んでくれる。それが快感になっていた。


ひとりではできないけど、みんなとならできる。

そう考えて、前田デザイン室を作った。そうしたら、たくさんの仲間が集まってくれた。そしていろんなものを作った。「うんちのガチャガチャ」「前田デザイン室のキャラクターのLINEスタンプ」「ダサT」「タロットカード」そして、雑誌『マエボン』。『マエボン』はいろんな反響があった。そうか、ぼくらは本を作れるんだ。「前田案内」を思い出した。はじめの構想から1年が経っていた。

よし、「前田案内(NASU本)」を前田デザイン室のみんなと作ろう。『マエボン』を一度作っていたので絶対楽しくなるのは確信していた。編集長は絶大に信頼している『マエボン』編集長の浜田綾さん。今回の本はデザインが重要だった。前田デザイン室の中でデザインの信頼おける青木佳苗さんにやってもらうことにした。この2人に引っ張ってもらうことにした。

『NASU本』はアートブックとビジネス書の2部構成。当初はビジネス書パートは考えていなかった。なぜかというと「任天堂 会社案内」の場合はあえて言葉で語るのが野暮だと考えていた。任天堂がやっていることは誰もが知っているから。見てこだわりを感じさせるものにしていた。僕の場合はそもそもそんなに認知度はない。僕が考えていることを文字にすることが必要だった。それと、ぼくが大学や専門学校で先生をしたり、ブログを書いたり、トークイベントをやってみてわかったことだが、ぼくの経験が誰かにとって気づきになることが喜びになっていたことも大きい。

2019年1月、編集長の浜田綾さん、アートディレクターの青木佳苗さんの2人とプロジェクトをスタートした。クラウドファンディング、制作発表会、はじめてのプレスリリース…。本格的に本の制作をスタートする前からかなり大変だった。そして3月に入って、本の制作がスタート。4月初旬が入稿だ。1ヶ月ちょっとという短納期。『マエボン』が2ヶ月だったからそれ以上の短納期だった。『NASU本』の制作メンバーは総勢51人になった。浜田さんと青木さん、2人のホスピタリティと仕事量が参加メンバーをひっぱってくれた。


ビジネス書パートではzoomを使って、浜田さんとひたすらインタビュー。12時間以上になった。それを各ライターさん(14人)に書いてもらった。みんな、ぼくのつたないおしゃべりからライティングをした。インタビュー動画を何度も見て書いてくれたのだろう。それを浜田さんがまとめて編集。複数の人が関わったライティングをまとめあげるのは至難だったと想像できる。浜田さんはぼくよりぼくのことを知っている。ぼくが言ったことや考えていることを100%理解してくれているのがほんと大きい。浜田さんなしでは、この『NASU本』は完成しなかった。

そして、ビジネス書パートは校正チームがさらに磨きをかけた。ほんとにストイックにみてくれて何度も内容を書き換わった。ぼくの中の考えもより磨かれた。早くいろんな人に読んでほしい。

アートブックパートは、ぼくのデータ集めに時間がかかってしまいかなりの短納期になってしまった。ほんとに申し訳ない。それなのにかなりのデザイナーが参加してくれた。ぼくではやらないレイアウトがあったり、本の魅力が増した。たぶんぼくが全部見てたら単調になっていただろう。アートディレクターの青木さんはぼくがやりたいことをわかってくれていた。NASU本のセンス、クオリティ維持してくれた。参加メンバーへのサポートも懇切丁寧ですばらしいアートディレクターだった。印刷は「任天堂の会社案内」を一緒に作っていた日本写真印刷コミュニケーションズ。日本で唯一の色域を持った印刷NDPだ。この印刷のパフォーマンスを引き出したのは青木さんの力だ。


そして、クラファンチーム。これだけの支援をもらえたのは想像以上だった。220万円という高いゴールをすんなり超えてしまった。クラファンチームの無数の配慮のおかげだ。そして何より、クラファンでの前デクリエイターのリターン。本当に泣けた。みんなの力で支えられている。本当に感謝しかない。「封筒もいいものにしたい」進めてくれたメンバーもいる。

ついに『NASU本 前田高志のデザイン』が完成した。最初は1人で作ろうとしていたこの本。完成して感想をひとことで言うと、「1年前、1人で作らなくてよかったよ!」だ。

前田デザイン室を立ち上げてよかった。前田デザイン室のみんなとで作ってよかった。前田デザイン室のみんなありがとう、大好き。


胸を張って言える。良い本ができました。

『NASU本』クラウドファンディングは、本日4月26日23:59までです。よろしくおねがいします。↓こちら!


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