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3.10.バジリスク:駆除対象として

3.10.駆除対象として


 幻想動物間での問題と言えば混雑がまず挙げられるが、日本には元々バジリスクに類する幻想動物がいないため、それは危惧されていない。しかし、天敵のオクトサウラーと近種であったと思われる、ツチノコやノヅチなどは存在する。彼らは鳥などを餌とする肉食動物だが、有毒生物に慣れていない彼らがバジリスクと争えば、まず勝利することはできない。実際、地表性の在来幻想動物の毒死死体が、近年いくつも発見されている。しかし、幻想動物同士ということもあり、報告される事例数は少なく(それでも幻想動物そのものの目撃情報数と比較すると、かなりの問題であると言わざるを得ないのだが)、問題を可視化しにくいのが現状である。


 養鶏関係者の間では、ニワトリと間違えられて飼育された場合、一緒に飼育しているニワトリが食べられてしまうのではないかと危惧するものもいる。戦後すぐ、宮崎県の養鶏場で約300羽のヒヨコが一晩で消える事件があり、後年になってバジリスクが原因だったのではないかと囁かれた。現実には、養鶏場にはかなりの数のバジリスクが紛れ込んでいると予想されているが、こうした惨事になることは少ない。多くのバジリスクは周囲のニワトリに手をかけることなく、ひっそりと栄養不足で死んでいくのである。

 
 バジリスクを飼育したければ、毒腺を抜く処置(無毒化処置)を行い、それを証明することができれば誰にでも許可が下りることになっている (27)。コッカトリス型では体内および距を含む足にある毒腺3か所の除去、バジリスク型では肛門内の毒腺を切除し体内の毒腺から繋がる管を縛る。しかし、強力な毒が溜まっている毒腺を除去することは高リスクであり、処置を受けたバジリスクの大半は自身の毒により、術中に死亡してしまう。また、腺を切除したからといって毒の生産が行われなくなるわけではなく、定期的な除去治療を行わないと毒液が溜まって破裂してしまう恐れもある。このため、バジリスクの無毒化処理は倫理的ではないとして、反対する者は多い。


 更に近年、条件が整わなわず繁殖行動を行わない個体が増えてきており、駆除されずして、バジリスクは年々その数を減らしつつある。
バジリスクが危険外来種に含まれるのは、単純にその毒が強力であること、さらにキメラ型の生物であるからにすぎない。多くのキメラに言えることだが、関係者がその見た目に惑わされて判断を誤り、状況を悪化させてしまう。しかし、それぞれの対処法が異なるため、一概にキメラ型をどう対処すべき、というノウハウが確立できず、当面の被害を避けるために、とりあえず幻想動植物のキメラ型を一様に「危険動物」として指示、対処しているのが現状なのである。


27)地域によって対応が異なるが、無毒化処置とその証明書を提出することが基本となる。その後、事実確認のために単純に毒腺と個体のDNAを提出するだけの場合もあれば、飼育場から個体の健康状態、バジリスクの販売元(元の飼い主)の一切を審査する地区もある。飼育許可が下りるまでは、飼育予定の個体は指定された幻想動物関連施設に預けることになる。また飼育者は定められた規則に従い、バジリスク用抗毒血清の作成を依頼し、最寄の病院や幻想動物研究施設、自宅に保存しておく義務を負う。

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