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「次にくるマンガ大賞」で本当はめちゃくちゃ語りたかった、何故か涙があふれるラブコメ『僕の妻は感情がない』

今年もこの時期がやってきた。「次にくるマンガ大賞2020

漫画好きの愛がそのまま反映されていることが丸わかりなラインナップで、他の賞レースではお目にかかれないような「次にくる」であろう作品を知ることが出来る「次にくるマンガ大賞」。本当に素敵な企画で、この業界で働くものとして、そしてイチ漫画好きとしても毎年注目している。

幸運な事に、私は3年前からニコ生の発表会に出演させていただき、熱い気持ちを抑えきれず語りまくるという事をやらかしてしまっているのだが、今年は特にラブコメで心をグッとつかまれる作品が多数受賞しており、より熱量が高くなってしまった。

Webマンガ部門1位の『僕の心のヤバイやつ』をはじめ、コミックス部門2位『君のことが大大大大大好きな100人の彼女』、コミックス部門3位『それでも歩は寄せてくる』など、上位がもう尊すぎて死ねるラインナップだったのだが、この辺はニコ生で想いをぶつけさせていただいたので、今回は上位には入らなかった作品で個人的に語りたくて仕方なかった作品を紹介したいと思う。

夫を思う家事ロボットの真っ直ぐなやさしさに涙が流れる

『僕の妻は感情がない』は、表情がほとんど変わらない家事用ロボットと主人公の日常を描いた作品である。本作を初めて読んだときに私は、なぜかめちゃくちゃ涙が止まらなくなった。

演出的な泣かせ要素なんてものは一切なく、もちろん誰かが死ぬなどの急展開もない。

そこにあるのは、家事用ロボットであるミーナと、ミーナを中古で買った主人公・タクマの、何でもない日常の中でお互いが相手を思い、思われたいというささいな瞬間だけだ。しかしこの「ささいな瞬間」がありえないほど感情を揺さぶってくる。

しかもミーナはロボットであり、その思いの表現が単純で素直。だからこそ、情報量が多くなりすぎた現代に生きる人間にガッと刺さってくる。

あえてこの作品をひとことでまとめるなら「疲れた大人への癒しが詰まったやさしいラブコメ」なんだと思う。

ラブコメの進化と、注目度の高さ

最近のラブコメの進化は、著しく考察要素が詰め込まれた作品やドキッとさせられる瞬間瞬間の切り取り、読者目線だからこそ出来るような感情の変化の気付きをテーマにした作品などなど、本当に幅広いジャンルになって来ている。

「次にくるマンガ大賞」でラブコメ作品が高く評価をされている事も、ラブコメへの漫画好きの注目度の高さを表している。

コミックス部門、Webマンガ部門それぞれのTOP20を見つつ、本当に漫画の未来は明るいとあらためて感じる。来年はどんな作品がランクインするか楽しみにしつつ、今年これから出てくる沢山の最高の漫画たちを、これからも読み漁っていきたいと思う。

最後に。

そんなラブコメが注目をされている中で、コミックス部門1位に王道ストーリー漫画である『アンデッドアンラック』が君臨したという事実は、単純にめちゃくちゃ凄い事だと思う。

この作品はストーリー漫画の弱点である「最初の〇巻まで我慢すれば面白い」的な部分が皆無で、1話がすでにストーリー漫画の面白くなった瞬間のそれなのだ。

しかもちゃんと回を重ねるごとに面白くなっていく。納得の1位だった。

WRITTEN by 栗俣 力也
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