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20代のモテモテからのギャップという人生の現実を受け入れられない人々のリアル。『東京タラレバ娘』

※本記事は、「マンガ新聞」にて過去に掲載されたレビューを転載したものです。(編集部)

【レビュアー/堀江貴文

人気漫画家・東村アキコによるアラサー女性のリアルに迫るストーリーといえば買いたくなるだろう。

『海月姫』でおそらく自分の周りのリアルなオタク女子=腐女子像をリアルに描き、『かくかくしかじか』で自分の恩師の死をリアルに描いた彼女が次に題材に選んだのは自分がかつて歩んできたであろう、アラサー女子の悲哀である。

それも非モテのアラサーではない。20代前半の頃はそれこそウザいくらいに男子が群がってきたであろう、イケてる女子のアラサー悲哀物語である。

主人公は20代の頃にモテていた。

その当時に振ったいわゆる草食系男子から再びアプローチされ、当時よりも洗練されて年収も高くなり社会的立場もレベルアップした男子に意気揚々とデートにでかけ、当然付き合ってと言われると思いきや自分の後輩の若い女子との間を取り持ってくれと言われ愕然とするのである。

しかし、これが世の中のリアル。

20代女子のもっている価値の大きさをリアルに感じていない女子が多いのには呆れるばかりである。

しかもこれはモテ女子のほうがギャップが高い。

東村アキコは美人漫画家として有名であり、これは実体験がかなり含まれている。

これまでの東村アキコの漫画は『海月姫』しかり、『かくかくしかじか』しかり、実体験をベースにした漫画のほうが圧倒的に面白いのである。

若いころにウザいくらいにモテ女子だったのに、一気にアプローチしてくる男性のレベルが下がったことに納得いかないのだろう。しかし、それが女子にはかならず来る試練であることは仕方がない。

これは避けられない事態であるから対処法はいくつかある。

一つは自己評価をあまり高く持たないことである。しかしモテまくりの若いころにそれを認識するのは難しいだろう。

そういう意味ではこの漫画を読んでそういう先輩たちの二の舞いにならないように予防するしかない。

アラサー女子が読むには酷な漫画ではあるが、彼女らも自分の立ち位置を認識するための痛い教材だと思うしかないのかもしれない。