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【3月の観劇記録】観劇ができる喜び噛み締めた NZ Festival OF THE ARTS & AUCKLAND ARTS FESTIVAL

演劇界で公演自粛が続いています。演劇好きとしてこれ程に辛い事はなく、また演劇関係の仕事に身を置いているので明日自分がどうなるかわからない状況に正直戦々恐々としています。

そんな最中ですが、NZの首都ウェリントンで開催されたNZ Festival OF THE ARTS、NZ最大の都市オークランドで開催されたAuckland Arts Festivalで5作品を観劇してきました。


NZ Festival OF THE ARTSは1986年から2年に1度開催されているフェスティバルで2012年には日本からも『テ ヅカ TeZukA』が招聘されています。

今回のフェスティバルは3週に渡り週ごとゲストキュレーターを置いていて私の行ったWeek 3のキュレーターはフライト・オブ・ザ・コンコルドで知られ、映画『The Muppet』でアカデミー歌曲賞を受賞しているBret McKenzieでした。ボランティアとして参加されていらっしゃった方とお話しした時に、「Bret McKenzieの作品は絶対見なくちゃ!」とゴリ押しされました。

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そんな彼の作品、Ticket Masterで事前に購入していたのですんなり見れました。

『THE BRIEF AND FRIGHTENING REIGN OF PHIL』は演出:Lyndsey Turner(イギリス ナショナルシアター)、原作:George Saunders(アメリカ)、脚本:Tim Price(ウェールズ)、音楽:Bret McKenzie(NZ)による作品。2005年に出版された同題の小説を元にしたミュージカルです。

”ようこそOuter Hormer、フィル(誰に対しても憤慨して、けんか腰で、何にでも首を突っ込む、取り外し可能な脳みそを持った奴)のホームへ!隣接する国Inner Hormerが突然縮んでしまい、国境を越えて Outer HornerにInnner Hormerの住人が移住。そこでフィルは取締を開始!これは悲劇的で愉快な短くて恐ろしいフィルの統治のお話”(フェスティバルパンフレットより)

住むなら税金を払え!かといって要求はしても特に何もしてくれない、むしろ文句を言ってくるどうしようもないフィルがいろんな国のトップを彷彿とさせる(現在の状況だと日本もそんな風に思えてきますね)ブラックコメディーミュージカルです。フィル役の俳優さんは頭の上に脳みそが乗っていて憤慨するとポロッと外れたり視覚的にもとても面白くて2時間半ずっと爆笑でした。

たまたまアフタートークの日に当たったのですが、脚本家のTim Priceが音楽をBretに頼もうという話が出たときに「え?僕から電話するの?あのBretに!?」ってなったよーという話がチャーミングでした。

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『Hōkioi me te Vwōhali』は、NZのŌkāreka Dance Company(NZ)とExhale Dance Tribe(アメリカ)のダンスカンパニーによる作品。

"ワシを神聖な鳥とする国でHōkioi(ハーストイーグル/かつてNZに存在した大型のワシ)とVwōhali(アメリカンゴールデン)の類似点を探り、2つの神聖な鳥の威厳とマナ(魂)を具現化し、ファカパカ(基本的な原則)を共有する”(フェスティバルパンフレットより)

冒頭、真っ白い羽根の中から羽をまき散らしてダンサーが登場したので幻想的なコンテンポラリーなのかなと予想していたところ、重低音のビートが響く、大人数での鳥を彷彿とさせるムービングなど、パワフルなダンスで期待を裏切られました。最後はハカで終了し観客も演者の迫力に飲まれる作品でした。現代的でありながらマオリ族とチェロキー族のアイデンティティが感じられました。

何よりこのパワーに呼応する照明と音響環境の素晴らしさ!会場はニュージーランド国立博物館Te Pa Pa内にあるSounding Theatreだったのですが東京都内でもこんなに音響のいい劇場ないんではないかという位良かったです(都内ではないですが神奈川芸術劇場とおなじくらいの音響の素晴らしさ)。

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『Strasbourg 1518』は飢餓や家父長制に対するデモをテーマにしたダンス作品だったのですが、ダンサーとは別にストーリーテラーのような人物がおり、その役が語る内容が少し難しく理解するのに頭をフル稼働させていました。

少し私には難しかったな、というのが正直な感想です。ダンスのクオリティは本当にすばらしかったし、演出でロビーから役者が社交ダンスを踊っていたのは世界観に引き込まれました。


Auckland Arts Festival は2003年からスタートして現在は通年で行われています。このフェスティバルは3月11日から29日までの開催だったのですが、3月15日の外国からの渡航者2週間自主待機発令から海外作品の中止、ロックダウン以降全作品が中止となってしまいました、、

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『UPU』はサモアなどパシフィックアイランドにルーツを持つ演出家、役者陣がポエムをパフォーマンスしていきます。朗読ではなく、歌やダンスもありシリアスなだけでなくユーモラスなものもあり見ていて面白かったです。もう少し理解できるようになりたい、、と悔しくも思った作品です。

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『BLACK TIES』はNZ Festival でも上演されていたのですが、ウェリントンでの上演と予定が合わずオークランドで観劇しました。

マオリ系の新婦とアボリジニの新郎の家族の結婚を巡るドタバタ騒動を描いたコメディーなのですが、会場が実際の披露宴会場のようになっており2幕では観客は結婚式のゲストという設定で話が進んでいきます。

舞台作品としての面白さはもちろんですが、私は演劇を通して文化や歴史を知るのが好きなのですが、この作品でもそういった文化的に学べることもたくさんあり本当に見れてよかったです。

アボリジニのお爺さん役のジャック・チャールズは2018年にSPACのふじの国世界演劇祭で本作品の共同演出家であるレイチェル・マザとの作品『ジャック・チャールズVS王冠』で来日公演しており、この作品も静岡に見に行っていた私としては2度目のアンクルジャックの魅力に引き込まれました。従姉妹のシャノンという役を男性の俳優さんが演じていたもですがチャーミングなビッグガールで場面をパワフルにかき乱していて最高でした。


この旅行中日本は演劇、イベントの中止延期を政府から喚起されていたためNZで普通に観劇ができている状況。観客が笑って上演を楽しんでいる当たり前の日常が何で今こんなに難しいのだろうと思っていました。

しかし1か月も経たないうちに状況はどんどん変化して現在NZはロックダウン中、6月30日まで入国ができなくなりました。の日本も正直非常事態宣言を出して欲しい状態ですが、舞台が見れない上演できないというこの現状がすごく辛いです。

改めてこの状況が落ち着き再び観劇を楽しめるよう、そして舞台を上演する側が再開できるよう、声を上げるところでは声を上げ、自らの衛生環境をしっかり整え時を待とうと思います。

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