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人はその得手を用うれば万人善人となる

江戸前期の軍学者 北条氏長

●北条氏長は、わが国で初めて兵法を哲学にまで高め、『北条流兵法』の祖となった人物。冒頭の言葉には前後があり、大意は次のとおりである。

●「人の採用にあたっては、賢人を取り、愚者を落としてはいけない。人は、それぞれ得意と不得意をもっている。その得意を用いれば万人が善人となる。逆に、その不得意を用いれば万人が悪人となる。得意を用いて役人にし、万人を善人にして、すべての人を捨ててはいけない」

●この言葉に近い逸話を紹介しよう。本田宗一郎が、まだ町工場のおやじとしてオートバイ作りに励んでいたころのことだ。従業員の募集に応募してくるのは、欠点の目立つ人間ばかりだった。

●しかし、本田は失望しなかった。一人一人を数時間もかけてじっくり面接し、いいところを見つけ出そうとつとめた。そして、人より抜きん出たところがあれば、その長所を評価して雇った。そうして、長所を生かした仕事につかせ、事業を伸ばしてきた。

●本田はこういっている。
「へんてこなはずれ者ばかり集まったことがよかったのでしょうな。彼らがわが社を発展させたんです」

●本田には人の短所を認める暖かさがある。その暖かさが、人に短所を克服させ、さらに長所を伸ばす努力をさせるのだ。

●服部セイコーの創立者である服部金太郎も、部下の性格、個性の特徴に目を向けて、適所に配し、いい仕事をさせた。

●1881(明治十四)年、銀座に近い場所に、店員二十人ほどの時計店を開くと、服部は店員の一人一人をよく観察し、その特徴をみきわめたうえで、修理技術の指導法を変え、適した持ち場に配した。

●ある店員には、時間をかけてじっくりと教え、一つの持ち場だけを守らせ、ある店員には、タイプの異なる時計の修理を順次、教えていった。

●組織は人の集まりである。人の能力を最大限に生かし、やる気を結集してこそ組織は戦力を持ち、発展できる。そのためには、短所ではなく、長所に目を向けた人使いが必要なのである。

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