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パピルス紙、もしくは雑多庭園

僕はペリカンを生涯のうちに3度見たら死ぬ。
これは比喩とかそういうことじゃなくて、物理的に本当に死ぬ。実際に死んだことが無いから詳しいことは言えないのだけど、聞いた話だと四肢がもげて内臓が爆散、その後散らばった肉片にはペリカンがたかり生首はヒグマが持ち去って山で崇めるのだそうだ。

なぜ僕がこんな体質なのかはわからない。しかして僕は、こんな体質なのだ。

どうやら2度までならなんの問題もないらしいのだけど、当然、僕だって疑問に思ったりはする。果たしてペリカンごときが複数回視界に入った程度のことで、僕は本当に死に至るのだろうか、と。

なので僕は親友のザック君で実験することにした。
ザック君も僕と同じような体質の持ち主で、彼の場合は生涯のうちにマントヒヒを4度見ると死ぬ。
もっと言うならザック君はマントヒヒを4度見ると体毛が全て抜け落ち服がビリビリに破れて全裸になった後、マントヒヒと合体する。マントヒヒと一体化したザック君は、近場の河川敷で大量の石を飲み込み海に飛び込んで自害するのだ。

確かザック君は既にもう3回マントヒヒを見ており、あの独特なディティールがたまらないなどと博識ぶった講釈を垂れていたがそんな浅瀬の知識自慢大会は今日で終焉と思われた。

僕はさっそくザック君を呼び出すと、徹夜で制作したマントヒヒのスライドショーを流し始めた。このスライドショーはエフェクト面にもこだわっており、場面が切り替わる際はマントヒヒのケツの穴の形のトランジションを適応してある。五百枚の写真に加えその隙間隙間に毎回マントヒヒのケツが浮かび上がるため、ザックのマントヒヒ野郎は合計九百体以上のマントヒヒをその眼に焼き付けることになるのだ。

「グワーーーーーーーーッ!」

ザックが叫んだ。ザックの体毛が抜け落ちていく。最高だ。
最高すぎてちょっと笑ってしまった。

ザックの上着が破れた。ザックの肌着があらわになる。気持ち悪い奴は総じてみんな気持ち悪いシャツを着ているなあと思って見ていると、そのシャツはペリカン柄だった。

「グワーーーーーーーーッ!」

僕も叫んだ。全裸のザック君がマントヒヒと合体しているとき、僕の四肢はもげて内臓が爆散していた。マントザック君(マントヒヒと一体化したザック君の呼称)が河川敷でおいしそうに小石を食べているとき、僕の肉片はペリカンが食い散らかしていた。
マントザック君が海に飛び込んで自害しようと構えていたちょうどそのとき、僕の生首を山に持って帰るため下山してきたヒグマがマントザック君を見つめた。

マントザック君もヒグマを見つめた。そこには確かな愛情のようなものがあった。

マントザック君とヒグマは山でセックスをしたあと僕の生首を使ってサッカーをした。サッカーで汗だくになったので、またセックスをした。

こんな時間がずっと続いてほしいと、2人は心から思った。

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