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海千の明太フランスはなぜあんなにおいしいのか

海千の明太フランスとは、福岡県宗像市にある「海千」という明太子屋さんが作った明太フランスのこと。世界でいちばんおいしい明太フランスである。
九州の玄関どころ、博多駅の中デイトスという駅ビル内の商業施設にて毎日本数限定で売られている。

まずソフトフランスであるところがいい。やさしい。口の中をケガしない。
そして芳醇なバターの香りが食欲をそそる。バターと明太子が混ざることでとてもマイルドな味わいになっており、辛くない。
それらががっつりたっぷり中まで塗られているからとても満足感が高い。
愛してやまない明太フランス、それが海千の明太フランス。

ピリッとした明太子の味や、フランスパンらしい硬い食感を求めている人はごめんなさい。それは別の明太フランスを探してくれ。

一昨年に大阪へ引っ越してからもこの海千の明太フランスが食べた過ぎて、昨年末宗像市へのふるさと納税の返礼品にこの商品が含まれているのに気づきはじめてのふるさと納税をした。
最近届いたので毎日食べている。おいしい。飽きない。しあわせの味がするなあと噛み締めながら食べている。

わたしは2010年の10月から2017年の4月まで福岡に住んでいた。実家から福岡までは約700キロ離れている。単身で引っ越して、携帯電話を売ったり売らなかったりしながら生計を立てていた。
なぜ住んだのかというと、福岡ソフトバンクホークスが好きだから。

友達も知り合いも誰もいなかったが、福岡での暮らしは楽しかった。職場の人とも仲良くしていた。テレビをつけたり外に出るだけで、ホークスがごく自然に福岡の街へ馴染んでいたところが好きだった。
雑誌や書籍の発売日は遅れるが、それを補って余りあるほど福岡はとても魅力的な街だった。いつかまた絶対戻るぞと決意するほどには、今も福岡が好きだ。

わたしは高校時代の友達複数人と今でもかなり仲良くしていて、そのうちのひとりが2015年に福岡に越してきた。嫁入りして。
わたしはそれがめちゃくちゃ嬉しかった。気がおけない仲である友人が近くにいて、かんたんに会うことができる。本当にありがたいことだと思う。
それまでの5年間で、そんな関係性の友人が近くにいないことの不便さ、さみしさが身に沁みていたから、本当に本当に嬉しかったし自分はとても幸せ者だと感じた。
福岡から離れると決めるとき、その子とまた会いづらくなることが本当に寂しかったし悲しかった。自分が福岡に行くと決めたときより切なかった。

海千の明太フランスと出会ったのは2016年だった。
その日、前述の子と地元から遊びに来ていたもうひとりの友達、さらにその子の友達(わたしは初対面だった)で遊んでいた。3日くらい遊び倒した。大宰府に行ったりイベントに行ったり福岡市美術館で刀剣を見たり福岡城跡に行ったり。とにかく素晴らしく楽しい3日間だったし、福岡に来てからそうやって友達と何日も遊んだのも初めてだった。

3日目、帰路につく2人を見送るために博多駅にいた。
おみやげを買うためにお酒の試飲をしていた友達を待っているあいだ、そのへんをぶらぶらしていたら海千のお店があった。そこで試食としてもらったのが明太フランス。これが出会いだった。
あまりにも美味しくて感動して、一旦その場を離れたけど後から戻って3本買った。

正直それまであんまり明太子が好きではなかった。辛いものが苦手だから。わざわざ食べなくてもいいかなと思っていたし、フランスパンも硬いからそんなに好きなパンではなかった。
でも海千の明太フランスはめちゃくちゃ美味しい。神の食べ物だと確信している。

だけど最近、わたしがこの明太フランスを食べて幸せになれるのは、この初めて買ったときの記憶も一緒に食べているのではないかなという気がしている。

大好きな友人たちと遊んで、遊び倒して、楽しくて幸せで、その最後に出会った明太フランス。
食べるたび、そのときの楽しかった、幸せだったという感情も明確に思い出せる。あのなんともいえない幸福感の正体は、それなんじゃないかな。

明日の朝も明太フランスを食べる。しあわせの味を噛み締めて、大好きな友人たちを思い出しながら。

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