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女性作家の問題作が映画化〜「果てなき野」(2010)

本作は若い女が村の女性たちに暴行されているシーンからはじまる。女は売春婦で、村の女たちから制裁を受けているところを、目撃した少年が助け、家に連れて帰る。家といっても村からはぐれて船上生活をしている男やもめとその息子と娘が暮らしているだけ。売春婦の若い女性と三人とのベトナム南部の村での生活が描かれていく…。

原作は若手女性作家グエン・ゴック・トゥの同名短編小説で、2006年ベトナム作家協会賞を受賞した作品だ。彼女が人民評議会議員として選出されているカマウ省の党委員会教宣部は、彼女の作品が現代ベトナム農村の暗部を描くのみで、思想教育性に欠けるとして批判を行い、物議を呼んだ。しかし一般読者からは絶大な支持を受け同作は映画化された。 

リアリズムに徹した映像はときに目を覆いたくなるような残虐さをみせながらも、ラストの美しい映像で観ているものを救ってくれる。ラストで讃えられているのは命を育む女性と大地だ。

売春婦役は「静かなアメリカ人」(米2002)、「パオの物語」(越2006)で好演したドー・ティ・ハイ・イエン、父親役に人気アクション俳優のジョニー・チー・グエンの兄で、米国籍ベトナム人俳優のダスティン・グエン、娘役には前回紹介した「タム・カム」で継母の娘役を憎々しく演じたカム役のニン・ズオン・ラン・ゴック。特に娘ヌオンを演じたラン・ゴックはデビュー作である本作で注目され、2010年ゴールデン・カイト女優賞を受賞している。

日本ベトナム友好協会東京都連ニュース 2017年6月号掲載

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