見出し画像

片思いに終わった恋が蘇る、映画 "Mắt Biếc"(つぶらな瞳)

2019年クリスマス映画として封切られた映画"Mắt Biếc"(邦題「つぶらな瞳」)。原作はベトナムのティーンエージャーに圧倒的な支持を受けている児童文学作家・グエン・ニャット・アイン。同題名の小説を、同作家の原作「草原に黄色い花を見つけた」を映画化して大ヒットを飛ばしたヴィクター・ヴー監督による映画だ。

この映画が上映2週間で1500億ドン(約7.5億円)の興行収入をあげ、全ベトナムで200万人を超える人たちが映画を鑑賞したと報道された。ラブコメやアクションならいざ知らず、文芸映画を二度までもヒットさせたヴィクター・ヴー監督の手腕たるや恐るべしである。

映画の舞台はベトナム中部のドードー村。時代は一九七〇年代、小学生のガンは夢見がちなつぶらな瞳をもつ少女ハーランに恋をする。高校は都会のフエに進学したハーランを追って、ガンも都会の高校に進学するが、ハーランは都会の風にあたり、着るものも考え方もかわってしまう。そんな彼女を見守るガンだが、彼女はユンという男に恋をし、身体を許し、その子まで身ごもってしまう。そんなハーランに、ガンの心は揺れる。

幼馴染に片思いをし、そのまま長じても愛し続ける男の話だとくくってしまえばそれまでだが、ベトナム中部の美しい風景の中で展開される物語は映画を観るものに、かつて誰もが経験した片思いに終わった恋が蘇り、その一途な思いを抱き続けるガンの思いに共感しないわけにはいかなくなる。

原作とは異なる結末が用意されていて、その結末をめぐってもネット上で熱く論議されているのも面白い。

ガン役に一九九三年ハノイ生まれ、モデル活動をしながら、ホーチミン市映画演劇大学に学ぶチャン・ギア、ハーラン役にはグリーンウィッチ国際学校ベトナム校でイベントマメネジメントを学ぶ若干二十一歳のチュック・アイン。チュック・アインの演じるハーランのアオザイ制服姿に胸がときめく。

日本ベトナム友好協会機関紙「日本とベトナム」2020年1月号掲載

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?