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ベトナムの映画法改正でベトナムの映画産業の未来は?

「今から二十年前、韓国のドラマ『ガラスの靴』『宮廷女官チャングムの誓い』は韓国という国の紹介をした。ハノイでは毎週日曜の午後には人がまばらとなり人々は家で韓国ドラマを見ていた。このようにドラマの吸引力は強いものがある。だから映画産業の役割は国の発展にとって大変大きいのだ」とフック国家主席は映画やドラマの重要性について語っている。

現在、映画法(改正案)がベトナム国会で論議されている。ベトナムにはすでに映画法(2009年改正版)が施行しているが、10数年を経てインターネットでの映画配信や外国企業による映画制作が進められている時代にあって、ベトナムにおける映画産業の育成と同時に望ましくない国内外の映画の規制が必要であるとの認識から法律を時代に即したものにしようと改正が提起された。

外国企業によるベトナム国内での映画制作を認める、国も映画制作を支援するなどの規定を設けるなどベトナム映画産業の発展にとってプラスになるであろう規定もある。

しかし、改正法案が発表されると同時に立法研究所および国会の文化教育委員会が開催した同法改正案に関するオンラインセミナーでは、参加した映画監督らから厳しい批判が寄せられた。同法改正案第11条「映画活動において厳禁される内容および行為」として「憲法違反、反国家的宣伝、テロ支援、宗教扇動、歴史歪曲、暴力礼賛、わいせつ、堕落的、迷信異端的な内容など」とされていることだ。何を持って暴力、わいせつ、迷信を喧伝したとされるのか明確でないため、恣意的な制限がなされると危惧する、ある監督の声も紹介された。

昭和14年に日本で制定された「映画法」は日本初の文化立法とされ、一部で歓迎されたというが、実際には映画制作を統制するもので、戦後廃止された。映画産業の発展支援のためと称して、国家がその内容を制限もしくは統制しようとする試みは映画芸術の発展の妨げになると歴史は教えている。

日本ベトナム友好協会機関紙「日本とベトナム」2021年11月号掲載

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