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ハノイ市のロイヤルシティ・モールに美術館が登場

 東南アジア最大の地下ショッピングセンター、ハノイ市のビンコム・ロイヤルシティ・モールに2017年6月、美術館ができた。その名もビンコム現代美術センター、略称VCCAだ。
 このショッピング・モールは世界的ブランドやベトナムのナショナルブランドのテナントが並ぶほか、スーパー、シネコン、ゲームセンターなどのアミューズセンター、スケートリンクもある巨大モールだ。屋内プールもあったのだが、不採算だったのか閉鎖され、その跡地にできたのがこの美術館だ。
 日本でも商業施設に隣接して美術館が作られた例はかつての西武美術館がある。このVCCAもいわばベトナム版西武美術館だといってよい。ただ、展示されるのはベトナムと海外アーティストの現代美術であり、入場は無料となっている。
 この美術館は、前々回紹介したサングループと同様にロシア留学をしていたベトナム人がウクライナで起業して財を築き、それを元手にベトナムで不動産・リゾートを開発、この十年で急速に発展したビングループが運営している。本美術館の芸術監督は現代芸術キュレーターである遠藤水城氏が担当している。
 私が訪れた際にはベトナム現代画家二人の油絵・漆画が展示されていた。4000平米もの広々としたスペースにゆったりと絵が飾られている。
作家のひとりはレー・ティット・クォン。「かげとかたち(Bóng và Hình)」と題してこの二年間に描かれた最新作品二十二点が展示されていた。彼の表現は形も色も極めて少ない、いわば無言ゆえの雄弁さで見ているものに迫ってくる。
 もうひとりはファム・ルック。今年七十五歳になる画家の七百点もの作品のうち、レー・ティエット・クォンがよりすぐった作品六十点が展示されていた。こちらはアオザイの女性や市場の女たちが描かれている。 
 若い人たちが熱心に絵を鑑賞する姿もあった。ベトナムの現代芸術がこのように多くの人たちの目に触れることのできる場所が新たに生まれたことは好ましい。

日本ベトナム友好協会機関紙「日本とベトナム」2018年6月号掲載

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