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紛失した携帯電話が戻ってきた話

 ノキア製の安物の携帯電話を紛失した。5月下旬にベトナム人日本語ガイドの集まりに呼ばれて、軍が経営するビアホイで昼からビールを飲んだときだ。ポケットから滑り落ちてどこかへ落としたに違いない。

 試しに電話をかけてみると呼び出しはする。近くに人がいないためか、だれも出ない。1週間かけ続けてみたが、電話に出てもらえない。そうこうするうちに電池がなくなったのか、呼び出し音すらしなくなってしまった。

 もうこれは携帯電話の紛失は間違いない。新しいSIMカードを購入し、携帯は手持ちの古いものを使用していた。

 6月も半ばになって、私の義母から妻に電話があった。妻がきいたところによると、ハノイ市内で電話を拾い、連絡先の一番上にあった義母の番号に電話をしたという男性がいるのだという。電話番号をきいてあるので、電話をしてみて欲しいという。

 果たしてその男性に電話をしてみると、まさに私が紛失した電話を持っているようだ。謝礼するので、バイク便で届けて欲しいと妻が男性にお願いしたところ、その携帯は無事私の手元に届いたのである。

 私はこれまでハノイで高価なiPhoneを含め携帯電話を幾度となく紛失している。しかしそのたびに発見者が現れて無事手元に戻ってきている。ベトナムでは携帯をすられたり、ひったくられたりは日常茶飯事である。にもかかわらず、私が紛失した携帯は運良く手元に戻ってきている。ベトナムでも捨てる神あれば拾う神あり、なのだろう。

日本ベトナム友好協会東京都連ニュース「ハノイからの手紙」2020年7月号掲載

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