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子どもの安楽死は認められるか~安楽死制度を議論するための手引き07

論点:18歳未満の未成年に安楽死制度を適用すべきか

 2023年4月14日、オランダ政府は、1~11歳の子どもの安楽死を認めることを閣議決定しました。

2014年に世界で初めて子どもの安楽死を認める法律が成立したベルギーでは、子ども本人の同意が必要となる。しかし、オランダの手続きでは、子ども本人が同意できない場合、医師と相談した上で、保護者の許可を得て安楽死を行うことも可能になるという。

 オランダのこの決定は、安楽死反対派から驚きと憤りをもって迎えられるかもしれません。特に「子ども本人が同意できない場合、保護者の許可を得て安楽死を行うことが可能」という部分です。
 今後のこの連載の中で「認知症を患った患者さんの事前意思に安楽死の実行が記載されていた場合」を取り上げようと思っていたのですが、今回のこのオランダの決定は、その問題にもつながっていく内容です。つまり「本人の現在の意思が明確に示せない場合において、他者がその意思を慮って生命を終わらせる判断をして良いのか」が問われるということです。これは認知症で現在の意思が確認できない、だけど若いころの事前意思は明確だった、という事例よりも「過去の意思すら確認できない」意味でもっと難しい議論になります。

 ちなみに、ベルギーおよびオランダ双方とも、安楽死制度の適用が認められるのは「緩和ケアを受けても苦痛が緩和されず、余命が限られた患者」に限定されていることがポイントです。

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