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企業は採用面接で何を見るか

 採用には面接試験がつきものです。
 英語ではinterviewと言います。日本語で使うインタービューと少し印象が違うと思いますが、inter- 相互に、view 見る ということです。私だけかもしれませんが、ニュアンスとしてはお互いに相手を見ているというだけでなく、それぞれの人生の中で相手と巡り合う機会を得た、というような一期一会を感じます。
 日本語の面接という言葉は古くからある単語ではないようなので、つらを接するという日本語とinterviewの言葉の意味が何となく似ているのは英語を参考にしたからかもしれません。

 人の能力を測るのには筆記試験や実技試験のような試験も用いられますが、面接試験がこれらと違うのは、面接では会話によるコミュニケーション能力を測るということです。
 例えば、あなたの志望動機はなんですか? という質問が良くあると思いますが、字面の志望動機であれば紙に書いたものを提出すれば事足ります。メールやLINEだって志望動機の内容を伝えることは出来ます。
 ですから、面接で志望動機を聞く理由は志望動機を知りたいからではありません。
 知りたいのはその人が志望動機をどう語るかです。

 面接では緊張しちゃって上手くいかない、口下手だから上手に喋れないなど、面接という非日常を意識しすぎていつも通りが発揮出来ないことは良くあります。しかし、その面接に対して真摯に向き合っているからこそ緊張するのであって、上手く喋れないことを気にするのだと思います。どうでも良い相手だったら緊張もしないでしょうし、黙ってたっていいわけです。
 とはいえ、緊張はしつつもその状況下で最大限自分を伝える必要があるのも事実です。ですから、過度に緊張しないための技術を習得しておくことは重要です。

 もうひとつ重要なのは、「語る」練習をしておくことです。
 何を語るか、どう語るか、そして何のために語るか。それを考えながら予め練習をして下さい。
 ここで言う練習とは、予め考えたセリフを覚えることではありません。
 自分の考えを相手に分かりやすい言葉に置き換えること、その言葉を分かりやすく伝える喋り方を覚えることです。
 誰しも自分の中では分かっていても上手く人に伝えられる言葉を見つけられないことがあります。でもそれは練習すれば出来るようになるものです。語彙力を増やしておくことや、論理的に考える癖を付けておくこと、普段から考える習慣を持つことです。

 練習方法としてよく言われるのは、新聞記事をどれかひとつ読んで、その内容に対して語るという練習をすることです。
 記事の内容を要約して言葉で語ること、それに対して自分の考えを言葉にして語ること。語る際にはどういう表現で、どういう順序で、そしてどういう表情やジェスチャーで語れば人に伝わりやすいのかを注意することを心がけて下さい。相手がその記事の前提情報や基本的な用語を知らない前提で、どう説明したら伝わるのかを良く考えて下さい。
 ここでのポイントは、記事を読んでから語り出すまでのスピードです。
 1時間かけて原稿を練ってからそれを覚えて喋る練習をするのではなく、記事を読みながら考えて、読み終わったらすぐに喋りだすくらいのスピード感が重要です。

 このような個人練習でもうひとつ重要なのは、イメージトレーニングです。語る際に、あたかもそこに聴いている相手がいるというイメージを持って練習して下さい。
 話がズレますが、映画で二人が会話をするシーンを撮る際、実際の撮影現場では必ずしも役者同士が向き合って自然に会話をしている訳ではありません。カットによっては役者は相手ではなくカメラに向かって演技します。カメラ相手に、そこに相手の役者がいるかのように演じるわけです。
 面接の練習でもカメラの向こうの面接官を想像し、その人に語りかけるようにして下さい。あなたが喋ったことに対して聴いている人がどのような表情をしているか見えますか? それが見えるような練習をして下さい。
 あなたが喋る相手は社会人歴が長い人たちですから、そういう人たちが目の前にいることをイメージしましょう。事前に社会人と会話をする練習をしておくのも良いでしょう。

 さて、これまでは面接を受けるあなたが企業側に何かを伝えるという側面で述べましたが、面接はあなたが企業を見る場でもあるのです。
 あなたが語っていることを面接官がどう聴いているかを、あなたが確認する場でもあるということです。あなたからの質問をするということだけでなく、この人達のもとで働くことが出来るかを知る機会です。
 バイト慣れしている人ほど就職をバイト採用と同列に見てしまうという落とし穴に嵌りがちと思いますが、その企業の一員になるというのは与えられた仕事をするのではなく、その他の社員と一緒に仕事を創造するということです。会社の同僚はバイト仲間とは違います。
 だから、あなたがする質問は、休みはどれくらい取れますか? や 定時に帰れますか? なんていうことであってはいけません。それを聞かれた面接官は心の中で、それはあなた次第です、と思うに違いないからです。そんな質問をするということはこの人は自ら仕事をする意識を持った人ではないというレッテルを貼られてしまいます。
 質問をするなら、あなたがそれを知ることで企業でより活躍出来るようになるというようなことにしましょう。どうしてその質問をするのか趣旨を説明しながら、既にその企業の一員になった前提での質問が出来ると良いでしょう。

 最後に纏めますと、採用面接はその面接の場でのコミュニケーションによって、あなたのコミュニケーション能力を見るのが目的です。それは親子や友達同士でのコミュニケーションではなく、大人同士、他人同士のコミュニケーションです。だからこそ敬語や言葉遣いが重要と言われるわけです。
 質問されてそれに答えるというのが面接だと思っていた人は、今からでも遅くないので、面接の場でコミュニケーションを楽しめるようトレーニングをしておきましょう。

おわり

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