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面接で緊張しないために

 就職活動につきものの面接。
 初めて会う人に対して対面で自分をPRするというような場面は人生の中でも数えるほどしか無いのが普通だろう。
 そればかりか、学生にとっては他人に対して言葉によって何かを分かりやすく説明をするということ自体が人生の中で無かったことだろう。

 人は慣れないことをする時、漏れなく緊張する。程度の差や現れ方の差があるにせよ、緊張しない人はいない。
 緊張はもともと危険に対する身体的な反応だから、動物である限り避けられないだろう。
 危険とは言っても人間の場合は草食動物が感じるそれとは違い、なにか普段と違った環境に置かれることも脳は危険と判断してしまう。危険地帯からいち早く逃げる必要があるため、身体は逃げるための反応をしてしまう。

 つまり緊張状態では、より動物的身体的反応が優先するため、緊張状態の中で冷静に言葉のやり取りが出来る方がおかしい。
 そこで多くの人は面接に臨むに当たって予め想定問答を考え、それを記憶することで対処しようとする。しかし、記憶を呼び出すという脳内行動は危険回避に必要なものではないため、緊張状態のもとで思い出そうとするとしばしば失敗する。記憶しておいたことを思い出せないことでさらなる緊張状態に陥り制御不能になってしまうこともある。

 緊張状態で動物が出来ることは、危険な状況からいち早く脱出するための行動をすることだ。何かを思い出すことではない。
 危険な状況から脱出するためには、現状を正しく把握して行動する方向性を見極めて実行するという一連の動作を速く的確に行う必要がある。
 そう考えると面接の対策が見えてくる。
 つまり、面接という緊張状態を活用するには、相手が言っていること(現状)を正しく把握し、自分の考え(行動する方向性)を見極めて、発言(実行)するようにすれば、緊張状態の身体反応に沿った脳の使い方で対処出来るので、比較的上手くいく。

 質問に対してその場で考えて返すなんて、面接のような緊張状態では無理だと思っていただろうが、むしろその方が脳の働きからすれば自然ということだ。
 記憶に頼ろうとすると、思い出せないことはもちろん、相手の質問とは多少ずれていても、用意した答えのリストから発言内容を選んで対応するという最悪の自体にもなり得る。質問に対してズレた答えをするのは、理解力、思考力、論理性、コミュニケーション能力といった様々な点でNGだからだ。

 じゃあ、面接の準備なんか必要無いかと言えば決してそんなことはない。
 むしろ、時間を掛けて準備しておく必要がある。

 準備が必要なのは主に次の3つの点だ。

  1. 喋りながら言葉で考える習慣をつける

  2. 語彙を増やす

  3. 論理的に話す習慣をつける

 これらのことは一朝一夕には行かない。
 私達が普段している会話を文字に書き起こして見れば分かるが、実は大したことは言っていない。話の脈絡も無く、語彙も少なく、何かの考えをもって説得しようという内容とは程遠いことが大半だ。日常会話というのはそんなもんだ。日常会話では、言葉の論理性よりも感情の共有が優先されるから、言語以外のコミュニケーションが行われている(だから英会話だって本来言葉としては難しくないのに、言語以外の表現方法が習得されていないために難しくなっている面があると思っている)。

 つまり、面接の際に緊張で失敗しないためには、緊張状態の心身反応を利用した対応が出来るように事前準備を行っておくことが重要だ。
 面接で緊張しないことを目指すのではなく、緊張しているからこそ活かせる能力を鍛えておくということ。
 ただし頭が真っ白になってしまうような過度な緊張は悪影響しかないので、心を落ち着かせる呼吸法を学んでおくに越したことはない。

 面接官の言う事をしっかり聴き、意図を的確に捉え、自分の頭で考えたことを伝わる言葉にして発せられれば、少なくともあなたのアピールに失敗することはない。
 採用可否の決め手は、あなたが相手の臨む人材であるかどうかであって、あなた自身の良し悪しでは無い。だから、その企業の面接をパスすることだけを目的にするのではなく、納得の行くアピールが出来るかどうかに力点を置いてはどうだろうか。

おわり

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