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#19-S 「数字を繰り返す」だけでわかること

St Clair-Thompson HL, Allen RJ. Are forward and backward recall the same? A dual-task study of digit recall. Mem Cognit. 2013;41(4):519-532. doi:10.3758/s13421-012-0277-2

だいぶキャッチーなタイトルにしてしまいましたが、有名な神経心理学的課題の紹介。Digit span task (数唱課題)って課題があります。簡単なものですが、認知症の検査とかによく含まれる重要なもの。それが「数字を繰り返す」課題です。

どんなものかというと、検査者が「1-4-5-3-3-8-5」みたいに、適当な数字列を読み上げます。「順唱」では、読み上げ後に検査者より合図があったらそのままそれを繰り返す。聞いた通りに「1-4-5-3-3-8-5」といえたら正解です。健常者なら簡単と思えるものですが、加齢が進んできたり、注意系の障害があると、できなくなります。

「逆唱」では、逆から読み上げます。「5-8-3-3-5-4-1」といえれば正解。これは健常者でも常に正解するのはちと難しい。逆から読むことで「ワーキングメモリ」という認知資源を使用していると考えられます。ワーキングメモリは少しむずかしい概念なので、説明は他に譲ります。
(ネット上にはぜんぜん違う説明がされてたり不正確だったりする記事が溢れてますので、信頼できるページをご紹介します。以下のページの「ワーキングメモリ」の項目が正確で、比較的わかりやすいです!)
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E5%81%A5%E5%BF%98%E7%97%87%E5%80%99%E7%BE%A4#.E3.83.AF.E3.83.BC.E3.82.AD.E3.83.B3.E3.82.B0.E3.83.A1.E3.83.A2.E3.83.AA.E3.83.BC

冒頭の論文はこの課題成績についての研究で、順唱も逆唱も、基本的にはこのワーキングメモリという単一の基盤に基づいているって思われてるんですが(順唱は少しだけだが使っている)、St Clair-Thompson HL & Allen (2013) によると、どうやら違うことがわかったと。前唱は「音」に関連するワーキングメモリのみだけど、逆唱には「視覚的」なワーキングメモリ処理が加わることがわかったようです。つまり、頭の中で数字を「視覚的に並べる」という方略を使ってるんですね。

考えてみると納得できます、このような課題で「1-4-5-3」て聞いたら、頭の中で左から文字を並べますよね?そのことを言ってます。音と視覚的なワーキングメモリが存在するっていうのは、上記のリンク先に書いています。

数唱課題をたくさんの人にやると、ワーキングメモリだけに拠っているという解釈では説明がつかない結果が得られることがあるんだけど(つまり逆唱の方が得点がよい)、視覚系の処理が得意な人はそうなってしまうのかな。難易度の差もあるので、attention自体の向いてる量も違いそうですが。

なんかまとまらん内容になってしまいました、駄文御免。

まとめ
数章課題という課題があるよ。
・数唱課題の順唱と逆唱は、細かくは異なるメカニズムに基づいているかもよ。


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