見出し画像

訪問介護の基本報酬の引き下げに驚きの声 審議会で「極めて遺憾」「理解に苦しむ」・・・という記事の紹介です。

さてさて、朝から雪かきの依頼に対応している間に報酬改定の新しい単位が発表されてたようですね。

訪問介護については、基本報酬でマイナスという結果ですが、事前の検討資料で出てきた経営資料では訪問介護の利益率は7.8%で前年対比で+2.0%という雲行きの怪しい資料が出てきていたので、もしかしたら減らされるか?・・・なんて思ってましたが、さすがに倒産や休止件数が過去最高を記録し、ヘルパーの高齢化による平均年齢の増加(54.4歳)や有効求人倍率の高さから、さすがに減らしては来ないだろう・・・なんて期待していたのですが、やっぱり減らしてきました。

例えば月に500件の訪問実績があったとして、マイナス2単位だと1000単位が今までと同じ仕事をしていても減るわけですので、お金に換算すると月に10000円減収になるという事です。年間で12万円の減収ですから、僕らのような経営体力がない事業所にとってはかなりの痛手になります。
これを取り戻すには、1時間程度の身体介護なら+3件程度、1時間程度の生活援助なら+5件程度は増やさないと現状の収益を維持できない、という事になります。
単純に考えると、新規1人分くらいかなぁ。

一方で処遇改善加算での収入の割合が大きくなるみたいなので、このあたりをうまく活用して人材を確保して人員増と併せて件数増につなげる、という道筋かなぁとは思いますが、採用してすぐに独り立ちというわけにもいかないのは当然ですから、どうしても採用した時に職員に会社として投資をしないといけないのですが、こう基本報酬を減らされてしまうと、その投資に回せる余力がなくなるので本当に小さい事業所は経営の工夫を今まで以上にしないといけない状況ですね。

国としては全体的に大規模化を進めていきたいので、そういう意味ではこの改正で倒産する小さい事業所は潰れていい、と思っているような気もしますし、そういうメッセージなんだろうと思いました。

ただ、大きな会社があまり人口規模が小さく労働力の確保も難しく過疎高齢化が進み非効率な経営を強いられるような地方の地域へのサービス展開を強めるとは考えにくいので・・・実際に北海道の地方では大手外資系の訪問介護事業所が人員不足て縮小して週に1回しかその地域のサービスを提供できないとか、そういう実態は実際にこれまでも見てきました・・・ので、サービスが潤う地域と枯渇する地域の明暗がはっきりして加速していくような、そんな危うさがあるような改正の内容のようにも感じました。

そんなわけで、こちらの記事を紹介しながら訪問介護の改正内容についてみていきたいと思います。

厚生労働省は22日、来年度の介護報酬改定に向けた協議を重ねている審議会(社会保障審議会・介護給付費分科会)を開き、各サービスの新たな基本報酬を明らかにした。【Joint編集部】

審議会はこれを了承したが、複数の委員が訪問介護の基本報酬を引き下げることに異論を唱えた。

「驚くばかりだ。訪問介護は人材不足が最も深刻で、事業者の倒産や休廃業なども増えている。サービスが十分に使えないという悲鳴も聞こえてくる」

認知症の人と家族の会の鎌田松代代表理事は、こう懸念を表明。日本介護福祉士会の及川ゆりこ会長は、「これから在宅介護を充実させていく必要があり、その中で訪問介護は非常に重要なサービスのはず。極めて遺憾」と不満を隠さなかった。

JOINT

引用部の(社会保障審議会・介護給付費分科会)のリンクは、報酬改定の細かい内容の資料が掲載されている厚労省のページなので、根拠資料を確認されたい場合は、そちらを閲覧いただけるとよいかと思います。

実際、僕もおどろきはしましたが、これまでに提示されていた資料をみていれば、訪問介護の利益率は目がつけられると思う方が自然なので、事前の協議などで訪問介護は重要だからマイナスにはしないように、くらいの釘はさしといてもよかったんではないかなぁと思います。

物価高騰の影響は施設系や通所系の方がかなりの影響もあるので、そちらに配分すればどこからか足りない点数を回すしかないわけですから。

厚労省は訪問介護の基本報酬を引き下げた理由について、「様々な要素を考慮してメリハリをきかせた」と説明。特に2点を明示的にあげた。

1つは経営状況。昨年11月に公表した直近の「
経営実態調査」の結果を踏まえた。訪問介護の利益率は7.8%で、全サービス平均の2.4%を大きく上回っていた。

もう1つは、介護職員以外の職種の処遇改善を進める必要があることだ。訪問介護は一般的にほぼ介護職員のみで運営される。このため、基本報酬の引き上げに充てる限られた財源を配分する対象にならなかったという。

厚労省は会合で、介護職員の賃上げを具体化する処遇改善加算の一本化・拡充などにより、目下のホームヘルパーの不足に対応していくと強調。訪問介護の加算率(*)を最上位で24.5%まで高めるとし、「基本報酬だけでなく、処遇改善加算の一本化・拡充もあわせて評価して頂きたい。多くの事業所がこれを確実に算定できるよう後押ししていく」と理解を求めた。

JOINT

やはり根拠はそうでしょう。
利益率と前年対比が結構いい数字出してましたからね。
ただ、これは併設型等の利益を出しやすい事業所も含めた数字なので一緒にしないでほしい、とは思っていました。

この記事では紹介されていませんが、その併設型へのメスは入っていたので、そういう部分を見ると、厚労省としてもメリハリを利かせたような感じはします。

令和6年度介護報酬改定の主な事項について より抜粋
令和6年度介護報酬改定の主な事項について より抜粋
上の図の改正後の拡大

同一建物等へのサービス提供が半年の平均値で9割を超えてしまうと12%の減算なる仕組みが増えています。
これ、基本報酬のマイナスとセットで食らうと結構痛いんじゃないかなぁ。

弊社ではそういう対象の利用者さんはいないので関係ないですけど、これを理由に9割を超えないようにサービス提供を断るような事業所が出てきたら個人的には何だか嫌だなぁ・・・。

さて、厚労省は基本報酬を減らしたけど処遇改善加算でかなり手厚くしたからいいじゃない、という感じですけど、単に経営の事を考えると厳しいです。処遇改善加算は基本的には職員のお給料アップに投入する資金なので、会社の利益にはならない収入ですからねぇ。

DXやICT化への投資や職場環境への投資とか、そういうの難しくなるなぁ・・・どうするんだろうか・・・なんて思ったり。

令和6年度介護報酬改定における改定事項について より抜粋
令和6年度介護報酬改定における改定事項について より抜粋
上の図の一部拡大

新たな処遇改善加算については、これまでの3つの加算をなかった事にして、上図のような積み上げ式の加算となるようです。

それぞれ要件をクリアすれば一段階上の加算を算定でき、上に積みあがるほどトータルの報酬が高くなるという事ですね。

弊社では、新加算Ⅰが算定できそうなので、職員の処遇改善にしっかり活用しつつ、採用にもつなげていけるような取り組みをしていきたいですね。

これに対し、連合の小林司生活福祉局長は、「基本報酬を下げてサービスの持続可能性が担保されるのか心配だ。訪問介護の現場で働く人、これから目指そうとする人に誤ったメッセージを送ってしまう」と問題を提起した。

JOINT
令和6年度介護報酬改定における改定事項について より抜粋
令和6年度介護報酬改定における改定事項について より抜粋
上の図の一部拡大

ざっくり計算すると、だいたい2%くらい減ってますね。
100万円の収益があった事業所だと、2万円くらいが減収になりそうです。

一般的にはどうなんでしょうね、訪問介護って倒産も増えているみたいだし基本報酬も引き下げられるからやめといた方がいいよ、みたいな会話になるのかなぁ・・・。

この改正で思うので、新処遇改善加算をうまく活用して他事業よりも圧倒的に高いお給料を提案して職員を引っ張ってくるしかないかなぁ・・・という感じですかねぇ。

令和6年度介護報酬改定における改定事項について より抜粋
令和6年度介護報酬改定における改定事項について より抜粋
上図の一部拡大

訪問系の割合は、他の業種と比べると5~10%くらい高いですね。
となると、他の業種で1000円の時給を提示したとしたら1050円とかで出しても張り合える、という事でしょうか。
あまりそういう感じになりそうにないのと、訪問介護の時給が他と50円違った所で求職者が今更増えるような気もしない感じがします。

また、民間介護事業推進委員会の稲葉雅之代表委員は、集合住宅に併設されている事業所とそうでない地域の事業所とでは経営状況が大きく異なると指摘。「基本報酬の一律の引き下げは理解に苦しむ。より細かい分析に基づいて施策を講じるべきだ。撤退を余儀なくされる事業所が出てしまう」と主張した。

JOINT

この指摘の部分については、厚労省なりに検討して工夫した内容が改正に含まれているのですが、やはりもっと踏み込んだ住み分けというか、同じ業種として取り扱う事自体が不自然なんですよね、併設事業所と単独事業所とでは・・・なので、こういう分析や議論は継続してもらいたいですね。

このほか、日本医師会の江澤和彦常任理事は、「今後、どのような影響が生じるかしっかりとみていく必要がある。在宅医療も訪問介護があって初めて継続できる。訪問介護がなくなると容易に破綻する」と危機感をあらわにした。

JOINT

個人的には、様子をみていく時期は当の昔に終わっていて、既に倒産最多を更新していて人材不足、職員高齢化が深刻で有効求人倍率も圧倒的に高い状態の訪問介護については、もう減ったら増えないと思っています。

在宅医療が破綻するのであれば、いよいよ崖っぷちなんだと思いますけど、そのあたりの危機感はおそらく制度を作っている人には伝わってないと思うんですよね。

普通に考えて、これからどんどん訪問介護事業所は減っていくと思います。
なんでこんなに訪問介護事業所が少ないんだ、という事を後になって言わないで欲しいですね、なるようになっているわけですから。

令和6年度介護報酬改定における改定事項について より抜粋

今回の改正事項をまとめた内容です。
登別市、白老町、室蘭市って、特別地域加算や中山間地とかの対象になってないのかなぁ・・・。
あと、過疎地の取り扱いもよくわからなかったので行政なりに確認してみた方がいいかもしれませんね。

訪問介護、結構いろいろ変わってます。
今まで通りの経営では本当に成り立たない感じになりそうですね。
民間事業なのに効率的な派遣を工夫したらダメ、利益率も高くなったらダメ・・・ですから、泥臭くいきましょうかね。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?