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赤が鮮やかな高齢者用歩行器“らしくない”見た目で人気に、中小企業のひと工夫が拡大する介護ロボ市場・・・という記事の紹介です。

高齢化に伴って注目される介護ロボットには、高齢者の個人差、製品に対する否定的な認識、介護機器の特殊性といった普及に向けた課題があることは、前回の記事で紹介したとおりである。

今回は、介護ロボットを製造する中小企業の事例調査をもとに、介護ロボットの普及のポイントとして、「高齢者の個人差に合わせる」「肯定的な認識を醸成する」「オープンイノベーションを実践する」の三つを挙げたい。

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介護ロボットと聞いてイメージするのは、僕個人としてはディズニーのベイマックスなんですけど、みなさんどうでしょう。

Disney
ベイマックス

ただ、介護ロボットにもいろいろで、そもそもですけど僕ら介護職が対応しているような身体介護が出来るようなロボットというと実現はかなり難しいと思いますので、介護する人が装着する補助具やセンサーやリフトなど、そういうモノも含めて介護ロボット、という感じだと思います。

ポイント①:高齢者の個人差に合わせる

 一つ目のポイントは、高齢者の個人差に合わせることである。

高齢者の健康状態や経済状況、経験、価値観は、一人ひとり異なる。その個人差にどれだけ対応できるかがポイントになる。

ただし、個別の希望に合わせたオーダーメードの製品や、多様なニーズを網羅するような複数の機能をもった製品では価格が高くなってしまう。高額すぎて利用者の手元に届かないという事態は避けたい。

事例調査では、製品の目的を明確にする、その目的に合わせてオプションを用意するといった工夫によって、自社の製品を高齢者の個人差にうまく合わせていることがわかった。

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介護というのは完全に個別の事ですので、その人に特化しか対応ができないと機能として物足りなくなるのですが、そもそも求める機能をオールインワンで搭載できるロボットも中々想像がつかないので、ある程度の範囲内をオートメーションして、そこから先の個別性の高い対応については人間が対応するという事をしない事には難しいと思います。

神奈川県平塚市のTANOTECH株式会社は、モーショントレーニングシステム「TANO」を製造している。

TANOは、ボール投げや体操など高齢者の運動機能の維持を目的としたゲームを搭載したゲーム機の一種だ。通所介護施設のレクリエーションなどで利用されている介護ロボットである。

TANOは販売当初から約50種類のゲームソフトを搭載していたが、思うように販売数が伸びなかった。例えば、立って行うゲームが中心で車いすに座っている人が参加できないなど、通所介護施設を利用する高齢者の個人差に対応できていなかったからだ。

高齢者の誰もが楽しんで運動するというTANOの目的が十分に果たせていなかった。
そこでTANOTECHは、ゲームの内容を極力シンプルにして開発コストを抑える一方、健康状態に応じて皆が楽しめるように座ったままプレーできるゲームなどを増やした。現在、TANOに搭載されたゲームソフトは300種類を超えている。

利用できる高齢者が増えたことでTANOを購入したいという通所介護施設が増加している。販売価格は約120万円と家庭用のゲーム機に比べて安くはないものの、2023年には約200台を販売したそうだ。
製品の目的や機能を明確にしたうえで、利用者に寄り添った選択肢を用意することで、製品を普及させた好例である。

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レクリエーションを提供するゲームもこんな感じでニーズに対応して裾野を広げているようです。

販売台数も増えているようなので今後も活用の幅は広がりそうですが、だからといってそれで配置する介護職を減員できるかというと、そうではないと思います。介護職の業務負担の軽減には繋がりそうですが、細かい対応や見守りなど、この機会を置いておいて誰もも守りしていない現場、というのはちょっと想像できません。

ポイント②:肯定的な認識を醸成する

二つ目のポイントは、肯定的な認識を醸成することである。

製品に対する否定的な認識が普及に向けた課題となるなかで、デザインやマーケティングに工夫を凝らして課題を乗り越えている企業が多い。高齢者向けの製品はデザインが二の次になりがちだが、製品の見た目やイメージを通して、使ってみたいと思わせることも重要である。

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介護に関する道具や施設の内装とかデザインについても、おしゃれであったり使ってみたい!と思えるような工夫は必要ですね。
介護のイメージも、そういう道具の登場で変わっていくでしょう。

例えば、大阪府大阪市のRT.ワークス株式会社が製造する電動の歩行器「ロボットアシストウォーカー」は、鮮やかな赤色が印象的な介護ロボットである。ロボットアシストフォーカーの2号機であるRT.2は、2017年にグッドデザイン賞を受賞している。

このデザインは、外部のデザイナーの協力を得て「らしくない見た目」を追求したものだ。「歩行器=高齢者というイメージが根づいており、それを変えたかった」という同社の代表取締役社長の藤井仁さんのねらいどおり、歩行器を使っていなかった人がデザインを気に入って利用するケースが多い。

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電動アシスト機能つきの歩行器のようで、結構かっこいいデザインで赤い色が印象的です。
詳しくはホームページを参照してもらうとして、手がはなれると止まったり、下り坂ではブレーキがかかって歩行に合わせたスピードになったりとそれなりに十分な機能が搭載れているようです。

ポイント③:オープンイノベーションを実践する

介護ロボット普及の三つ目のポイントは、オープンイノベーションを実践することだ。ここでいうオープンイノベーションとは、外部の知識や技術を積極的に取り込み、新たな製品やサービス、販路を創出することである。

介護ロボットの開発は3~5年ほどかかるといわれている。それだけの時間と労力を費やして製品を開発し、販路をみつけるのは容易ではない。事例調査では、オープンイノベーションを実践することで、外部資源を活用して製品の開発スピードを早めたり、販路を広げたりしていることがわかった。

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これからニーズが増えるとはいえ、あまり沢山売れるような感じでもない介護ロボット市場ですが、それこそ細かいニーズに絞って対応できる機械ならもうちょっと安く普及できるんじゃないかと思うのですが、現場レベルでは困っている事が多すぎるてニーズが広くなりすぎるので、そういう部分の細かい分析とか評価とか進んでいくといいかもしれませんね。

愛知県一宮市の株式会社モリトーは、高齢者を移動、移乗させる介護リフト「つるべー」を製造している。

近年はセンサーを活用して利用者のずれ落ちを防止するなど、先端技術を取り入れている。つるべーの価格は平均60万円で、1993年の発売から2022年までに設置した台数は1万台を超える。

介護リフト市場で高いシェアを誇る同社は、介護リフトの技術を活用したい企業などから依頼を受けて、新たな製品を開発することが多い。一例が、病院のリハビリテーション機器に関するプロジェクトへの参加だ。

このプロジェクトをきっかけに、歩行リハビリテーション用リフト「TAN-POPO」を開発した。リハビリテーションを通して高齢者の自立支援を促すという介護リフトの新たな目的をみつけることができたという。

自動車メーカーとともに、自動車に取り付ける介護リフトを開発したこともある。車両に後付けでき、突然必要になるという介護機器の特殊性に対応した製品である。この介護リフトは自動車ディーラーのオプションとして販売している。

このように外部のプロジェクトに参加して専門家のアドバイスを受けて開発を効率的に進めたり、連携した企業がもつ販路で製品を販売したりすることで、製品を普及させている。

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リフトについては、海外の施設や介護現場では当たり前に導入されていて、日本でも10年以上前からノーリフト活動が始まっていたので、個人的には今頃はリフトの導入は業界全体で進んでいるだろう・・・なんて思っていたのですが、実際はほとんど状況変わってないですよね。

それでもこういうリフトの製品が普及しているのは良い事だと思います。

高齢化が進むことで、今まで高齢者に目を向けていなかった企業も、自社の製品、サービスの対象として高齢者をとらえる機会が増えていくと考えられる。

本連載で紹介した中小企業は、自社や経営者がもつ技術に、ロボットやセンサー、人工知能(AI)などのテクノロジーを組み合わせながら、工夫を凝らして製品を普及させていた。多様なニーズをもつ高齢者を対象にした製品だからこそ、思わぬところで技術が生きるチャンスがあるかもしれない。

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高齢になっても使い続けられるような、そんな道具や商品が今後は開発されていくかもしれませんね。

もう一つ注目したいのは、高齢者が問題なく利用できる製品は、高齢者ではない人にとっても使いやすい製品ということである。介護ロボットとして開発した製品の対象を子どもや育児中の人、障害のある人、リハビリテーションを行う人などに広げている企業も少なくない。

高齢者の先に多くの潜在的な顧客がいると考えれば、新規参入にチャレンジする価値は十分にあるだろう。

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高齢者でも障害がある人でも誰でも気軽に手に取れて欲しくなるような、そんな商品がこれから沢山登場してくれるといいなぁ、なんて思いました。


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