ケイコ 目を澄ませて(三宅唱)レビュー
主役は耳の聞こえないボクサー、ケイコ。弟に「勝手に人の心読まないで」「話したからって解決しない」と伝える彼女は、他人が思考の先回りをすることを嫌がるし、言葉の駆け引きでは欲しいものは何も手に入らないことを経験的に知っている。
この映画では情緒的に分かりやすい物語展開は注意深く避けられる。しかし、それ自体が破棄されているわけではない。物語を誘発するのは空間と身体である。
ケイコの生活圏は概して河川敷や階段下といった低い土地で、そうした深さを持った土地で人たちが水になじむよ