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【学習とは一体なにか①】スキナーの行動主義について

個人の学習を成立させる学習論として、大きく3つの考え方があります。いずれも「発達」の捉え方の違いが理論を規定していると考えられ、「知識」の定義によって変遷をしてきました。

今回は、「行動主義」の学習理論について紹介していきたいと思います。

□ 行動主義とは

行動主義とは、J.B.ワトソンにより提唱された現代心理学の学派です。それまでの心理学で中心的役割を果たしていた内観法を批判して、客観的データを重視しました。行動主義のメカニズムは、「刺激→反応」の繰り返しによる強化です。スキナーの実験を例に説明していきたいと思います。

□ 時代背景

1960年前後において、「知識」はその普遍性が疑われておらず、実証性が重視されていました。そのため、「知識とは普遍的に真である」ことを前提に、個々の知識の正当性をいかに証明するかが重要であると考えられてきました。つまり「行動主義」では、「発達」を「知識の量」であると捉えています。

よって、教師の役割は「知識の提供者」とされ、教師が理解した知識を子どもへ「伝達」するという学習が中心になります。「一斉授業」がこの形であり、全体の知識量を増やすために最も効率的な方法でした。

□ オペランド行動

行動主義の代表的な人物が「スキナー」です。スキナーは、オペランド行動という生物体が自発して行う行動を発見し、学習に応用しました。

オペランド行動の代表的な実験が、「スキナー箱」です。

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スキナー箱(出典:Wikipedia

このスキナー箱は、レバーを押すとエサが出る仕組みになっています。ネズミはたまたまレバーを押すことで、エサが手に入った経験を獲得します。これを繰り返し経験することにより、ネズミは意図的にレバーを押すようになります。つまり、たまたまエサが手に入ったというオペランド行動が強化されて、ネズミは絶えずこのオペランド行動をとるようになります。

また、このオペランド行動に伴う現象として、正の強化、負の強化、正の罰、負の罰というものがあります。

正の強化:望ましい結果を得たことで行動が増える

負の強化:不快なことが取り除かれたことで行動が増える

正の罰:望ましくない結果を得たことで行動が減る

負の罰:楽しみを奪われたことで行動が減る

そして、この実験で得た原理を応用したのがプログラム学習です。

プログラム学習とは、合理的に設計されたプログラムに従って、生徒が学習を進めていく能動的な学習の仕方です。例えば、計算ドリル・漢字ドリルなどがあります。これらは、問題提示→反応→フィードバックを繰り返すことによって学習することができます。

またプログラム学習の研究から、5つの原理が提唱されました。

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出典:鈴木克明(編著)(2004)『詳説インストラクショナルデザイン:eラーニングファンダメンタル』NPO法人日本イーラーニングコンソーシアム(パッケージ版テキスト)第4章

□ 行動主義の疑問点

行動主義では、「知識の量が増えた」という結果によって、学習が成立したかを評価しており、学習が成功するまでは学習はしていないことになってしまいます。また、スモールステップの原理から、成功できるような課題しか学習できないのではないかという疑問点もあります。

1970代に入り、ウィトゲンシュタインといった哲学者によって、知識の定義が見直され、学習理論が変化していきます。

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