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夢と引き換えハンバーガー

僕は、ジャンクフードの中で一番ハンバーガーが好きなのだが、そのハンバーガーを一生食べないと神様に約束してしまった。

僕は基本的に外食は控えて、自炊をしている。自炊をする際も、栄養バランスに配慮しているため、食に気を遣っている類いの人間だと思う。
しかし、そのような生活を続けていると、時折、味の濃いジャンキーな食べ物を食べたくなることがある。そんな時、我慢せず食べることにしているのだが、何を食べるかが結構重要だったりする。

貴重な1回である。今回を逃せば、次回はいつジャンキーな食べ物を食べる機会がやってくるかは未知だ。そんな時、どのお店の何を食べるか、これはかなり迷う。

ラーメン、ハンバーガー、牛丼、ピザ、などなど。普段は健康のため避けている食べ物達が候補に挙ってくる。
そんなとき、僕はいつもハンバーガーを選んでいる。その瞬間はいくつもの選択肢を並べて真剣に悩んでいるのだが、振り返って考えてみると、いつもハンバーガーを選んでいることに気が付いた。僕はラーメンよりも、ピザよりも、何よりもハンバーガーが好きだったのだ。

ハンバーガーを食べる、と決まっても、まだ問題は残っている。その店で食べるのか、だ。ハンバーガーを食べられる店は、多く存在する。
食べ慣れたチェーン店のハンバーガーも美味しいし、せっかくなら個人店の個性的なハンバーガーを食べたい気もする。

どこのお店で食べるのかは、結構まちまち。時と場合によって、マクドナルドに行くこともあれば、食べログで3.8の人気店に行くこともある。

ところで、僕はハンバーガーと同じくらい、いや、それ以上にラジオを聞くのが好きだ。毎週聞いているお気に入りのラジオがいくつかあるが、その中にAマッソという芸人のラジオがある。

そのAマッソの加納さんという人が、コーヒーを辞めたり、砂糖を辞めたりしているのだ。これは一体どういうことなのかというと、「小野照崎神社」というところで神様と約束した、というのだ。

「小野照崎神社」は東京の上野らへんにある神社で、渥美清が「煙草を辞めるから大きい仕事をもらえますように」とお願いすると、その後「男はつらいよ」の主演が決まったという逸話が残っている。

この有名な逸話が起因して、小野照崎神社で何か自分の中で大きな位置を占めているものを手放すと、見返りとしてその分の大きな仕事が舞い込んでくると言われているのだ。

それを知ったときは、「なるほどな、そんなこともあるんだなぁ」程度に受け流していたのだが、上野に行く用事がある時に、ふと小野照崎神社に行ってみようと思い立った。

何を辞めるか、でかなり悩んだのだが、結果的にはハンバーガーにすることにした。ハンバーガーは僕の中で比較的大きな位置を占めていたし、例えば、お酒は人の勧めで飲まないといけない空気になることも予想されるが、ハンバーガーにはそういった懸念は無いように思えた。

上野での用事を済ませて、15分ほど歩いて小野照崎神社に辿り着いた。
その時はちょうど節分で、すごい人だかりが出来ていた。雑踏の中をかけ分けていき、本殿の前に辿り着いた。奮発して1000円をお賽銭箱に入れて、「ハンバーガーを辞めるので、作家としての仕事ください」とお願いしておいた。

僕は小説家になりたい、とひそかに思っている。だが、まだ新人賞に応募したこともない。今年初めて応募しようと、いま鋭意小説を制作しているところだ。

まだ、小説を完成させていないやつがハンバーガーを辞めたとて、神様に手の施しようがあるか。神様が鼻で笑う声が聞こえたような気がした。

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