美容室は難しいし、恥ずかしい
もう美容室に通い始めてから、15年以上は経っているはずだが、未だに攻略することができずにいる。美容室は、恥ずかしい思いをすることが多い。
美容室は、とても洒落ていて、華やかな場所のように思う。綺麗なお姉さんとカッコイイ美容師さんが和気藹々と談笑している。そんな「陽」の空気が漂う場所に、「陰」の外套を着た僕が馴染むことができるわけもない。
美容室に行って、まず席へ案内される。
美容師さんが椅子をくるりと、こちらに向けてくれる。「こちらにどうぞ」と言われて、僕はそこに座らなければいけないのだが、その椅子に付いている足置き場が椅子と僕の間にあるのが見える。
「ここに足をかけて座ってもいいのか?それとも、ここに体重をかけると、椅子がガタンってなるのか??」と迷った挙句、この足置き場に体重を掛けるのは危険だと判断して、少し遠いところから椅子にドンと座るので、すごく派手な座り方になって恥ずかしい。さっそく恥ずかしい。
次は、「今日はどうしますか?」と聞かれる。特に髪型の希望はないが、何の考えもないやつとは思われたくなくて、それっぽい写真を見せる。「こんな風には、どう頑張ってもならネーヨ」と思われてるかもしれない、と思ってちょっと恥ずかしい。
そして、雨ガッパのようなものを着せられ、首にもナイロンのハンカチみたいなのを巻かれ、いざカットが始まる。
僕は美容室であろうが無かろうが、自分から積極的に話しかけるタイプではない。何を話していいか考えて、沈黙してしまうタイプだ。
だから、美容室でのカット中も自分から話しかけることはない。美容師さんから話かけられたら愛想良く返しているつもりなのだが、すぐに会話が途切れて沈黙が訪れるので、たぶん適切な返答ができていないのだろう。
僕は沈黙を気まずいと思わない人間なので、手持ち無沙汰での沈黙でもいいのだが、美容師さんには「何か話さないと!」とプレッシャーがかかっているかもしれない。
そのため、私はいつも雑誌を読むようにしている。本当のことを言うと、カット中はいつもかけているメガネを外されてしまうので、ド近眼の僕は雑誌の文字は見えていない。いかにも集中して雑誌を読んでいる雰囲気を出すことだけに集中している。
たまに美容師さんが「このタブレットで雑誌が読めますので」と説明してくれずに、ただ目の前にタブレットが置いてあるという場合がある。
もちろん、そのタブレットで雑誌を読んでも問題は無いはずなのだが、美容師さんの勧めなくタブレットに手を伸ばすと、「あ、この人、私との会話をシャットアウトして心を閉ざしてしまった」と思われてしまうかもしれないとよぎる。
それで美容師さんが「私の会話力が足りないんだ…」と、自分を責めてしまう可能性も無きにしも非ずなので、そういう時は黙って鏡の下の方を見つめている。
あと、シャンプーが終わった後に「これで顔を拭いてください」と暖かいタオルが渡されるのたが、あれは何なんですか?
シャンプーしただけなんで、ぜんぜん顔なんて汚れてないんですけど…
よく分からないけど、「結構です」とかは絶対に言えないので、軽く鼻の頭にポンポンと当てたりとかして済ましている。
あれは本当にどういう意図のタオルなんだろうか。
そして、シャンプーが終わり、カットしていた椅子に戻る時も、足置き場に足を掛けて座るかどうか問題が発生する。
そして悩んだ挙句、足置き場には体重をかけないと判断して、またドンと大仰に座ってしまうのである。
そして髪を乾かして、ワックスなどでセットまでしてくれて終了。
美容室でしてもらえるセットは、バッチリ決まり過ぎていて恥ずかしいので、美容室から家へ帰るまでの道のりを俯き加減で帰るのだ。
さすがにいい大人なので、そろそろスマートに美容室をこなせる人間になりたい。
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