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福岡移住日記 #153日目 九州サイコロの旅をするはずが東京にいた(完)

福岡に来て初めての年末。特に知り合いもおらず、ひとりゆっくりするにも退屈なので、サイコロの旅で九州地方をまわることにした。

九州サイコロの旅2022 旅のルール

  • 旅の実施期間は12月29日~12月31日

  • JRの博多駅からスタート

  • 最初のサイコロで出た場所をスタート地点とする

  • 3日間でスタート地点から博多駅まで戻ってこれたらゴール

  • 移動手段は主に鉄道「旅名人の九州満喫きっぷ」を使う

  • 選択肢の候補は鉄道で約2ー3時間程度で移動できる場所から選ぶ

  • サイコロの選択肢には九州地方以外の場所も登場することがある

  • ただし九州地方以外の場所を出した場合、ゲームオーバーとする

前回の投稿はこちらから↓

旅1日目。
午前10時に博多駅に到着。駅は帰省する人や観光に来た人でいっぱいで、人目が気になる場所でサイコロを振るのは恥ずかしかったので、駅ビルの3階に移動。駅前が一望できる広場で最初のサイコロを振ることにした。

最初の選択はこちら。

1.九州号
2.とよのくに号
3.ひのくに号
4.桜島号
5.フェニックス号
6.はかた号

行き先は書いていないが、これはすべて高速バスの名前。バス名から行き先が想像できるもの、有名すぎて察しがつくもの、豊富なラインナップ。
ちなみに、行き先によっては目的地到着が夕方~夜になるバスがあって、1日目の行動が終了してしまうので、なるだけ近場で済ませたいところ。自分で行き先を作りながら、そんなことを考えていた。

さて、記念すべきサイコロを振る。
カラカラと軽い音を立てて、サイコロが転がった。

6.はかた号(東京)

は か た ご う と う き ょ う い き

水曜どうでしょうファンにはおなじみ「キングオブ深夜バス」が出たので、この瞬間サイコロの旅はゲームオーバー。しかしサイコロで出た以上、従うしかない。

なおはかた号はご存じ深夜バスなので、出発は夜。
サイコロを振ったのは10時過ぎ。まだ8時間くらいある。博多駅をのんびりまわったり、一旦家に帰ったりして過ごした。

https://note.com/tobi_write/n/nbfa5cda0936f

自宅でNPBのジュニアトーナメントを見た

※以下はかた号の乗車記になります。
もうサイコロは出てきませんごめんなさい

適当に時間をつぶして、はかた号の出発時刻である18時40分になった。
博多駅のバスターミナルに向かう。どうでしょうで見た場所と同じところにいる自分に少しテンションが上がるも、これから長い旅がはじまることを思いだし、テンションが下がった。

乗り場に向かうと、案内板に「はかた号」の文字が2つある。どうもこの日は多くの乗客が予想されるため、2台体制で運行するらしい。こんなバスに乗る人が2台分いるなんて、わけがわからん。

バスの車内は大きく2つに分かれている。バス前方部分は両脇にスペースが1つずつ区切られて設置しているプレミアムシート。扉も付いていて、席はフルリクライニング。深夜バスとは思えないほど快適で、これなら長旅もいくぶん楽しめそうだ。
もちろん当日に席を予約した僕がそんな席を取れるはずもなく、今回の席はバス中央部分から後ろにかけて用意されている普通の座席。それでも3列シートで前後の感覚は広く、一般的な深夜バスに比べたらかなり居心地が良いほうだ。いろんな深夜バスに乗ってきたが、過去最高に良いといえる。
出発から到着まで14時間さえなければ。

予定より5分ほど遅れてバスが出発した。もう逃げられない。九州地方をいろいろ回ろうとしたのに、僕はなぜ考えられる中で最悪の方法で九州を脱出しようとしているのだろう。

会社の人「年末年始は帰省されるのですか?」
とびた「いやあ、せっかくなので九州を旅行しようと思ってます」

九州旅行を計画して初手ではかた号に乗るアホ。
バスは天神ターミナル、小倉駅など、いくつかのバス停で乗客を乗せつつ、東京を目指す。
乗車してしばらくしてから、乗務員の方が席の様子を見に来た。そして乗客に蒸気アイマスクのサービスをしてくれた。優しい。過去に乗ったバスで水のサービスはあったけど、これは初めて。やるじゃないかはかた号(ちょろい)

20時55分頃、バスは関門海峡を通過した。これで正真正銘、九州を離れたことになる。バスは暖房が効きすぎているのか、少し暑い。

21時55分、山口県の佐波川SAという場所に着いた。ここで1度目のトイレ休憩となる。なお次の休憩は静岡だと言われた。分かっていたけどスケールが違いすぎる。もはやワープ。
バスに揺られていたら小腹が空いたので、パンとルイボスティーを買って戻った。

バスが出発して数分後、消灯時間となった。深夜バスは夜中の時間帯になると、車内の照明が消える。かといって眠れるかというと、そんなことはない。バスは常に高速で走り続けるため、それなりに揺れる。かといって明かりを発するスマホやゲームはできないし、外のライトが入ってくるのでカーテンも閉められている。熟睡できたら問題ないのだが、消灯時間になってからの深夜バスはただ時が過ぎるのを耐えて待つ状態に変わる。
幸いにもはかた号は周りの座席が見えないようにするためのしきりカーテンが設置されていたので、ちょっとくらいならスマホを使っても問題なさそうだった。Googleマップを開きつつ、移動中の場所を確認してみることにする。

0時00分頃。お尻が痛くて目が覚めた。5時間以上走ったし、もうだいぶ近づいたはずだと思いながらスマホを開いてみる。スマホが示している場所は岡山県の福山市だった。全然進んでねえ・・・
軽く絶望して再び眠ろうとする。股関節も痛くなってきた。体勢を変えながら寝ようとしていたところで、乗務員さんにもらったアイマスクのことを思い出す。これでリラックスすれば再び眠れるだろう。封を開けて目に当てると、目の奥がじんわりとあったかくなってくる。

少しして、額に汗がにじんできた。暑い。額の汗が垂れてきて、アイマスクがじんわりと濡れる。不快感が増してくる。暖房がやや強めの車内で使うべきではなかったかもしれない。発汗と乾燥でのども渇いてきた。

2時44分頃、バスは兵庫県の三木SAで停車した。乗客は降りれないけれど乗務員の交代作業のために、深夜バスはこうして何度か停車する。仕方ないことだけれど、この停車の度に僕は目が覚める。
手帳のメモ書きには「やっと半分を超えた」と書いてあった。当時の僕の心境がありのままに綴られている。

4時過ぎ、バスは滋賀県の甲賀市辺りを通過した。メモには「ヘッドホンと椅子が当たる音が、なんか、ペンで紙に書いてる音に聞こえてる」と書いてある。極限状態に達してしまったのか、意味が分からないことを言っている。


朝の6時55分。静岡県の静岡SAに到着した。乗車して2回目の休憩。すっかりガチガチになった体を少しほぐすために、バスを降りる。
降りるときに紙パックのお茶がサービスとして配られた。静岡でお茶のサービスとは、なかなか粋じゃないか。生産地を見たら長崎県って書いてあったけれど、見なかったことにした。

冷たい空気と冷たいお茶で一気に目が覚める。まあ全然熟睡はできていないけれど。
ちょうど朝日が昇ってきたようで辺りも明るい。旅も終わりに近づいている・・・ような雰囲気だが終点まであと2時間ある。トイレを済ませて手を洗おうとしたとき、自分の後頭部が直角になっていることに気づく。同じ姿勢で横になりすぎた結果、髪型が断崖絶壁になっていた。

新東名高速を快調に走り、少しずつ目的地に近づいている。名残惜しさは皆無だったが、ゴールが近づいていることへの感慨深さはあった。あと少し。

9時19分。バスは予定通り新宿に到着した。荷物を持って降りるとき、14時間の移動を共にした乗客がなんだか戦友のように見えた。この長い戦いに勝利した喜びを分かちあいたいという謎のテンションになっている僕を尻目に、乗客は次の向かう先へ次々と向かってしまった。
せっかくなのでバスを見送ることにする。

年末で人の往来が少ないなか、バスは快調に走り去っていった。あんなに乗りたくなかったのに、最後はなんだかさみしかった。

こうして、僕の九州サイコロの旅は終わった。
今回学んだこと。
・おふざけではかた号の出目を入れてはいけない

みなさん、良いお年を。

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