マガジンのカバー画像

長詩(~'19.3)

19
主に'19年3月までに書いた詩をまとめたものです
運営しているクリエイター

記事一覧

詩|光と闇

光を見ることは 泣くべきことだった 光が明るいことに気づいたのではなく 闇が暗いことに気づ…

12

詩|桜

私が生きようとしないから 桜が咲く 桜の樹が生きる 桜の枝が生き切る 花が咲く 花が散る …

あさぎ とち
1か月前
8

詩|白鳥

北へ渡る白鳥が  今年も確かなまなこで 湖に帰ってくる そのさすらいは 一点を向き  命を…

あさぎ とち
3か月前
8

詩|三秒間の沈黙

その人はしゃべり続けた 私は話すことができなかった その人が話し終えた後 三秒間の沈黙の声…

あさぎ とち
4か月前
7

詩|がらんどう

何を見ようとしているのか がらんどうの空間に 何を感じようとしているのか がらんどうの部屋…

あさぎ とち
6か月前
2

詩|さらさら川

さらさら、と良い音を立てて流れる人がいる 三月下旬には たくさんのさよならが舞い 疲れと…

5

詩|秋の詩

秋も深まると 段々抵抗できなくなります 通りすがりのように 言葉が落ちてきて 今朝も言葉を一枚重ねて着て 生地も徐々に厚手になってゆきます 自然にそうなるのがいいのでしょうか 段々力が抜けてゆきます ノートの言葉たちは活発になって 活発になるからお腹をすかせて 何か食べさせるために 外を舞う 赤い言の葉を見るのです     (詩誌『everclear』第6号 収録)

部屋

部屋はたしかにそこに存在するが なにも話さない 窓から初夏の柔らかい風がそっと入ってくる …

4

さざ波

不思議 ひとりでにつくってゆく リズム 青い波 緑の波 さざ波 おだやかに 寄せて返す …

9

カー☆チェイス

僕は走り始めた 彼は言った 慌てるな 慌てずに走れ 撃つという選択肢もあれば 撃たないとい…

8

ホームカミング

きっと長らく出かけていたのです とっ散らかしたまま すべて中途半端で投げ出して ずいぶん …

11

satori世代(平成最後の夏)

若者は去った そしてまた新たな若者が来た 今度の訪問者は一瞬開きかけた口を閉じた 店先に…

16

さようならこんにちは

渡せなかった わずかな時間 きれいな小石 丸い石 川原で見つけた あの真夏  薄目を開け…

14

はしっこ

去年のクリスマス・イブ わたしは はしっこを握っていた 新学期の日 午後4時 春 あなたが駅の反対側にいた頃 ちょうどわたしはこちら側にいた 夕暮時 空が変わる頃 あなたとわたしの間にある 灰色の歩道は 迷わせるように 何度も曲がりくねっていて あいだには多くの雑踏があった 黄色い月には初めて現れた日があるらしい 何億年も前 月の生 月の死 などと学校帰りに考える アポロ計画は17号までだったっけ 月もまた出て沈む しかしあなたがその間何をしているか 未来にわたしが何