森のベッド
ナースコールとラジカセのコードが
交差したまま放置されている
おそらく 自分ではなく
街が止まっているのだ
空が躊躇しているのだ
横断歩道の青信号は
いつまでも点滅し
中で歩く人は
汗をかき迷っている
いや 彼自身が
歩いているのか 歩いていないのか
判断つきかねているように
原生林のあふれた森には
渡るための道路がない
木の葉の中に
やわらかなベッドが置かれている
眠りの森の入口で
迷いの交差点は少しずつ消えかけている
(雑誌『詩人会議』’21年2月号 収録)
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