【詩小説】首



少女は黒い髪をはためかせながら、王の所望どおりの踊りを踊った。

参列者は喝采を送った。

少女は王と王妃の前に進み出た。


地下から男の叫び声が聞こえる。

王と王妃の姦淫をなじり、

主が復活する日は近いと言う。


少女はうやうやしく礼をした。

王は望むものはなんでもやると言った。

王妃が「地下牢の男の首を」と言った。


「地下牢の男の首が欲しい」

少女は夢見心地でそう言った。

王は首を振り、頭を激しく揺らした。


地下の扉が開けられた。

すべてを悟った男は抵抗しなかった。

復活の日を夢見ながら死んだ。


首が少女の目の前に運ばれた。

少女はうっとりしながら近づいた。

その首に口づけをして、抱きしめた。


近くで王妃の哄笑が聞こえる。

その声すら少女には聞こえないようだ。

心を痛めた王は、決意した。

少女をこの世から抹殺することに。




(聖書にあるサロメの話を詩文風にまとめてみました)

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