ダイアログインタビュー ~市井の人~ 高橋秀典さんさん 「『認めて貰える居場所』づくりの旅」6

――「たこ焼 円達」というと、南相馬市民ならみんな知ってるじゃないですか。

高橋 そう…なのかどうかはわからないけど(笑)。

――いや~みんな知ってますよ。市内でイベントがあると必ず出店してるし。で、イベントで出店するって、ぶっちゃけそんなにもうからないと思うんですけど(笑)、どんな思いで出店してるんですか?

高橋 イベントでの出店って、とてもハイリスクなんですよ。人件費をかけて従業員を配置して出店するんですけど、やると決めたら雨降りだろうが何だろうがやらなきゃならない。この間の「もとまつり(2016年8月28日に、原町区で開催された祭)」でも、従業員を12人雇って出店して、天気予報は良くなかったんですけど、それでもその人数でやりました(笑)。メチャメチャ人件費はかかったけど、雇ったからにはやらなくちゃならないですし。とてもハイリスクですね。で、ハイリターンを求めると、経験に基づく予測も必要です。

――ぶっちゃけ、あんまりリターンは無いんじゃないかなとか思うんですけど(笑)。

高橋 (笑)。それでも、お祭の時は「南相馬でやってるからには、下手なもんだしたらお店の評判も落とすから」なんていう事を従業員のみんなも言いながらやってるんです。

――「たこ焼 円達」は若い従業員ばかりなのに、気合入ってますね。職人気質だなぁ(笑)。

高橋 うちの従業員の子たちも、ぶっちゃけちょっとヤンキーっぽいというか(笑)、アウトロー的な子たちは多いから、やっぱり「認めて貰いたい」という気持ちが強いんだと思う。ちゃんとしてないと見られちゃうから、「見かけはヤンキーでも、ちゃんとしてんだよ!」という思いがね(笑)。

――以前「さくらはる食堂」のシステムの話を高橋さんが私に話してくれた事があったんですけど、高橋さんが厨房にいない時も、同じ味のものをきちんと提供出来るようにお店のシステムを作ってあるという事を聞いて、従業員の子が作ったものも確かに同様の味の商品を出してもらえていたなという事を思い出しました。それってシステムももちろんですけど、若い従業員の子たちの意識の高さもあってこそなんですね。「いらっしゃいませ」の挨拶もとても明るくて良いなと思いましたし。

高橋 うん、やっぱり認めて貰いたいという思いがあるんだと思います。

■ ここでまた先ほどと同様のキーワードが出てきた。「認めて貰いたい」…これもまた、自分の居場所はここにあるという自己表現の一つだろう。仕事をするという事自体が、こうした自己表現の方法ではあるが、その舞台が、南相馬の「たこ焼 円達」と「さくらはる食堂」という場をステージにして出来上がっているところに、私としては注目したい。震災をきっかけとしたわけではもちろん無く、こうした場所はどんな状況でも求められていて、「街づくり」などという大層な看板を掲げずしてごくごく普通に作られているのだ。思えば当たり前の事なのだが、この事に改めて気づかされた。「震災復興」や「新しい街づくり」という金看板に我々は目を向けがちだが、こうした営みは、何があろうと連綿と続けられてきたのだ。

~続~

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?