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レポ79:肥前向島灯台(2024/1/17)

佐賀県唐津にある「七つの島」の内、最も面積の小さな向島(むくしま)。一体感のある島の中で、ひときわ存在感を示す灯台を訪れました。

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年々その数を減らしている灯台を護るため、灯台病の記者が灯台訪問の魅力などをお伝えする『全国の灯台巡礼レポ』。灯台マニアの方のみならず、灯台のある風景を通じて地域の魅力を再発掘したり、自身の原風景を護りたいと願う地元の方々にも参考にして頂ければ幸いです。

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◼️レポ79:肥前向島灯台(2024/1/17)

佐賀県唐津(からつ)市には離島が七つあり、「七つの島ダイアリー」として魅力を伝えています。その中で最も小さく、島民も一番少ない島が肥前(ひぜん)町の向島(むくしま)です。この島には星賀(ほしか)港から出発します。

JR唐津駅から自動車で30分ほどにある星賀漁港

星賀漁港には昭和バスの「星賀」バス停から徒歩1分ですが、今回は自動車で訪問しました(JR唐津駅から30分ほど)。駐車場は漁港沿いにある星賀高齢者センターに1日300円で停められます。

敷地内以外にも第2駐車場があるそうです

向島には1日3回の定期船(郵便船?)「むくしま」で渡ります。10月から3月の間は最終便の時間が変わるので、よく時刻表を確認して訪れてください。日帰りだと日没まで迎えられないのが離島灯台のジレンマです。

 唐津市 向島航路時刻表

オレンジと赤の色合いがカッコいい船「むくしま」
船内は割と小ぢんまりとした雰囲気
後方のデッキに座ったりすることも出来ます

港を出発して10〜15分くらいで島には到着するとのこと。漁港を出発してすぐに右手側に肥前宮埼灯台が見えてきました。

神社の鳥居近くにあるのが特徴的

向島は陸地から約2km位置しており、星賀漁港を出たらすぐに向島は目視できます。肥前向島灯台も高台の上に視認できますね。

後方デッキは足場不安定なので撮影時はご注意ください
船上から撮影。かなり目立つ位置に灯台が佇む

あっという間に向島の港に着きました。静かで穏やかな漁港町です。島民の方は40〜50人ほど、とのことです。灯台も港から見上げて確認できますね。

灯台は標高67mのクラマ岳の頂上にある
集落は海風を避けるため島の南の漁港周辺に密集してます
島の南側のビーチや神社、北側への自然散策も見どころ

灯台への道のりはここの通路から入ります。灯台のある「クラマ岳」の頂上までは遠いようですが、ここから遊歩道を歩いて15分程度で辿り着けます。

写真は見づらいですが灯台への案内表示もされています

遊歩道の途中からも灯台が際立って見えます。
向島は地理的に伊万里(いまり)方面に入る際の海上交通の要衝である上、長崎県の壱岐島(いきしま)と同じく長崎県の平戸(ひらど)方面航路のちょうど中間地点にあたり、標高67mに立つ肥前向島灯台は海難事故の防止に貢献しています。

遊歩道からは漁港も一望できる

途中の分岐点も案内表示があるので、方角に迷うことは基本無いと思います。ただ歩いて5分くらいした下記写真からは山道っぽい雰囲気になります。とはいえ、道は舗装整備されており非常に歩き易いです。

ここから5分ほど山道っぽい雰囲気を楽しめます
倒木ではなく、やんちゃな成長しているだけ

先ほどの道に突き出た木を通り過ぎると灯台が見えてきます。冬場なので非常に心地良い気候で、丁度良い運動にもなります。

手前の木々が夏場だと繁って見えないかもです
よく見る形の灯台だけど、凛とした立ち姿

灯台までにちょっとした階段も設置されており、灯台を見上げる格好になりますので、灯台巡り冥利になりますね。
ただ、この辺りは「向島燈台公園」と銘打たれていますが結構荒れている感じがして物寂しさを感じてきます。灯台案内板も老朽化して落ちてしまってますし…
昭和20年代には戦後の復興を誓って灯台の下で島民たちがお酒を飲む「灯台祭り」が開かれていたこともあるそうです。

見上げる灯台アングルは青天時には映えます

公園の休憩所スペースは、荒れ果てておりちょっと入ってくつろげる感じでは無いですね。写真では見づらいですが外にもベンチスペースなどもありました。

冬場でこの荒れようなので夏場はもっと厳しそう
かつての島の看板が時代の変化を物語る
荒れたベンチとテーブル跡からの眺め

頂上の公園からは鷹島(たかしま)と、鷹島に寄り添うようにある黒島(くろしま)が見えます。鷹島は唐津本土と道路続きなので車で往来可能で「鷹島モンゴル村 ※鷹島は元寇で有名な地」からも肥前向島灯台は臨めるそうです。

向島は昔、神功(じんぐう)新羅遠征の時に「あの島は向こうを向いている」と言ったのが由縁だとか。豊臣秀吉が朝鮮出兵する頃から人が住み始めたようです。

灯台のある場所からは漁港も一部しか見えません。灯台の建築物としての高さ(塔高)は12m、海面からの高さ(灯高)は80mですから、灯台に登るともっと見晴らしが良いのでしょうね。

ちなみに2022年に唐津海上保安部交通課の方の活動事例として、肥前向島灯台に年に一度の保守点検で灯器部分に登っている様子がYouTubeにアップされていたのでリンクをシェアしておきます。

 海と灯台ニュース(YouTube) 肥前向島灯台

灯台脇には水難防止の願いを込めたお地蔵様がいます

海と灯台ニュースでも言われていましたが、離島の灯台は島民の方に「灯火管理協力者」となって頂き、異常がないかを日々管理しているそうですね。そういう意味で、島の方々にとっても無くてはならない存在です。

離島あるある、猫がたむろしがち
漁港に建立された開発碑には灯台起工日が記されてます

漁港に戻り、改めて灯台を見上げると手前部分が土砂崩れなのか崩れ落ちてしまっていることにようやく気づきました(冬場で木々が枯れているのかと思ってた)。

他にも2時間滞在する間に島の北側にある海岸線まで散策。コチラは南側の町並みと打って変わり、厳しい風と波が作った自然そのままの景観が楽しめます。岩石に剥き出されている地層が独特で面白い。かつては海水浴場・キャンプ場があったようですが、その面影はなかったです。

南側の漁港そばには八坂神社と、その奥には2012年3月で休校となった入野小学校向島分校の校舎があります。2011年3月までは小中学校でしたが、当時の中学生が卒業し閉校となったとのこと。

休校前の最後の小学校担任であった秋山忠嗣氏が2年近くの学校生活の様子を綴った『最後の小学校』という書籍が講談社より発売されています。当時の向島の実生活や島民と本土から来た人間関係、といった具体的なエピソードが詳細に書かれています。

書籍の中に「向島小中学校校歌」が掲載されており、この場で引用させて頂きます。

「向島小中学校校歌」
怒涛さかまく 玄海の
とどろく波に われ呼ばん
愛と誠と情熱の
道を求めて 進むもの
向島校の 学び舎に
おお永遠の 幸ぞあれ

白亜に映える 灯台の
恵の光 われ呼ばん
明るい島を 夢に見て
手を取り合って 集うもの
向島校の 学び舎に
おお永遠の 幸ぞあれ

秋山忠嗣著『最後の小学校』

短い滞在時間でしたが、島の方々の暮らしぶりやその中で灯台がどのように位置づけられているのかが分かる訪問でした。

村上 記

年々その数を減らしている灯台を護るため、灯台を訪れる魅力などをお伝えするプロジェクト。灯台マニアの方のみならず、灯台のある風景を通じて地域の魅力を再発掘したり、地元の原風景を護りたいと願う方々の想いを大事にしていきたいです。