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〈絵本〉mozomozo③

「見えないってことは、いないっていうことなの?僕はそう思わないね」

ねこは穴だらけの海の底に向かって話しかけました。
「おおい、もぞもぞ。きこえる?あのね…僕の住んでいる島の植物が枯れてしまったんだ。きみが怒っているからだって、僕の友達の木が教えてくれたんだ。どうして怒っているのかな?」
「・・・」
返事はありません。
「だまっていたら、分からないよ」
「・・・」
やっぱり返事はありません。

ねこは静かにだまって、海の底を触ってみました。

すると猫の心の中に
怒っていて、寂しくて、悲しくて、痛いという気持ちが
どんどんわいてくるのを感じました。

「そうか。きみの体に、たくさんの穴があけられてしまったことを怒っているんだね?」

「痛くて辛かっただろう。何も言えずにずっとがまんしていたんだね」
ねこはでこぼこした海の底をなでました。
「そうだ、この葉っぱ、ケガをした体を治すって木が言っていたっけ」
ねこはしっぽのひもをほどいて、葉っぱを手にとりました。
「きみにあげる。きみの体の傷がこれで治るといいね」
 葉っぱはひらひらと 海の底の穴に落ちて行きました。
「あっ いけない!葉っぱがないと、ぼく、息ができなくなるんだった… ありゃ~」 

ねこはそのままパタリと倒れてしまいました。



すると、地面が少しずつ動き始めました。


もぞ もぞ もぞもぞ もぞ もぞもぞ 



ねこは気がつくと島の真ん中の木の下でぐったり横になっていました。
葉っぱが黄色くなった木が泣きながら声をかけました。
「よかった、目を覚ましたんだね」
ねこは小さな細い声で言いました。
「あのね、『もぞもぞ』に会えたよ。きみの緑の葉っぱをあげたんだ。だからもう大丈夫だよね」
そして、にこっと笑いました。

島は再び生き返りました。木もねこも元気です。
島はもっと大きくなって、友達もふえました。



おしまい


読んでいただき、ありがとうございました。


〈絵本〉mozo mozo①|toga.shi|note
〈絵本〉mozo mozo②|toga.shi|note
〈絵本〉mozo mozo のこと まえがき|toga.shi|note


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