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アーティスト・コレクティブとSDGsな現代アートの祭典ドクメンタ15 訪問記#3

歌声の彼方

メイン会場であるFridericianumでの展示の中で最も印象的だったのはコミナ・フィルム・ア・ロジャヴァ(Komîna Fîlm a Rojava)というコレクティブである。フィルムと絨毯でインスタレーションされた展覧会場は物語の中へ没頭させる。コミナ・フィルム・ア・ロジャヴァの活動はその名前からも分かるように、シリアのロジャヴァ出身のアーティスト達で結成されたコレクティブであり、芸術教育や映画上映を供給することを継続している。
会場で上映されていた「Darên Bi Tenê(Lonly Trees)」には本当に圧倒された。それはインタビューされる人物の不意な美声と彼らの土地の風景が重なり、消えゆく彼らの文化の愁を表現する。シリアス・ミュージックビデオと言うのか、クルド伝統的音楽の奥に人々の持つ強さ、趣が垣間見える。

Komina Film a Rojava

洞穴の先

同じくFridericianumの地下の会場は映像アーティスト、イスマイロヴァ(Saodat Ismailova)率いるアーティストコレクティブDAVRAの「Chiltan」と命名されたプロジェクトである。穴倉の様な展示会場には映像、インスタレーションが展開する。
砂漠にある小山の近くに一台のバスが停まる。そこから少女たちが強風の中、その小山に登っていく。一体何の儀式が始まるのかドキドキしながら映像の続きを追いかける。見たこともない風習、こういったものはいつか消えて無くなってしまうのだろうか。世界は平均的になり、強者から見た弱者の文化はどうでもいいものや間違ったもののように見做されるよう仕組まれていく。この映像作品は、そんな平均化された世界に疑問を投げかけているのかもしれない。

DAVRA