見出し画像

文化的体力

 先日、仕事で新宿に行く予定があり昼休憩ついでにブックオフに寄った。
目当てのものは資料づくりの参考書。
「コンサルのための資料づくりの本とか読んでる?」と数日前社長に粗末な資料を見せてしまった際、小言を言われたためだ。

 学生時代、実家近くの書店でアルバイトしていた。
本に囲まれた場所が好きで。というのは面接用の理由で、声を張らずに省エネ運転で小遣い稼ぎができるからである。
そのバイト先の店長(ムロイさん)は本屋の店長でありながら文庫本などは古本屋で買う人で「行きつけの古本屋とかあるんですか?」の返事がブックオフだった。

 今や古本屋というとサブカルの一種として扱われはじめ、雑誌には“本とコーヒー”などの見出しで特集を組まれていたりする。
そのためか、古本屋→ブックオフという変換がスムーズにいかず少々戸惑ったことを目当ての本を探しながら思い出した。

 そんな“純古本屋ブックオフ”で参考書を探しながら出会ったのはオードリー若林さんの“社会人大学人見知り学部 卒業見込み”である。

 僕自身、リトルトゥースでも若林氏愛読家でもないのだが、社会人3年生となるいま、散歩以上仕事未満の趣味を見つけられずにいる中で芸人さんに精神的に救われる場面が多々あり、気になって手に取った。
中には2年前のブックオフのレシート(売り主の購入した時のもの)が挟まっており、自分が買った金額よりも安くて、物価の高騰あるいは若林さんの市場価値を感じた。
 

キャッチーなタイトルもさることながら、中身も面白くサクサクと読み進められた。社会人〜年生と若林さんの過ごした年代ごとにエピソードがカテゴライズされたエッセイで、有名になっていく過程と葛藤(こじらせ)がつづられている。
以前、星野源さんのエッセイを読んだときに抱いた感情に近いものを感じた。
その感情を噛み砕くと、自分は人の(こじらせ)を読む・知ることが好きなのかもしれないとこの本を通じて気付いた。
近年のハッピーエンドで終わらせない恋愛映画(こじらせ風味を添えて)が流行る傾向があるのも自分のような人間が一定数いるからなのかもしれない。

 そんな若林さんのエッセイは3・4年生あたりで止まっている。
最近仕事が忙しく帰宅が0時近くなることもあり時間も気力もすり減ってしまっているのを言い訳にさせてほしい。

ツイッターで面白い投稿を見た。

“イジワル映画こと『花束みたいな恋をした』の話だけど、映画や小説が好きだった麦くんが、就職して仕事で疲弊して、最終的に「パズドラくらいしかできない」精神状態に至るの何度観てもゾクッとする。自分も一日8時間以上働くと明確にこの"文化的体力"のようなものが削られていくのを感じる”

すごく共感した。これだと思った。
面白いものを面白いと感じるための体力もあるのだと、当たり前のように気づかなかった。
帰宅する頃には自分の脳内CPUは冷却モードになっていて、情報処理能力は限りなく機能していないのだ。
お風呂に入り、ご飯をつくって食べて布団に入る。平日はそれで精一杯なのだ。

だからこそ、頭を使わずに笑えるもの、
アマプラのドキュメンタルやYouTubeのおすすめに突如現れるロバート秋山の動画、数分あるいは数秒で終わる ちいかわ(もはやエンディング曲がメイン)に最近ハマっているのかもしれない。

そんな社会人3年生は一人暮らし2年生になろうとしている。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?