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オーバーライト完了

仕事でなにがしかの失敗をしてしまうと、どうしても引きずってしまう。
それが大きければ大きいほどなかなか気持ちが切り替えられない。
サッカーを見ても、音楽を聴いても、ふて寝をしても、しこりのようなものがどうしても消せない。
心の片隅が重たい感覚が残る。

で、そんなときにどうするかと言うと、結局は次の仕事で嫌な思い出を上書きするしかない。

今回の観戦記はそんなお話。

明治安田生命J3リーグ 第5節
2022年4月10日 13時3分キックオフ @白波スタジアム
鹿児島ユナイテッド VS 藤枝MYFC
2-0(1-0、1-0)
天気:晴れ 気温:26℃
入場者数:3,919人

あれはJリーグの日だった

この対戦カードが前回、白波スタジアムであったのは2021年5月15日。
くしくもJリーグの日だった。
Jリーグの公式記録を見ると天気は雨一時雷雨。

サッカーの試合は多少の雨が降ったところで中止にはならない。
とはいえ、屋根がほとんどない白波スタジアムをホームとする鹿児島ユナイテッドのサポーターにとって雨が降ると観戦環境が著しく悪くなる。
この日は事前の天気予報で雨だったから、普段のバックスタンドではなく、わずかながら屋根があるメインスタンドのチケットを購入していた。

ところが、当日は屋根のあるエリアでもカッパが必要なほど風が吹いていた。
追い打ちをかけたのは雷だった。

雨では中止にならない試合も雷が鳴れば中断せざるを得ない。
前半9分から108分間の中断。再開してしばらくした前半44分にさらに25分の中断を挟んだ。

観客もスタンドに出ているわけにはいかないので、コンコースの中に避難した。
再開するのかも不確かなまま、待つことしかできない。
さっさと家に帰ってシャワーでも浴びて、再開したらDAZNで見ればいいんじゃないかという考えもよぎるほどの悪天候だった。

それでも待った。

どれほど待たされようと、勝てばいい。
むしろ難しい状況の試合をものにすることでチームに勢いが出るはずだ。
その姿を見届けたい。手拍子で後押しをしたい。
中断している間にはそう考えて再開を待った。

で、その結果は0-3だ。
後半30分、37分、40分に立て続けに得点を奪われた。
最初の失点をきっかけに、なんとか保っていた緊張感が失われたように感じた。

とにかく長い一日だった。
でもその日感じた疲れは、きっとスタジアムに長時間いたことだけが原因ではなかった。

桜は散って夏が来た

あれからほぼ1年が経って、鹿児島ユナイテッドFCは再びホームに藤枝MYFCを迎えた。
天気は晴れ。気温は公式記録で26℃。

屋根のないバックスタンドでの体感はそれ以上で、気の早い夏の訪れを感じさせた。
マスクの中にじっと汗が浮かんできて、もう何度目になるかわからないけれど、早くマスクのない生活に戻りたいと思った。

黒豚焼肉丼

この日のスタグルは黒豚焼肉丼。
去年のことを忘れるために試したことのないメニューを選んだ、というわけではないけれど、おいしかった。

食事をとりながら周りの様子をうかがうと、なんとなく人の数が少ない気がする。
でも実際の入場者数は3,919人だったので、それほど少ないというわけではない。
きっと去年のことを思って、あんな光景を見たくなくて人が少ないと思い込んでいたんだろう。

勝利をすべてを許してくれる

キックオフ

アウェー2連戦を1勝1分けで乗り切ったチームは開幕から4戦負けなし。
勝ったり負けたりを繰り返した去年とはどこか違う。

この日は前半14分に先制した。
ロメロ・フランク選手がゴリゴリと技と力で強引にペナルティーエリア内を進んで、最後は有田選手がズドンときれいなボレーシュートを決めた。

パスもシュートも去年は見られなかったような形で、このまま追加点を奪えれば今日こそは勝てる、とそのときは思った。
後半は安心して見られる展開になるかもしれないと期待した。

けれど、やはりそう簡単にことが進まないからサッカーは面白い。

ゴールキーパーも交えた藤枝のビルドアップがうまくいって、なかなかボールが奪えない場面が続く。
ひやりとするシーンが続いてポストに助けられたこともあった。

ピンチが連続すると、去年のこのカードで1失点後にぼろぼろと崩れたことをどうしても思い出してしまう。
時計の針の進みがものすごく遅く感じてしまう。

でも、やっぱり今年は違った。
粘り強く守り抜いて、最後はカウンターから追加点を奪ってみせた。
(たぶんオフサイドだったけど、これもまたサッカーなんだからしょうがない)

圧勝でもないし完勝でもない。
ただ、こんな試合に勝てるチームは強い。

日焼けした腕を眺めながら

円陣

失敗してそれを取り返すいい仕事をした。
でもそこで満足してたらきっといけない。

失敗したことを自分でも忘れて、周りの人も気にしなくなるほどのことを次はしなくちゃならない。
自戒を込めて、そう思う。

陳腐なまとめ方しかできないけれど、まだシーズンは始まったばかり。
人生はまだまだ長い。

ここまで書いて気付いたことがある。
キーボードをたたく腕が赤くなっていた。
去年の贖罪のつもりなのか、頑張りすぎた太陽のせいだ。
しばらくは肌がひりひりしそうだけれど、きっとそれもまた心地よい。

来週もスタジアムに行こう。

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