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 前回にご紹介した「農口尚彦研究所」に続いて、年末年始にはもう一本、開栓した酒があった。秋田県の福禄寿酒造様が醸す「一白水成」である。
 これまでそれなりの数の日本酒を戴いてきたと自覚しているが、一白水成は私にとって、現時点で一番好きな銘柄である。まず、出逢いから振り返りたい。

 私が日本酒を購入するにあたって、選ぶ時の基準は四つある。「名称の響き」、「話題性」、「気になっている地域」、そして「見た目」である。一白水成に関しては、ズバリ、見た目に惚れ込んだ所謂「ジャケ買い」である。CDやレコードを購入する際によく使われる言葉だ。目を惹く力強い書体と、その言葉の響き。九星気学で「一白水星」という属性があるが、「星」の漢字が違う。名称の由来は、「白いお米と水から成る一番旨い酒」との思いから名付けられた。
 かつてBS11にて放送されていた『ふらり旅 いい酒 いい肴』の視聴者であった私は、番組で一白水成が紹介されたことをきっかけにその存在を知ることになる。日本酒をまともに呑んだことがなかった当時の私にとって、お金を出して手に取ってみようと思えた最初の酒だった。つまり、日本酒好き開眼の酒である。一白水成に出逢わなければ、日本酒を好きなることはなかったかもしれない。

 一白水成も他社の銘柄同様に、年間で多種多様な限定酒を製造している。私はいくつかの種類を呑んだことがあるが、今回ご紹介するのは酒米の王様「山田錦」で醸したものである。商品としては九月頃に販売されたが、すぐに購入して年末まで冷蔵庫に眠らせていた。以下、スペックを記す。

ラベル表面
ラベル側面

一白水成 純米吟醸 山田錦

原材料名 米(国産) 米麹(国産米)
原料米 兵庫県東条産山田錦
精米歩合 50%
アルコール度数 16度
日本酒度 +2
酸度 1.4〜1.6(掲載サイトによりバラつき有)
火入れ あり

 ラベル裏面に記載されていない項目は、複数の酒屋のサイトを参考にして追記した。

 さて、早速、開栓して香りを嗅いでみよう。うむ・・・。先入観と異なり香りはあまりないが、バランスの良さが香る。フルーティーではなく酒臭さがあるといった印象だ。盃に注いでみる。

徳利から盃に注いで観察した

 見た目は無色透明だ。まずはそのまま冷酒で戴く。おや・・・?想像していたよりもキリッとしている。何だこれは。
 一白水成特有の個性は柑橘系のそのフルーティーさにあり、と常々思っている私には、想定外の味だ。フルーティーさがややあるが前面には出ておらず、男らしい酒という舌触り。しばらく口内で吟味してみたが、この味わいは酒米に山田錦を使用していることによるものか、力強さがあり良い意味で一白水成らしくない。イメージと違い驚いた。
 続いて常温で口に含んでみた。さて如何に。ほほう・・・。温度が上がったことで、冷酒に比べて甘みが弱くなり、さらに喉越しがキリッとたっているようだ。これは想定内の変化であった。
 では、お楽しみの御燗にしてみよう。きっと口に合うはずだ。上燗ほどに温めて鍋から引き上げた。
 鼻を盃に近付けてみる。うむ。香りがキリッと立っており、甘さは感じない。口に含む。すると、甘さも僅かに感じるが、フルーティーさはなく、しっかりとした「酒らしい酒」に仕上がった。

 先述のように、私にとっての一白水成の特徴は、柑橘系とそのフルーティーさにあると、いくつかの種類を呑んでそう思ってきた。しかし、今回の山田錦は、新たな味の幅を広げるように、期待を裏切った。どっしりと腰を据えているようで、一白水成のなかでも異彩を放っている。

 福禄寿酒造様は一六八八年(元禄元年)創業。長い歴史のなかで、まず酒造の名前を冠した「福禄寿」シリーズがベースにあり、製造を行っている。実は一白水成シリーズは二〇〇六年に立ち上げたブランドであり、それほど古くはないブランドだ。今後も私は一白水成に身銭を切ることだろう。まだ呑んでいない種類がある。これからもお世話になります、福禄寿酒造様!

 そんな福禄寿酒造様にご興味のある方は、是非、ホームページにアクセスして頂きたい。URLを載せておくので、ご参考になれば幸いである(秋田美酒福禄寿酒造株式会社 (fukurokuju.jp))。

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