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参議院の「緊急集会」は緊急事態に何ができるのか

立憲民主党の小西議員が「憲法審査会を毎週開催するというのは、憲法のことなんか考えないサルがやること。何も考えていない人たち、蛮族の行為だ」と言って衆議院の憲法審査会を揶揄し、参議院憲法審査会の筆頭幹事と党の参議院政審会長から更迭されました。

衆議院の憲法審査会は緊急事態条項を中心に議論が進んでいますが、外国からの武力攻撃や内乱・テロ、自然災害などの緊急事態が起こったとき、衆議院が解散されていたらどうするのか、が主要な論点の一つとなっています。緊急事態のときは、自衛隊の出動などで国会承認が必要になるからです。衆議院が解散されていた場合は、前議員の身分を復活させ、さらに任期を延長すべきではないか、などという意見も唱えられています。

しかし、解散で失った衆議院議員の身分を復活させたり、任期を延長したりするのは、それこそ憲法改正が必要です。さすがにそれはハードルが高く簡単ではないので、参議院の「緊急集会」で何かできないだろうかと言われています。

一般的にあまり馴染みがない参議院の「緊急集会」ですが、憲法54条では「内閣は、国に緊急の必要があるときは、参議院の緊急集会を求めることができる」とされています。緊急集会は、内閣の求めに応じて開催することになっているので、国会法では「内閣総理大臣から、集会の期日を定め、案件を示して、参議院議長にこれを請求」することになっています。また、「示された案件に関連のあるものに限り、議案を発議することができる」ともされていて、あくまで内閣が必要と認めた案件に限り議論できるに過ぎません。緊急集会は、参議院が議論すべきだと判断した案件について議論することができない、つまり三権分立のもとでの本来の国会の機能を果たすことはできないということです。

衆議院が解散されて衆議院議員がおらず、緊急集会も制約された活動しかできないとなると、どうなるでしょうか。緊急事態において、国家権力が国民の権利を侵害してきたとしても、国民の代表である国会がそれを止める術がないことになります。

しかし、国会法を改正して、参議院の緊急集会に“フルサイズ”の権能を認めることは、憲法54条の規定上難しいと言われています。現状では、緊急事態に国家が国民の私権を侵害してきても、権力の暴走を防げないことになりかねません。国民の人権を守るためにも、緊急事態に関する議論が必要なので、議論すること自体を「サルがやること」などと言うのは言語道断だということです。

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