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派閥解消

自民党の派閥解消の動きが進んでいます。岸田派(宏池会)、安倍派(清和政策研究会)、二階派(志帥会)がすでに解散を決め、麻生派(志公会)は存続、茂木派(平成研究会)は考え中のようです(本稿執筆中の令和6年1月23日現在)。

今回の動きは、派閥主催の政治資金パーティー売上げキックバックの違法な処理で、自民党の支持率が急降下しているからでしょう。とりあえず、後先を考えず派閥解消を唱えているという感は否めません。
自民党の派閥はこれまで、政治と金の問題が起こるたびに解散が宣言され、しばらくして有耶無耶になり、復活してきたという歴史があります。なぜ派閥が必要なのか。最近マスコミでもさかんに解説されていますが、実際に政治を見てきた経験から、現場目線で派閥を存在させることのメリット、デメリットを考えてみたいと思います。

派閥として一定数まとまっていると、党の総裁選挙のとき、自派から党の総裁候補を出す、あるいは他派の総裁候補にそれなりの票をまわすことができます。そのため、党内で一定の影響力を持つことができ、派内の議員は派閥の後押しでポストを得やすくなります。

派閥として政治資金パーティーを開催すると、業界や企業は、派閥の与党内での政策に与える影響力に期待してパーティー券を買うので、政治資金が集まりやすくなります。たいていの場合、所属議員は自分が売ったパーティー券の売り上げの一定割合を派閥からキックバックしてもらえるので、活動資金が楽になります。今回は、このキックバックを政治資金収支報告書に記載していなかったことで逮捕者まで出ています。

派閥として一定数の議員が集まっていると、新人は先輩議員から陳情処理や後援会の作り方、付き合って良い団体と良くない団体の区別、秘書やスタッフの紹介、選挙の仕方などで指導を受けることができます。選挙のときは、派内の人気議員の応援も頼めます。
たとえ国会議員であっても一人でいると心細いものですし、とくに新人は当選しても右も左も分かりません。そんなとき、数十人で助け合える派閥という集団は、助け合い機能を発揮できる存在となります。

しかし、派閥が力を持っていると、派閥の力の均衡の上に党が運営されるので、トップである総裁(=総理大臣)は決定権が縛られ、リーダーシップを発揮できない状態となります。自民党の党内改革が進まない理由も、この辺にあるように思います。
人事も、派閥の推薦や了解がないとやりづらくなるので、有為な人材を登用することができなくなり、派閥が推薦してきた当選回数が多いだけの議員にポストを与えることになります。要するに、人事が歪むということです。

今回の政治資金規正法違反事件で、自民党は派閥を解散して信頼と支持率を取り戻そうとしています。しかし、計上すべき収入を収支報告書に記載しなかったというのは、国会議員の規範意識が緩んでいるからで、派閥の存在をどうするかは別途考えるべき問題です。
派閥の存在目的が主にポストと金なのであれば、派閥は国民のためではなく、国会議員の私利私欲のための存在だと言えるでしょう。国民のための政治をするのにポストと金が要るというのは、一種の詭弁です。しかし、世間の批判を浴び、マスコミから派閥が諸悪の根源のように批判され、支持率が低下したからといって、パフォーマンスとして急いで派閥を解消しても、また復活するだけのような気がします。

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