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LBGT法案「差別は許されない」という文言の影響

岸田首相が、今国会でのLGBT理解増進法の成立に前のめりになっているようです。同性婚をめぐる予算委員会での答弁や秘書官の差別発言での劣勢を、一挙に跳ね返そうとしているのでしょうか。

一昨年5月に超党派の議員連盟が「LGBT理解増進法案」をまとめました。この法案はLGBTに関する知識を広げることで、偏見や差別をなくしていこうという法案です。一昨年に国会提出が目指されたときは、法案の目的と理念に「性的指向及び性自認を理由とする差別は許されないものであるとの認識の下」と書かれたことで、自民党内が紛糾し提出に至りませんでした。ここで、性的指向とは恋愛感情・性的感情の対象となる性別についての指向、性自認とは自己の性別についての認識のことです。
反対の理由は、「差別の範囲が明確でない」「行き過ぎた差別禁止になる」「訴訟が増える」などということでした。今国会では、この法案を修正して提出することが目指されていますが、超党派で提出された場合は実際に法律が成立して施行されることになります。

一方で、立憲民主党や国民民主党、共産党などが国会に提出しているのが「LGBT差別解消法」です。「性的指向又は性自認等を理由とする差別の解消を推進する」という内容の法案で、行政機関や事業者に差別禁止を義務付けています。こちらは野党だけで提出しているので、現実には成立の見込みはありません。

「LGBT理解増進法案」の今国会での提出にあたっては、「差別は許されない」という文言を削除すれば、自民党内で了承される可能性が高くなります。しかし、野党は、差別を禁止しなければ意味がないと考えているので、この文言を削る交渉は難航すると思われます。
当時者であるLGBTも、自民党側のLGBT団体も活動しているし、左派系のLGBT団体も活動しているしで、一枚板ではありません。
法律が成立したら、基本計画を作り、予算が付き、各地に拠点を作りということになってくるので、政治に食い込もうとするLBGT活動家もいるようです。さまざまな思惑が絡み、すでに複雑な様相を呈しているといえるでしょう。

よく問題にされているのは、トランスジェンダーが自らの性自認に従って男女別の施設を利用するという場面です。法律に「性自認を理由とする差別は許されない」との文言が入った場合、実際問題としてどのような影響が出て来るのでしょうか。
たとえば公立の体育館で、男性のトランスジェンダーが女性用のロッカールームを使用したいと申し出た場合、施設側は拒否しにくくなるでしょう。利用拒否がトランスジェンダーの人格を否定するものだとされたり、マジョリティの女性には利用させるのにトランスジェンダーには利用させないのは合理性のない差別だとされたりする可能性が、高くなるかも知れません。

「差別は許されない」との文言を入れることには、大きな社会的影響があり、国民の間に分断を生む可能性もあります。今のところ、トランスジェンダーに女性用の公衆浴場の利用を拒否することには異論は少ないようですが、ロッカールームやトイレで利用を拒否するのは違法だという意見もあるようです。女性用トイレというのは個室になっていますが、それでもトランスジェンダーが入ってくることに不快感を覚える女性は多いはずです。不快感や嫌悪感を覚える女性に我慢を強いることが妥当なのでしょうか。国民の生活にこのような具体的な影響が及ぶことを十分に考え、文言を修正するにしても立法段階での慎重な検討が必要です。

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