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人事異動を命じる時の心がまえ

そろそろ春の転勤シーズンが近づいてきました。

新年度、今の職場から次のこういう職場に異動してほしい、なんていう内示が聞こえてきそうな時期です。

その内示が、自分の希望する方向へとベクトルがあっていればいいのですが、まったく予想だにしなかった方向への異動であったり、さらには最も望まない方向への異動だったりしたときには、内心穏やかではない気持ちになってしまう人も、大勢いらっしゃるのではないでしょうか。

私も20年近くにわたって、実にたくさんの社員を異動させてきました。

人事を考える側から見て、異動を命じるときのきっかけは大きく分けて2パターンあると思います。

ひとつは「こちらが主導権を握っている未来志向型の人事異動」と、もうひとつは「外部環境の変化が主導権を握っている環境適応型の人事異動」です。

思い描くミッションの達成、目標に到達するまでには10年から20年の年月がかかるわけですが、その間の3年から5年スパンのマイルストーンの時期に、今の組織、人事配置はこれであっているのだろうかと見直さなければなりません。

会社の目指す方向、手に入れたい未来の姿に確実に近づくために、主体性をもって組織人事を編成するというのが「未来志向型の人事」。

また、社員の適正はこれで本当にいいのだろうか、この人にはさらに新しいチャレンジをさせた方がいいのではないだろうか、この人の強みを活かすには別の仕事に取り組んでもらった方がいいのではない、といった、社員育成のための人事なども、未来志向型の人事異動になります。

私は、自分の経験からも、社員は30代前半で一度は、とても大きな責任のある仕事をさせるべきだと考えていましたので、若い社員の登用は積極的に行ってきました。

これに対して、きっかけが社内や社外の環境の変化に適応せざるを得ないがための異動というのも、数多くあります。

そもそも世の中は自分の会社のことなどお構いなしに、様々な変化が毎日のように起きて、こちらとしても軌道修正を余儀なくされることは、当たり前のように起きてしまいます。

また、社内にあっても、どこかの部署で偶然、退職者が複数重なってしまい、別のどこかから補充しなければならない、なんていう、社内環境の変化にしても日常茶飯事起きてくるわけです。

どちらにしても、異動を命じられる社員は、上司からの一言の通達で異動するわけで、私も、今でこそ都内に安住していますが、家族を連れて、福岡・横浜もう一度福岡、そして東京と、各地を転々としました。

おかげで長男は、小学校を3回変わっていて、親としてはかわいそうなことをしたなあと感じていると同時に、よく女房がついてきてくれたなあと感謝している次第です。

何が言いたいかというと、会社の命令によってその人の生活設計や、少し大げさに言うと人生設計まで変わってしまう、ということで、職場異動や住居の移転を伴う転勤の命令には、それだけの大きな力があるのだということを、命ずる側はよく心得て、本人に通達しなければなりません。

私はいつも、人事は受ける側にとっては一生の大問題だ、そして本人への通達は「男と男の真剣勝負の場」*だと、腹に覚悟を決めて、その場に臨んでいました。

そして、これが最も肝心なことなのですが、当事者の社員と相対する時
「こいつも家に帰れば一国一城の主なんだ」
と自分に言い聞かせてから、内示通達を行っていました。

マネージャーの皆さん、人事異動は、それを通達する責任を引き受ける胆力がないのであれば、そもそもあなたにはチームを率いる資格はないくらいの強い思いを認識して、その場に臨んでください。

*文中「男と男の」と書きましたが、女性に対しての異動通達の経験がないのでこの表現となりました。ご理解ください。

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