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青く燃える巨人に再涙、映画「BLUE GIANT」ネタバレ感想

嗚呼、音楽って、ジャズって、こんなに熱く素晴らしいんだ。最早ジャズではなく「ロック」と呼んでもいいんじゃないだろうか、と原作を読みながらボロ泣きしていた、音が聴こえると話題にもなった熱いジャズ漫画「BLUE GIANT」。

そのアニメ映画版が昨年話題となり、原作大好き勢、主人公の宮本大君と同じ仙台に住んでいる勢、音楽好き勢、もう勢って言いたいだけです勢として「実際にジャズが爆音で流れるなら映画館で観なければ!」と意気込んでいましたが、パタパタと日々を過ごしていたらばいつの間にか上演も終了。

そんな映画版「BLUE GIANT」がアマプラ配信となり…

嗚呼、忙しい日々の中、観たら止まらなくなってしまう、観たら確実に泣く、後で観よう後で観よう。そんなことを思っていたのに、ワタクシの手は気持ちとは裏腹に再生ボタンをポチリ。案の定、Unknown Joe、就寝時間を削り、気がつけば骨伝導イヤホンから流れるジャズに体を揺らしながら号泣していた東北おじさんこと長谷川誠です。

そんな赤を通り越し、青く熱く燃える巨人のジャズに再び落涙したもんですから、矢も楯もたまらず、ごぶサタデー、お久しブリーフのnote更新で御座いますよ。

ということで、そんな映画版「BLUE GIANT」の感想をばこれから書き記すわけですが、映画版を観てないという方、そもそも「BLUE GIANT」を知らない方に向けて、こちらの記事には「ネタバレ」のハッシュタグをつけておきます。ゆめゆめお間違いのなきよう。

☆ワタクシの属性・ジャズとの距離感について

まず「BLUE GIANT」。これはジャズという音楽ジャンルを取り扱った作品です。ということで、一般のジャズを知らない方から音楽好きの方だけでなく、それこそジャズプレイヤーやジャズマニアの方々も色々とコメントしたりしております。

それこそネットを覗けば意見や感想は賛否様々。しかし、賛も否も「その人がどういう属性、どういう立ち位置で観たのか」が抜けていることが多く(主に一般の方の感想など)、自身が好きな作品だけに、何だかモヤモヤした気分になっておりました。

だもんで、まずは感想を語り出す前に、ワタクシ自身の属性と「ジャズ」との距離感といったものを名札よろしくお断りしておこうかと。

<属性>:
原作は履修済。ただのロキノン系音楽好きのおじさん、ロック・電子音楽寄りの嗜好

<ジャズとの距離感>:
90年代おされ系音楽として渋谷系の流れでアシッドジャズを聴いたり、ジャズの名曲をベースにしたハウス・テクノミュージックを聴く程度。

ジャズ的なジャンルで昨今ハマった方々と言えば、fox capture plan。

敬愛してやまない森田一義氏ことタモさんがジャズ好き。ジャズに惚れこんだ理由が「初めて聴いた時に自由度が高すぎで、今まで知ってきた音楽理論の枠組みでは理解できなかった」という事実を知り、何度か有名なジャズを聴き込もうと思うも、なかなか体系的にしっかりと聴き込むに至らず。「どのジャズプレイヤーのどの曲が好き?」と聞かれても「ジ…、ジョン・コルトレーンでしたっけ?」といった曖昧な返答しかできないレベルのまま現在に至る。

まぁ、総じますと、早い話がどちらかと言うと、ジャズ寄りというよりは、ただのロック好き&原作好きのおじさんといった属性・距離感でございやす。

☆映画版「BLUE GIANT」総評

では、そんなワタクシが映画版「BLUE GIANT」を観てどう感じたのかと言いますと…

音楽が好きな人だけでなく、老若男女、万人に観てほしい。いや万人が「観るべき」超ド級の名作!

ということ。

ただただ漫画版同様にココロと感情を激しく揺さぶられ、音楽の持つ可能性とその素晴らしさ、そしてジャズという音楽の奥深さ、音楽という1つの事に打ち込む若者の輝き・熱さに涙した作品でした。

そして何より劇中の楽曲。

音楽を取り扱った漫画は、当然のことながら音が出ないという2次元の表現であることから、映像化される際に非常にハードルが高いと思うわけで。しかも前評判として「音が聴こえる漫画」と称されていた作品。ハードルというか高層ビル並みの障害が事前にできあがっていたようなもんでして。

そこを軽々と飛び越えてみせてくれたのが、日本ジャズシーンのトップランナーであり世界的ピアニストである上原ひろみさん。あな恐るべし。演奏曲だけでなく劇中全ての楽曲を担当されており、どのシーンを切り取っても作品とのマッチ具合がハンパではなかった。

とある「否」寄りの意見で

漫画を読んだ時に想像していた音と違った

というものをみかけましたが、これは映像化作品の宿命なんでしょうかねぇ。そもそも、とある一個人が作品に関して抱いていた感覚を他者が100%映像化できるわけあるわけないでしょうに。ねえ。そういう野暮なことを脊髄反射で言う前に咀嚼しなさいよと思うんですが、いやはやSNS時代さまさまですね。

まぁ、その否定的な意見、分からなくもないと言えば分からなくもないんです。ジャズ。即興性が高い熱い演奏を奏でるとはいえ、楽器の音はエレキギターや電子楽器に比べれば、そりゃあ耳に入る爆音度合いでいったら少々控え目。その人がジャズという音楽の発明以降に生まれた爆音的な音楽好きであれば、漫画を読んで脳内で想像していた「熱く激しい音」(作中の表現)と実際のジャズ楽曲との乖離があってもおかしくはないわけで。

ですが、ジャズ。ジャズなんですよ奥様。A列車で行きながら、フライミートゥーザムーンなんですよ奥様。

作中で主人公の大君も言っていませんでしたか。「気持ちを全て音で表す」「その日の気分が音になる」と。そんな即興演奏で数々の音達がうねりながら流れ出てくるのは、電気的にエフェクトをかけられたり、増幅されたりしていないサックスという木管楽器。そんな点を実際のジャズプレイヤーさん達がどのように表現したのか。聴くべきはそこ。あなたの頭の中で流れた「ジャズ以外を含む(かもしれない)妄想音」ではないんです。そこを感じとるべきであると思うんです。

そういった点から言ったら、もうアレですよ。原作好き勢からしてみれば予想のはるか上空をポーンと超えていたのではないかと。

サックスの艶やかで伸びやかな音が、ウネウネとうねりつつ、時に鋭利に空間を切り裂くような形で「感情」を表現した楽曲達。何て言うんでしょう。R&B、ソウル、ファンクで言ったら「グルーヴィ」って言いたくなるんですが、ジャズだと何て言ったらいいんでしょうか。無性に体がリズムにのって揺れ動いてしまうような。流れる音に巻き込まれる感覚とでもいいましょうか。

兎にも角にも、そんな漫画では読者の妄想にまかせるしかなかった「ジャス(主人公達のバンド名)が演奏している楽曲達」を、ここまで「うわ…すげぇ」と思えるレベルであて込めたこと自体、この映画版を名作だと断言してもいいのではないかと思えます。

という事で、これ以上語るとアレコレ重箱の隅的な事まで書きたくなるのでとっ散らかる前に総評は以上。

以降は細かな個別各評にいたしましょう。そうしましょう。

☆漫画版からの改変部分についてアレコレ

はい。ここから思いっきりネタバレしだしますのでご注意下さいね。

映画版の冒頭数分を観て思ったこと。

え?

仙 台 編 カ ッ ト さ れ て な い ?

そして、映画終盤のクライマックスシーン。漫画では10巻あたりの、涙なくしては観ることができないジャズピアニストとして覚醒した直後に起こる雪祈(ゆきのり)の交通事故。そして名門ジャズクラブ「so Blue」への出演に関わるアレコレで思ったこと。

え?

雪祈氏、右手を複雑骨折して手術した翌日に病院を抜け出し左手で演奏?

この2点については、確かに異論反論オブジェクション(マルシー筑紫哲也氏)があることは致し方無いかと思います。現にワタクシも驚きのあまり「え、待って!」と、普段見かける度に死んだイカのような目になってしまうSNS構文が飛び出しそうになりましたから。

他にも仙台で大君がお世話になった師匠が「so Blue」に来ていたり等々、細かな改変点は色々とあるんですが、大きな改変点はこの2つ。これについて、ワタクシ思いました。

感じました…

原哲夫先生にありったけのリスペクトを込めて(not 商用利用)

と。

確かに、確かに、仙台市民としては、あの広瀬川沿いやガソリンスタンド、そして学校や師匠宅で繰り広げられた数々のエピソードが割愛されてしまったのはちょっと物悲しい。そして、激しい交通事故の翌日にライブっていくらなんでも辛すぎやしないか、と。

しかし、だが、それがいい、なのです。

その改変点に「え?」と思ってもなお、泣いた。泣けた。

雪祈氏がラストライブに登場した改変部分なんかは、エグエグ嗚咽しながら泣いてしまいました。頭のどこかでは「複雑骨折の手術翌日ですやん」と思っていながらも泣けたんです。

だって、雪祈氏が参加するラストライブなんて、物語に思い入れのある人であれば、たらればの「if」世界で妄想したであろう「観てみたい世界線」の話なんですもの。こんな景色を見せてくれた作品を名作と言わずして何と言いましょうか。

きっと監督や脚本さん達は「ラストライブとジャスの解散の感動という青く燃える感動に向けて、いかに2時間という尺の中で物語を再構築するのか」に苦慮されたことでしょう。だって漫画本10冊分ですよ。原作。

折しも某TV局の漫画実写ドラマ化における改変に関して、悲しい出来事があったタイミングではありますが、この思い切った改変は個人的にアリ寄りのアリなのではないかと思った次第。

しかし、仙台編カットで、仙台市の盛り上げようという気持ちが「勇み足」になっちゃったのがちょっと恥ずかしいですが…

せっかくマンホール設置したのに、仙台編大幅にカットされたでござるの巻。

やったぜ!映画化だ!「定禅寺ストリートジャズフェスティバル」という仙台市中心部で毎年開催されるイベントもあり「ジャズの街 仙台」を打ち出したいお役人様。これ幸いと各所に協力を求めてマンホールを設置してみたものの、ふたを開けてみれば仙台編大幅カット。聖地巡礼的なスポットも広瀬川沿いの土手ぐらい。ちょっとイチ仙台市民からみても「行政さん可哀そう…」とか思ってしまいますが。

まぁ、主人公大君がバスケ経験者ということでサックスケースに仙台のプロバスケットボールチーム「仙台89ERS」のステッカーが貼ってあったり、国宝の仏像がある大崎八幡宮のステッカーが貼ってあったりしましたから、仙台要素は気を使って(メディアミックス的に)入れてくれたんだろうなぁと思いますけれど。

☆CGについてのアレコレ

うーん。このモーションキャプチャーを使用したというキャラクターの演奏シーンのCG。このポイントだけは、色々と感想を見てみても、やれちょっと古めかしい違和感があるだの、某国のCG制作会社が絡んだからだのといった偏向意見を含む「否」の意見の方が多いような気がしますけれども。

ぶっちゃけ。

そんなに目くじらたてるほど気になる?

と思ったのが正直な感想。

だって、こちとらアニメ好き。伝説的なものから細かなものまで数々の「作画崩壊」を目にしながらも、そのアニメという作品を、物語を、作画崩壊含めて愛してきたんです。

CG黎明期、「全編CGアニメ!」といった触れ込みで放送開始されたカクカクした動きとノッペリとした背景に違和感満載のアニメも視聴してきました。そんなんですから、今更CGがどうしたこうしたレベルのお話を、その作品を評価ポイントに加える気はございませんですよ。はい。

まぁ「BLUE GIANT」が好きだからこそ、好き過ぎるからこそ、もっと映像に関してもクオリティの高いものを求めていたのかもしれませんけれども。

☆とにかく観て!なんなら原作も読んで!

ということで、感動のあまり総評、各評ダラダラと書きなぐってしまいましたが、結局南極大冒険。

映画版「BLUE GIANT」

超 オ ス ス メ で す !

という、単純なことを伝えたかっただけなんです。この記事。

なんであれば原作も是非是非読んでいただきたい、そして仙台に聖地巡礼(マンホール含めて)しに来てほしいと普及活動したいくらいなんですね。

嗚呼、しかし、ホント良い作品を観ることができました。アマプラさんありがとう。話題のゲゲゲの父太郎さんのアニメ映画も近々アマプラ配信されるようですし、最後にアマプラの宣伝的なコメントでこの記事をシメさせていただきたいと思います。

それでは皆さん、再見!

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