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生物学的な咬合論 その2       医科・歯科での診断について

A.医療で病態検査のための検査項目について

 病態審査のための検査項目は、症状や疾患の特性によって異なるため、患者の状態や臨床的な問題に合わせて適切な検査を選択することが重要です。また.検査結果を総合的に評価し病態を包括的に理解することで、適切な診断と治療が提供されます。病態審査のための検査項目は、医学の進歩や技術の発展に伴い常に変化しています。新たな検査法や技術が導入されることで、より効率的で正確な診断が可能となります。そのため医療従事者は常に最新の情報を取得し、適切な検査法を選択する能力を持つことで患者の健康状態を正確に把握し、最適な治療計画を立案する上で欠かせません。検査項目の選択と解釈は慎重に行なわれるべきであり、患者の安全と健康を最優先に考える必要があります。以下の病態診査の統合的なアプローチによって、医師、歯科医師や医療チームに重要な情報を提供します。

●身体検査
 
患者の身体全体を視覚的に観察し触診や打診などの手技を用いて様々な器官や組織の異常を評価します。例えば皮膚の色や状態、リンパ節の腫れや痛み、心蔵や肺の音などを評価します。

●血液検査
 
血液中の様々な成分や指標を測定し、炎症、感染、貧血、代謝異常などの情報を得ます。一般的な血液検査には完全血球計算、C-反応性タソパク、血糖値、肝機能検査、腎機能検査などが含まれます。

●画像検査
 
X線、CT、MRI、超音波などの画像検査は体内の組織や臓器の形状、構造、病変を観察するために使用されます。これらの検査は骨折、腫蕩、内臓の疾患、血管異常などの診断に役立ちます。

●生理検査
 
心電図、脳波、呼吸機能検査などの生理検査は心臓、脳、呼吸器系などの機能を評価します。これらの検査は心臓のリズム異常、てんかん、睡眠時無呼吸症候群などの疾患を診断するのに役立ちます。

●組織検査
 
生検や細胞診などの組織検査は病変の性質や病因を評価するために行われます。がんや炎症性疾患の診断や治療方針の決定に重要です。

 

B.医療行為における診断の必要性について

 医療行為における診断は不可欠であり与患者の健康状態を適切に評価し、最良の治療法を提供するために欠かせません。また、診査や診断なしに医療行為を行うことは患者の安全と健康に深刻な影響を与える可能性があります。したがって正確な診断を行い適切な治療を提供するためには診査や診断の重要性を認識し、それらを適切に行うことが不可欠です。

 ●適切な治療計画の策定
 
正確な診断は適切な治療計画を立てるための基礎です。患者の症状や疾患の原因を正確に把握することで最適な治療法を選択し患者の健康状態を改善することができます。

●適切な治療の効果を評価するための基準
 
診断は治療の効果を評価するための基準となります。治療前と治療後の症状や検査結果を比較することで治療の効果を客観的に評価し必要に応じて治療計画を調整することができます。

●予防や早期発見のための重要性
 
病気や疾患を早期に発見し予防するための重要な手段です。定期的な健康診断や検査を通じて病気や疾患を早期に発見、適切な治療や管理を行うことで患者の健康状態を維持することができます。

●リスクの評価と管理
 
患者のリスクを評価し適切に管理するための基盤となります。患者の健康状態や疾患の進行度を正確に把握することでリスクを予測し適切な対策を講じることができます。

●情報共有と連携の促進
 
患者と医療チームとの間で情報を共有し連携を促進するための基盤となります。診断結果を適切に伝えることで、患者と医療チームが協力して治療計画を立て,効果的なケアを提供することができます。

 

C.歯科医院での診査・診断について

 歯科診療における診査・診断には歯、歯茎、顎、および周囲の構造に影響を与える口腔の健康上の問題や状態を特定して理解する体系的なプロセスが含まれます。通常、患者の病歴、臨床検査、機能テストを通じて情報を収集し根本的な問題を正確に判断し、適切な治療計画を立てることが必要です。正確な診断は効果的な歯科治療を提供し、患者に最適な口腔衛生の結果を促進するために不可欠です。慎重な評価、批判的思考(critical thinking)および臨床所見と歯科診療で利用可能な証拠(evidence)に基づく知識および診断ツールとの統合が必要です。これらの原則と実践を診断プロセスに統合することにより歯科医は口腔の健康間題を効果的に特定しパーソナライズされた治療計画を作成し患者の全体的な健康と幸福を促進することができます。

 ●患者の病歴
 
患者の病歴、口腔疾患病歴、主訴に関する情報を収集することから始めます。これには過去の歯科治療、投薬、アレルギー、全身の健康状態など口腔の健康に影響を与える可能性のある要因が含まれます。

●臨床検査
 
歯、歯茎、軟部組織、支持構造など口腔内の徹底的な検査を行います。これは虫歯、歯周病、口腔病変、およびその他の異常の兆候がないか口腔内を目視検査することを含みます。さらに、触覚評価、パーカッション、および可動性テストを実施して歯と周囲の組織の状態を評価します。

●診断テスト
 
疑わしい状態に応じて、診断を支援するために、さまざまな診断テズトを実施する場合があります。これには、歯や顎の内部構造を視覚化するための歯科用X線(根尖周囲、咬合、パノラマX線写真など)や、口腔内写真、歯列印象、およびさらなる評価のための臨床検査(微生物培養や生検など)が含まれます。

●専門的な検査
 
歯茎の健康状態を評価するための歯周チャート、顎の機能を評価するための顎関節(TMJ)検査または咬合関係を評価するための咳合分析など専門的な検査が必要になることがあります。

●解釈と診断
 
患者の病歴、臨床検査診断検査の結果に基づいてデータを解釈して診断を下します。これは患者に影響を与える特定の口腔衛生上の問題または状態を特定し、その重症度と口腔全体の健康に対する潜在的な影響を判断することが含まれます。

●治療計画
 
診断が確定すると、歯科医は患者のニーズと目標に合わせた包括的な治療計画を立てます。予防措置、修復処置、歯周治療、矯正治療、口腔外科などの介入が含まれます

●モニタリングとフォローアップ
 治療開始後、患者の反応と経過を経時的に監視します。定期的なフォローアップの予約により治療効果の継続的な評価、必要に応じて調整、および口腔の健康を維持するための予防策がなされます。

●患者教育
 
診断プロセス全体を通して患者の口腔衛生状態、治療オプンョソ、 予防策について患者を教育し口腔衛生習慣を改善し、将来の問題のリスクを軽減します。患者は口腔ケアに積極的に参加し、治療について十分な情報に基づいた決定を下すことができます。

●学際的コラボレーション
 
複雑な症例や口腔の健康に影響を与える全身症状に対処する場合、医師、歯周病専門医、歯内療法医、矯正歯科医、口腔外科医などの他の医療専門家と協力して包括的なケアを確保、根本的な医学的問題に対処します。

●技術の進歩
 
デジタルイメージング、コンピユーター支援設計/コソピユーター支援製造 (CAD/CAM)技術、およびその他の診断ツールの進歩により歯科医は診断と治療計画のための、より正確で効率的な方法にアクセスできるようになりました。これらの技術革新により、歯科診療における精度、スピード、および患者体験が向上します。

●エビデンスに基づく実践
 
最新の研究結果、臨床ガイドライソ、ベストプラクティスを意思決定に取り入れ診断プロセスの指針としてエビデソスに基づく実践に入れます。これにより診断方法と治療法が科学的証拠によって裏付けられ患者にとって効果的で安全であることが示されています。

●倫理的考慮事項
 
診断と治療の決定を下す際に患者の自律性、善意、非悪意、正義などの倫理原則を順守します。歯科医師は患者の権利と好みを尊重しながら、患者の幸福と利益を優先します。

 

D.口腔診査・診断における歯科衛生過程(ケアプロセス)

 歯科衛生士のケアプロセスは、患者の口腔健康の維持と予防に焦点を当てています。患者の口腔健康状態を評価し、適切な治療や予防プランを立案し実施していくことで患者の口腔健康を最適な状態に保ちます。また、患者に口腔衛生に関する教育を行うことで患者自身が口腔健康を管理し、予防措置を取る能力を向上させることも重要です。(Adherence)
 歯科衛生士の役割は単なる治療の提供だけでなく患者との信頼関係を築きながら継続的なケアや健康管理をサポートすることにあります。これにより、患者の口腔健康が維持され全体的な健康に貢献します。
 近年、DX(デジタルトランスフォーメーション)やAI(人工知能)の時代においては、歯科衛生士はこれらの新しい技術を活用してより効率的な診断や治療プランの立案、患者のモニタリングなどを行うことが求められます。今まで以上に、より正確で効果的なケアを提供し患者の満足度と健康成果を向上させることが期待されます。
 以下に、歯科衛生士のケアプロセスの基本的なステップを示します。

 ①  評価 (Assessment)
 
患者の口腔健康状態を評価します。歯の状態、歯周組織の健康状態、歯垢や歯石の存在、口腔環境などの評価が含まれます。これには、口腔検査や歯周ポケットの測定、レントゲン撮影などの手法を用いて患者の口腔状態を詳細に把握します。

②  診断 (Diagnosis)
 
評価の結果を分析し、口腔健康上の問題やリスクを特定し口腔衛生診断が行われます。口腔衛生診断は歯周疾患やむし歯のリスク評価、口腔内の異常の診断などを含みます。

③  計画 (Planning)
 
口腔健康改善のための個別のケアプランを立案します。これには、歯磨き指導、歯垢除去、歯周ポケットのクリーニング、フッ素処置などが含まれます。患者の口腔状態やニーズに応じて適切な治療や予防プログラムを選択しケアプランをカスタマイズします。

④  実行 (Implementation)
 
計画されたケアを実施します。歯石除去(スケーリング)、歯のクリーニングやポリッシング、フッ素塗布、シーラントの施行、口腔衛生指導などが含まれます。患者とのコミュニケーションを通じて口腔ケアの重要性を理解し適切な口腔衛生習慣を促進します。

⑤  評価 (Evaluation)
 
実施されたケアの効果を評価します。口腔健康状態や症状の変化を監視しケアプランの適合性を評価します。評価の結果に基づいてケアプランを調整し患者の口腔健康状態を最適化するための追加の措置を検討します。

⑥  文書化と報告 (Documentation and Reporting)
 
提供されたケアや患者の状態に関する詳細な記録を文書化し他の医療従事者と情報を共有します。これにより、患者のケアの連続性や効果的なコミュニケーションが確保されます。

⑦  教育と予防 (Education and Prevention)
 
患者に口腔健康の重要性や適切なケア方法について教育します。口腔衛生習慣の改善や予防措置の実施を支援し、再発や合併症のリスクを軽減します。

 

★患者指導において、コンプライアンス(compliance)からアドヒアランス(adherence)に重点が置かれるようになった背景について

 患者指導においては従来のコンプライアンスからアドヒアランスに重点が置かれるようになりました。アドヒアランスは、患者の自己決定権や責任、協力の重要性を認識し、患者と医療提供者が協力して治療計画を実行することで、より良い治療成果を得ることができるとされています。

●患者中心のアプローチの重視
従来のコンプライアンスは医療提供者が患者に対して命令的なアプローチを取る場合があり、患者のニーズや意向を無視することがあった。それに対し、アドヒアランスは患者の自己決定権や意思決定の重要性を認識し患者が治療計画を受け入れやすいようなアプローチを重視します。

治療成果の向上
コンプライアンスは患者が医師や医療提供者の指示に従うことを重視していましたがそれだけでは治療成果を十分に向上させることが難しいという認識が広まりました。一方で、アドヒアランスは患者が治療計画に主体的に参加し、その計画を実行することで治療成果を改善できる可能性があるという考え方を提唱しています。

●患者の責任と協力の重視
アドヒアランスでは、患者が治療計画に積極的に参加し自己管理能力を高めることが重要視されます。患者は自身の健康に対する責任を理解し医療提供者との協力関係を築くことができます。

●継続的なケアの重要性の認識
アドヒアランスは治療計画の継続的な実行が重要であるという考え方に基づいています。治療を一時的に実施するだけでなく、長期的な治療計画の遵守が必要であることを強調し患者が治療を継続して行うためのサポートが必要であると認識されています。

 

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