貴方を好きになってもいいかしら?

約五年、意図的に"恋"を避けていたような気がします
誰かを好きになると自分が揺らされます
自分が揺れると底の底に沈めたものが浮かび上がります
決して知りたくないもの・決して認めたくないもの・決して許したくないもの…
決して、信じたくないものがそこにはあります
掘り起こされたくなかった、見つけられたくなかった
隠して・埋めて・そのまま朽ちてなくなればいいと願ったものでした

優しくされるのが怖かった
褒められるのが恐ろしかった
嫌われるのはイヤだったけど、好かれるのはもっともっとイヤだった
誰とも交わらず、誰とも関わらない夢を見ました。そんな理想を掲げました
「こんな幸せはない!」と、ずっと自分に言い聞かせてきました

投げやりの優しさをばら撒いてきました
疲弊する程に尽力しました
やるだけの事をやりつくせば、きっとこのままひっそりと息絶えることが出来ると信じていました

貴方がいなければ

貴方は私を許さなかった
貴方は私を諦めなかった
どれだけ手を尽くして、どれだけ頭を捻らせたって

「僕は貴方を愛したい」

その一言が嬉しかった
その一言に救われた
何かをしないと愛されなくて、何かをしても愛されなくて
うんざりしてた。辟易してた
もうどうだってよかったし、もうなんだってよかった
「もういい」と何度口にしただろう

「貴方が何度諦めたって、僕はずっと諦めません」

根負けした
白旗を上げた
「もういいや」と匙を投げた
差し出され続けた手を取って、胸に飛び込んで謝った

「お一人でよく堪えられました。もう大丈夫、大丈夫ですよ」

無責任な"大丈夫"がずっと欲しかった
泣き言を言っても、喚き散らしても
呆れたりしないで傍にいてくれる人が欲しかった…そんな人いないって、ずっと思ってたよ
私がキライな私をどうか好きになって下さい
私が認めたくない私をどうか認めて下さい
私に出来ないことをどうか、貴方がして下さい

「えぇ、勿論です」

貴方がしてくれる口約束に救われます
嘘かもしれないけど、本当かもしれない
嘘じゃないといいな、本当だったらいいな

「約束します」

ねぇ、私
貴方を好きになってもいいかしら?

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