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『資本論』を自分なりに読みやすくリライトしていく試み9 -無限に続く「相対的な価値表現」の限界

資本論
第1部 資本の生産過程
第1篇 商品と貨幣
第1章 商品

第3節 価値の形態または交換価値4/5

前の記事:第3節 価値の形態または交換価値3/5

<第3節の目次>

第3節 価値の形態または交換価値
  A. 基本的または偶発的な価値の形態
   1. 価値表現の両極―相対的価値形態と等価形態
   2. 相対的価値形態
     (a.)性質と重要性
     (b.)相対的価値形態の定量的決定
   3.等価形態
   4.全体的に考えてみる価値の基本形態
  B. 全体的または拡大された価値形態
   1. 拡張された相対的価値形態
   2. 特別の等価形態
           3. 全体的または拡大された価値形態の欠陥

  C. 価値の一般的な形態
   1. 価値形態の変化した性質
   2.相対的価値形態と等価形態の相互依存的な発展
   3.一般的な価値形態から貨幣形態への移行
  D. 貨幣の形態

※第3節は複雑に分けられています。今回は、3-Bを読んでいきます

z量の商品A =u量の商品B
または =v量の商品C
または =w量の商品D 
または =商品E
または =その他

20エレのリンネル=上着1枚
または =10ポンドの紅茶
または =40ポンドのコーヒー
または =小麦1/4個
または =2オンスの金
または =鉄1/2トン
または =その他

  1. 拡大された相対的な価値形態

(というわけで)ある一つの商品、例えばリンネルという商品の価値は、商品世界における無数の観点(商品)によって表現されるようになりました。他のあらゆる商品が、リンネルの価値を反映する鏡となっています。

リンネルの価値は、「人間の労働」が凝固したものとして、はじめて真の光の中に現れることになりました。リンネルの価値を現す労働は、どの形態であっても、例えば仕立てであろうと耕作であろうと採掘であろうと、他のあらゆる種類の「人間の労働」と同等であることがはっきりと示されています。

その労働が作り上げたものは、上着、小麦、鉄または金で表現されますが、リンネルはその価値の形態によって、一つの商品とではなく、商品世界全体との間の、社会的な関係の中に立っています。商品としてのリンネルは、世界市民であるといえます。
同時に、価値の等式のこの無限の連鎖は、商品の価値に関して、それがどのような特定の形態や使用価値で現れるかに関係ないことをも示唆しています。

最初の形態「20エレのリンネル=1枚の上着」、これら2つの商品が一定の数量で交換可能であることは、まったくの偶然であるかもしれません。
しかし反対に、2番目の形態では、偶然的な外観とは本質的に異なる背景があることが一目でわかります。

というのも、
リンネルの価値は、上着やコーヒー、鉄、または無数の所有者の様々な商品で表現された場合でも、その大きさは変わりません。
商品の交換が価値の大きさを規制するのではなく、反対に価値の大きさが彼らの交換比率を制御していることは明らかです。つまり、個々の商品所有者の偶発的な関係は消え去ります。

2. 特別な等価形態

上着や茶、小麦、鉄などの商品は、リンネルの価値表現においては、どれもが等価物として、それゆえ価値のあるものとして、通用します。これらの商品の形状は、多数の中の一つという特別な等価形態を示しています。

同様に、これらのさまざまな商品に具体化された、多様で具体的で有用な種類の労働は、いまや、差別化されていない「人間の労働」の実現、または表現の多くの異なる形態として評価されます。(これら商品に組み込まれた具体的な労働形態は、「人間の労働」を実現・表現する様々な形態として考えられます。)

3. 全体的または拡張された価値形態の欠陥

そもそも、価値の相対表現は、それをあらわす系列が無限であるため不完全です。新たな価値表現の素材を提供する新しい種類の商品が誕生するたびに、どんどん長くなります。しかもそれはバラバラで独立した価値表現の、色とりどりのモザイク(寄せ集め)です。

そしてさらに、各商品の相対的価値をこの拡張された形式で順に表現すれば、当然ながらそれらのそれぞれについて、あらゆるケースにおいて異なる無限の相対的価値形態を取得していくことになります。(きりがありません)

この拡大された相対的価値形態の欠点は、等価形態にも反映されます。
各商品の物理的な形態は無数の他の等価形態の一つにすぎず、結局、断片的な等価形態しか得られず、お互いを排除し合っています。

また特定の等価物に具体的に組み込まれた「特殊で具体的で有用な労働」も、特定の労働の形態としてのみ提示されるばかりで、それは人間の労働全体を包括的に代表するものではありません。
商品ごとに異なる労働形態が存在し、これが人間の労働の多様性を示唆していますが、無限の系列では「人間の労働」の統一観念にはなり得ません。

拡張された相対的価値形態は、次のような基本的な相対的表現、等式、

20エレのリンネル=1着の上着
20エレのリンネル=10ポンドの茶

などの総計に過ぎません。
ところが、これらの等式は、逆でも同じ内容を表します。

1着の上着=20エレのリンネル
10ポンドの茶=20エレのリンネル

実際、ある人が自分のリンネルを他の多くの商品と交換し、その価値を一連の商品で表現したとします。とすると、様々な商品の所有者は、必然的に商品の価値をリンネルという第三の商品によって表したことになります。

では、もしも私たちが20エレのリンネル=1着の上着、または=10ポンドの茶、等々という系列の左右を逆にしたら、……

つづく

次の記事:第3節 価値の形態または交換価値5/5

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