#82 西洋が覇権を取れた6つの真因 byニーアル・ファーガソン

歴史学者にして経済への深い洞察眼を持つニーアルファーガソンによるなぜ西洋が覇権を取れたかに関する論考をまとめている本書。ヨーロッパは過去500年のほぼ全期間においてそのほかの地域を疑いもなく圧倒し続けてきたが世界金融危機を経験してその有意差は継続して存在しているのだろうか。それともすでに消え去ってしまったのだろうか。この疑問をいくつかの側面から検証することが本書の目的である。

・将来というのは一つではなく、複数なのだ。歴史にも複数の解釈があって、どれかが唯一絶対のものではない。自分達が頼りにできるのは過去の経験のみである。歴史学者が研究する過去は死んでしまったものではなく、ある意味では現在も生きていて、資料や芸術品のような形であとづけることができる。

・人生の盛りにおいて現世と別れを告げるということは、人生が不安定で先が読めず、悲しみも深いことを意味する。と同時に、過去に文明を築いてきた人々は、文明の構築に貢献したのは非常に若い時期であったということ。

・1400年代のヨーロッパは黒死病の大災害から立ち直ろうとしていた時期であり、またヨーロッパがその後世界を支配すると考えるのは非常に楽観的とさえも言えた。

・ヨーロッパが覇権を取れたとする6つの理由として筆者が上げるのは次の6点に要約される。

・競争 - 政治面でも経済面でも分権的な状況になっており、そのおかげて国民国家にとっても資本主義にとっても何らの制約も受けずに高みを目指して発展することができた。

・科学 - 自然界を研究し、理解し、究極的には変革を加えていくやり方がひいてはヨーロッパが軍事面でもそのほかの地域に対して優位に立つことを可能にした。

・所有権 - 法の支配によって個人が財産を所有する権利を守り、相互に起こる紛争を平和裏に解決する。それによって国民を代表する政府が安定的に機能する基礎が築かれる。

・医学 - 科学の一分野だが、健康面での改善、長期戦や航海中の健康の保証、そして平均寿命を長くすることに成功した。

・消費社会 - 生活の物質面を充実させるため、衣類など消費物資の生産と消費が経済面で中心的な役割を果たすようになった。このような状況がなければ産業革命は持続できなかった。

・労働倫理 - 道徳的な枠組みで社会活動の規範となるもので、その基盤は主としてキリスト教プロテスタントの思想に紐づいている。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?